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2012年4月 4日 (水)

「公正なる会計慣行」と古田最高裁判事の補足意見

本日は、頭出し程度のエントリーにすぎませんが、先日大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会共催によるシンポ「公正なる会計慣行を考える」を開催したことをお伝えしました。弥永教授や松本教授も交えて、非常に活発な意見交換がなされたもので、終了後には数名の方からご意見を頂戴し、私自身も勉強させていただきました。

このシンポの準備会は合計7回に及んだのでありますが、実は長銀事件、日債銀事件の最高裁判決を関係者で検討する際、とても興味深い出来事がありました。それは、

「最高裁判事のなかで、本当に会計のことがわかっているのは補足意見を書いておられる古田さんくらいではないか?」

とのご意見が、数名の会計士、会計学者の方から出たことであります。

私はとても意外でした。私の理解では、もっと単純に

「古田裁判官は検察出身だから、自分の出身母体に恥をかかせないように(検察のプライドを守るために)リップサービスで補足意見を出したのではないか」

というものでした(古田裁判官には、たいへん失礼な物言いでありますが、正直、そのような印象だったのです)。

しかし、感覚的とはいえ、会計の専門家の方が、真剣に最高裁判決を読んだ結論として、上記のような意見が出た、というのは、少し検討する必要があると思い、いろいろと思い悩んでおります。また、さきのエントリーに藤野先生(公認会計士)がおっしゃっているご意見なども拝見しておりますと、「公正なる会計慣行」の中身をどのように考えるのか、そこには法律家と会計専門家との間で大きなミゾがあるのではないか、と考えるようになりました。投資家に対してその判断に必要な範囲で有益な意見を出す(保証行為を行う)会計専門家の考え方と、社会秩序を維持するために、具体的な紛争の解決を図ることを目的とする法律家の考え方の違いが大きくでるのが「公正なる会計慣行」の中身の理解である、ということが、ほんの少しばかり見えてきたように思います。

そこで、古田最高裁判事の長銀事件判決および日債銀事件判決における補足意見を検討しながら、続きのエントリーでこの差を検証していきたいと思います。続き、と申しましても、いまは公認会計士の方々の繁忙期ですので、本ブログを読んでいただけそうな、もう少し先になりますが。。。

基本的には、ザックリと会計監査人設置会社(もしくは有価証券報告書提出会社)とそうでない会社について、理路整然と「公正なる会計慣行」の意味を捉えることを重視するか、そのような分け方を意識せずに、個々の企業の規模、業界、業績、事業モデル等を斟酌して、会計基準の選択と、その適用方法まで含めて「公正なる会計慣行」として捉えるのか、というアプローチの違いから出発しているように思われます。そのあたりを整理してみたいところです。

4月 4, 2012 「公正妥当な企業会計慣行」と長銀事件 |

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コメント

最高裁の判決は、武井先生が指摘されている通り、「慣行」を重視したものと解釈するのが妥当ではないでしょうか。「公正なる会計慣行」の内容ではなく、「慣行」という外形に着目しての判断は、より客観的で明確になるとの考え方ではないでしょうか。
『大手行18行のうち14行は,長銀と同様,関連ノンバンク等に対する将来の支援予定額については,引当金を計上しておらず』と述べられているように、定量的な判断をし、「慣行」となっている以上は違法とはいえないとの結論を導き出したものと思われます。

一方、補足意見では『税法基準の考え方により貸付金を評価すれば,実態とのかい離が大きくなることは明らかであると考えられ,長銀の本件決算は,その抱える不良債権の実態と大きくかい離していたものと推認される』と、「慣行」となっている以上違法とは言えないものの、経済実態を反映させるべき会計の考え方からは、「公正」な会計慣行によるべきものとの考えを述べたものと思われます。

投稿: 迷える会計士 | 2012年4月 8日 (日) 11時06分

迷える会計士さん、貴重なご意見ありがとうございます。このテーマは非常に関心のあるところでして、多くの会計実務家の方とも意見交換をしました。本日、横浜でも会計学者の方のご意見をお聴きしています。
迷える会計士さんの意見も「なるほど」と感心しています。やはり会計士と弁護士との考え方の違いですかね。こういったご意見をもとに、また今年度も続編をやることが会計士協会側から提案されました(といっても、まだ弁護士会側はなんともいえないのですが)。
ぜひ、また続編を書きたいと思います。

投稿: toshi | 2012年4月10日 (火) 21時40分

「こんなことを発表したら、会社が潰れかねない。」と考えて、軟着陸を図る経営者陣が2社にいました。
①「本当は会社のバランスシートに大きな穴が開いていることは理解しているが、こんなことを発表したら、株価は暴落するし、資金もとれなくなるので、今までの会計処理(公正なる会計慣行)で、穴は無いことで発表しよう。」
②「日本で認可されていない食品添加物を使った製品を販売してしまった。健康被害は出てないし、今後は使わないことにするのだから、発表はやめておこう。」

①は責任なし、②はそんな決定は有りえないとして、取締役全員に責任が有る、というのが、司法の判断だと思います。②に異論はないのですが、①については、発表しない間に、大きな穴が無い前提で(本当は大きな穴があるんじゃないかと思っていた人はたくさんいたと思いますが)、市場で有価証券が売買されて損失を蒙った投資家がいることを考えると、私はまだ違和感がぬぐいきれないところです。

投稿: MAX | 2012年4月11日 (水) 09時21分

MAXさん、ご意見ありがとうございます。たしかに②は私も少し違和感が残るところですし、むずかしいですね。竹を割ったような整理がつかないところかと。意見が分かれるところだと思います。
また今回のご意見を踏まえて、次回の関連エントリーに活かせていけたらと思っております。

投稿: toshi | 2012年4月14日 (土) 12時15分

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