« 大王製紙事件・創業家と経営陣対立について考える | トップページ | 富士通元社長事件判決と上場会社の反社対応実務への影響 »

2012年4月10日 (火)

監査役全国会議のコーディネータは緊張しました(パシフィコ横浜)

本日(4月10日)、パシフィコ横浜国立大ホールにて開催されました日本監査役協会第74回監査役全国会議「今、日本のコーポレート・ガバナンスに何が問われているのか-監査役への今日的期待-」にて、基調発表ならびにシンポのコーディネーターをさせていただきました。時節柄、代表的な企業不祥事を検証し、なぜ監査役がこれを早期に発見できなかったのか、どうしたら「気づき」と「勇気」を監査役が備えることができるのか、といったことを起点として、投資家サイド、会計監査人サイド、監査役(監査委員)サイドから、いろいろと語っていただく、というものです。

約2300名の監査役の皆様の前で発表ならびに司会を務めるのはたいへん緊張いたしました。おそらくひとりでしゃべる方が、コーディネータを務めるよりも楽だと思います(笑)。各パネリストの良さを引き出したり、ご本人がお話になりたいことを、シナリオの流れの中でどう組み入れるか、時間が足りなくなれば、どこを省いてしまうか瞬時に判断する等、結構気を使います。懇親会のときはさすがにヘロヘロでしたが、新日鉄の常任監査役の方に「僕ね、毎日あなたのブログ、楽しみにしてるんだよ~」と(やけに握力の強い手で)腕をつかまれて、少し元気になりました(^^;;

東大の岩原先生の基調講演も(これまた時節柄、得した気分で)有益なものでしたが、私が「参加してよかったぁ」と感じたのはキッコーマン会長の茂木さんのお話でした。リーマンショックの後、民主導経済についての反省がなされつつありますが、だからといって官主導に戻るのではなく、民主導経済の行き過ぎについて一部修正がなされるべき、その修正方法等について、監査役監査へのヒントがあることを理解いたしました。また健全な資本市場を形成する前提として、「日本にも敗者復活戦が必要」とのご主張には納得いたしました。

月刊監査役7月号に全国会議の様子が掲載されるそうですので、まだまだ速記録の確認等たいへんだとは思いますが、監査役の不祥事対応というかなり難しいテーマを今後、検討される際の「たたかれ台」になっていれば幸いでございます。いろいろと勉強させていただいたパネリストの関孝哉さん(コーポレート・プラクティス・パートナーズ代表取締役)、山田眞之助さん(日本公認会計士協会常務理事)、そして堀岡弘嗣さん(東芝 取締役監査委員)の皆様に感謝申し上げます。

※※※※※

なお、本日の全国会議の際には申し上げませんでしたが、2年前の横浜パシフィコでの全国会議には、東京電力の常務取締役の方がパネリストとしてご登壇され、おそらく日本でもっともすすんだ内部統制システムを紹介、参加された皆様方から絶賛を浴びておられました。パンデミック対策が話題だったころ、私も「東電さんのBCPは、さすが日本一、優秀な方々が集まってないと、これほどのものは作れないなぁ」と感心していたものです。その頃、だれも今日の東電さんの事態など予想できなかったわけでして、2年前の全国会議の速記録を改めて読み返し、コンプライアンス経営のむずかしさ、はかなさを感じております。あれだけ絶賛された東電さんの内部統制システムさえ(私も昨年、NBLに論文を掲載していただきましたが)、平時のリスク管理体制への疑問、有事の危機対応への批判が止むところはありません。社会の公器たる企業を形成するため、だれが社内の問題を指摘できるのか、どうすれば指摘できるのか、平時にこそ真剣に検討する必要があるという気持ちになります。

企業が有事に至ったとき、ひとりひとりの役職員の姿をみれば誠実であるのに、なにゆえ企業として、ここまでボタンの掛け違いが生じてしまうのでしょうか。本当にコンプライアンス経営のむずかしさを知るためにも、いまこそ2年前の監査役全国会議の記録を読み返すことが有意義ではないかと思う次第です。

|

« 大王製紙事件・創業家と経営陣対立について考える | トップページ | 富士通元社長事件判決と上場会社の反社対応実務への影響 »

コメント

山口先生、全国会議でのコーディネーター大変お疲れ様でした。先生の巧みな議論の捌き方、素晴らしい司会により重たいテーマにも関わらず、参加者から本音を引き出し中身の濃い議論になっていたと思います。出席した監査役で私の周囲にいた方々に聞いても、大変好評でした。特に、山口先生が最後のほうで話された事、「監査役監査をワークさせるためには、経営者が監査役制度をどう思っているかによる。彼らが無関心であれば、監査役だけが頑張っても
どうしようも無い。。」と言う部分には真に共感致しました。

投稿: 悩める監査役 | 2012年4月12日 (木) 09時54分

どうも御来場ありがとうございました。本当はもっと濃い論点などもご用意していたのですが、パネリストの方が熱心に回答されていたので、時間切れになってしまいました。
でも、我々の問題意識が、監査役の皆様に伝わっていたとすれば、これ以上うれしいことはございません。

投稿: toshi | 2012年4月13日 (金) 01時58分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 監査役全国会議のコーディネータは緊張しました(パシフィコ横浜):

« 大王製紙事件・創業家と経営陣対立について考える | トップページ | 富士通元社長事件判決と上場会社の反社対応実務への影響 »