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2012年4月24日 (火)

富士通元社長事件判決からみた社外役員の効用

昨日(4月23日)の日経「法務インサイド」において、「富士通元社長辞任問題の教訓」と題する記事が掲載され、そこで富士通社には(当時)社外取締役3名、社外監査役3名がいったいどのような役割を演じていたのか明確ではなかった、社外役員の実効性(監督機能)が改めて問われるのではないかと報じられておりました。社外役員強化の方向性はわかるけれども、本当に実効性があるのかどうか懐疑的、といったトーンで書かれていたように思います。

先日、私は(学術的な目的のため)この判決文をある方から見せていただきましたが、地裁レベルの判断ではありますが、この富士通元社長事件の判決文を全文読みますと、少し違った印象を受けると思います。といいますのも、社外監査役のおひとりが、元社長に対して厳しく尋問を行うシーンが(録音レコーダーで記録されたまま)、そのまま判決文に引用されているからであります。ちなみに本事件では、原告(元社長)側が、脅迫や強要によって辞任を迫られ、自由意思を奪われていたと主張しておられるので、本当に脅迫や強要があったのかどうかが詳細に検討された結果、(脅迫や強要の事実はない、とする判断根拠として)判決では詳細な会話内容が引用されることになったものと思われます。

この社外監査役の方には、尋問までの綿密な準備、一回の尋問によってなんとか解決に至らしめる気迫が伺われるのでありますが、判決全文を読みますと、とても社内の取締役や監査役では同じことはできないと確信いたします。本件はまさに企業の有事対応が問題となっておりますが、なんとか企業の自浄作用によって不祥事を解決しようとする意図がひしひしと感じられます。もしこういった場面で他の取締役や監査役が社長を辞任に追い詰めることができるとすれば、すでに社内で社長と他の役員の間で支配権争いを演じており、社長の反対側に大株主がバックについているような場合くらいではないでしょうか。私はこの判決文を読ませていただき、上記の記事とは逆に社外役員の有効性が如実に現れた事案であると認識しております。

何度も申し上げるところですが、反社会的勢力と上場会社との接触は、「後から発覚」では遅いわけでして、合理的な疑いのあるところでどう対応するか、ということが最も大きな課題であります。元社長さんにとっては、判決後の記者会見で述べておられるとおり、突然の辞任要請、しかも役員が一堂に会している場ではないところで、ということから、デュープロセスの視点から疑問を感じるとのこと。たしかに会話の中でも、「なぜもっと早く警告をしてくれなかったのか」とおっしゃっているところもあります。しかしこの点についても、判決文を読みますと、会社側として手続き的にも最大限の配慮がなされているようです。なかでも「どうして警告が元社長の耳に入らなかったのか」という点については、企業組織における情報伝達のむずかしさが示されており、こちらもコンプライアンス的には勉強になるところです。

内容を相当にうまく削除(訂正)しなければ、当該判決文は公表されないかもしれませんが、企業法務的には非常に価値の高い判決文であると感じた次第です(判例情報誌などで全文掲載されるといいのですが)。また、高裁がどのような判断を下すのでしょうね。

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コメント

 朝日で判決文を読みました。
 これほど詳細な会話が証拠となり、判決に引用されるとはビックリです。
 そうすると、野副前社長は、なぜ、ご自身が経験された事実を争うことにし、引き際を美しくまとめなかったのでしょうか。ご自身で、争うことは難しいと感じられていなかったのでしょうか。語って頂くことはないでしょうし、推測は困難と思いますが、とても気になります。

 ところで、投資会社が富士通に提起した名誉毀損訴訟も、一審は富士通が勝訴したようですが(新聞報道程度しか知識はありませんが。)、こちらはあまり世間では取り上げられていないですね。

投稿: Kazu | 2012年4月25日 (水) 15時08分

Kazuさん、コメントとは全然関係ないのですが、一週間ほど前にKazuさんにいただいたコメント、私のミスで削除してしまいました。スパムが多いので、一緒に削除してしまったようです。申し訳ございませんでした。

投稿: toshi | 2012年4月25日 (水) 15時43分

山口先生
 消えてしまったコメントは、難しいものではないので、該当頁にもう一度投稿します。
 ブログの維持管理は大変なのですね。

投稿: Kazu | 2012年4月27日 (金) 19時19分

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