ひさしぶりの「物言う監査役シリーズ」-ベリテ社事例の続編
一週間のご無沙汰でございました。私はといいますと、連休初めに家族旅行に出かけたものの、4月30日から昨日(5月6日)まで、新刊書の原稿執筆に明け暮れておりました。本当に、こんなに執筆に没頭したことは生まれて初めてです。なんとか一冊分の原稿(粗原稿ですが)を書き上げまして、本日より本業に復帰でございます。新刊書は、一番書きたかった「法と会計の狭間の問題」をいくつか取り上げまして、弁護士、会計士だけでなく一般企業の方々にもお読みいただける内容にしております。その節は、またご紹介したいと思います。
さて、3月20日のエントリー「取締役の不正行為に関する内部通報を受領した監査役対応(ベリテ社事例」でご紹介しました宝飾品販売大手のベリテ社の件ですが、調査委員会の報告書を取締役会が受領した旨、4月27日にリリースが出ております(調査委員会による報告書受領のお知らせ)。ちなみにベリテ社は、非上場の親会社が57%の株式を保有しており、親会社が外国人の社外取締役を派遣、その他の取締役も代表者以外はすべて外国人取締役です。監査役会が会計不正疑惑を(内部通報によって)知り、自ら第三者委員会を設置し、その委員会がこのたび報告書を提出した、とのことです。
概要はリリースにあるとおりで、明確に架空取引があったとまでは言えない、との結論だった模様です。ただ興味深いのは、監査役会が取締役会に対して、この調査報告書の全文(全内容)を開示するよう求めたところ、取締役会は全文開示は不相当と判断したこと、その取締役会の判断に監査役会が不同意としたことが掲載されております。特定取引先との架空取引の疑いや、関連会社との融資目的による経済的合理性のない取引の疑いが調査委員会によって判明しているようですが、おそらくこういった事実関係についてはステークホルダーへの説明義務があることを監査役会が主張しているもののようです(ちなみに、社外監査役2名は、金融機関出身、なかでもおひとりはM&A投資コンサルタント会社の役員の方。投資家向けの情報開示については厳しいご意見をお持ちなのかもしれません)。
こういった第三者委員会の報告書を全文開示することの是非も問われるところかと思いますが、なんといっても、このリリースのおもしろいところは、取締役会と監査役会の間に意見の相違がある(現に問題を残している)ということを開示させたことであります。おそらく監査役の方々が、社長に調査委員会報告の全文を掲載しないと判断した経過とその理由を開示せよ、と迫ったことによるものかと思料されます。
物言う監査役については賛否両論あるかとは思いますが、私は監査役(監査役会)の活動が目に見える形で外部に伝わることには賛成です。もちろん、このような意見の相違が顕在化するまでには(社内で解決を図るべく)何度も協議がなされたかとは思うのですが、それでも意見の対立が残るようなケースにおいては、大株主以外の少数株主の利益保護のためにも、好例ではないでしょうか。
なお、今後もまだ調査委員会による追加報告がなされるようですので、ひさしぶりの物言う監査役さんの活躍事例として、ベリテ社の不祥事疑惑の進展について注目してみたいところです。
| 固定リンク
コメント