社外監査役が会社を訴えて勝訴した事例(さすが金融庁初代長官!)
一個人株主さんから教えていただきましたので、アコーディアゴルフ株主委員会主催の株主提案説明会の様子をビデオ録画(ストリーム 株主委員会のHPでどなたでもご覧になれます)で拝見しておりましたところ、おもしろいシーンが・・・
(大株主側社外取締役候補でいらっしゃる金融監督庁初代長官のスピーチ)
「ちょうど1カ月前の平成24年4月24日、最高裁判決が出まして、私は会社の新株発行の無効を主張して完全勝訴しました。私(社外監査役)が会社を訴えたのです!社外監査役である私が会社を被告として訴えたのですよ。最高裁でも全部勝ちました!寺田裁判官が補足意見の中で、よくぞこの監査役は会社を訴えたものだと称賛していましたが、それは私です!」(^◇^ ;
下級審の判決文(金融・商事判例1317号)や最高裁判決文ではたしかXとか「原告」として表現されておりましたが、こちらのビデオでは「これは私です!」と見事にカミングアウトされておられました。さすがでございます。
旧商法時代にストックオプションとして新株予約権が発行されたのですが(上場条件付き)、この会社のコンプライアンス上の問題発覚によって上場が困難になりました。そこで、会社法時代になってから取締役会で勝手に当該ストックオプションの行使条件を変更してしまって、元取締役の方々に都合のいいように新株予約権が行使され新株が発行されてしまいました。就任早々、この社外監査役の方は、「これは新株予約権の有利発行に総会の特別決議が必要であることの趣旨を潜脱したものでけしからん!」ということで、新株発行無効の訴え(予備的には無効確認)を(会社を被告として)提起した、というものであります。
非公開会社に関する判例ですが、上場会社にも実務的に参考になるものなので、ご興味がございましたら最高裁HPでご覧になれますのでそちらをどうぞ。また、寺田裁判官の補足意見では、新株予約権、募集株式の有利発行について、その内容決定権の取締役会委任の是非についても(公開会社と非公開会社とを比較しながら)商法と会社法の解釈上の違いに言及されており、とても参考になります。なお、中村直人先生が東京証券代行のコラムに、本件事例の争点を明確に解説しておられますので、そちらも参考になります(私は拝読しておりませんが、ジュリスト6月号には弥永真生教授が判例評釈を書いておられるそうです)。
アコーディアゴルフの件について、最新情報を得ようと思ってビデオストリームを閲覧しておりましたが、途中でこっちの話題ばかりが気になってしまって、結局新しいネタを取り忘れてしまいました((+_+))それにしても、さすが金融庁初代長官、平成18年12月に社外監査役に就任されて、平成19年4月に会社を相手に訴えを提起するという、まさに独任制の社外監査役の鏡であります!(おそらく就任早々、「これはいけませんよ!直ちに元に戻しなさい」などと取締役の面々とバトルがあったものと推測いたします。普通じゃなかなかここまではできないかもしれません・・・)
あと、この社外監査役の方は平成18年12月に就任されておられますが、平成24年5月時点で、すでに5年以上監査役に就任されています。当該会社は非公開会社ですが、定款上の監査役の任期はもっと長いのでしょうか、それとも4年の任期を終了し、再任されているのでしょうか。訴訟上の当事者適格の問題もありますが、こういった紛議があったとしても、会社側としてはなお、この方に社外監査役就任を望んでおられるのでしょうね。
おそらくアコーディアの社外取締役に就任されても、大株主(もしくはその親会社)の利益よりも、株主共同利益を優先する姿勢をお見せになるであろうことが、このビデオと最高裁判決でよく理解できました。実はこの金融庁初代長官の方は、私が司法試験に合格した年に、刑事訴訟法の面接試験の試験委員として面接していただいたことがございます。ただただコワイ印象だけが残っております(^^;。社外監査役の理想的な姿を体現した事例としてご紹介いたす次第です。
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コメント
山口先生、情報有難うございます。しかしさすがですね、初代金融庁長官氏。彼は私が預金保険機構に出向していた時に、ご尊顔を拝した事がありますが、実にパワフルな方でした。まさに社外監査役として王道を行かれ、訴訟提起して完全勝利されたのですから。ただ、ここまでの行動が可能なのは彼だからこそ、と思ったりするのは無名監査役の僻みでしょうか。。
投稿: 悩める監査役 | 2012年5月30日 (水) 09時51分
金融庁初代長官の裁判の件、カミングアウトだったのですね。
本職(弁護士)のかたはご存知だと思っていました。
TOSHIさんが上記のような印象をお持ちになられるのでしたら、なおさら株主委員会側が勝つ可能性が大ではないでしょうか?
アコーデイアの取締役はMAX10名、報酬総額3億、監査役5名、報酬総額1億です。役員の数が10名を超えてしまうとどうすののでしょうか?
また、会社提案の新任社内取締役2名は株主委員会も承認しているので可決するでしょう。その際、他の役員は委員会側の役員でそのまま受けるのでようか?また、株主委員会は社長はどうするのでしょうか?
投稿: 一個人株主 | 2012年5月30日 (水) 14時52分
一個人株主さんのご疑問については、私の中では予想を立てていますが、ここでは触れないことにします。あくまでも本件については野次馬的な意見で語らないと(ブログといえども)エチケット違反になりますので。
迷える監査役さんだけでなく、私だって、ここまで徹底的な行動に出ることには躊躇すると思いますね。株主構成にもよりますけどね。いや、ホントにスゴイ事件だと思います。
投稿: toshi | 2012年6月 1日 (金) 02時22分
昨日、株主委員会開催の説明会にいってきました。
二百数十人集まったと思います。
取締役候補がこられると思っていましたので、参加者は委員会の事務局のみだったので残念です。
確かに、取締役候補はりっぱな方がおられます。
しかし、委員会側の説明は胡散臭い感じがします。
基本的にアコーディアとPGMの合併、もしくはアコーディアを買収を考えていると、アコーディアの株価は安いほうがいいわけで、平和(PGMの親会社)とオリンピア(アコーディアの大株主で平和の子会社)及びI氏(アコーディアの大株主で平和のオーナー)は広い意味で利益相反が生じます。
今回の取締役候補のS氏の弁護士事務所はPGMの顧問事務所です。
説明会でもオリンピアは上場以来の株主と何度かおっしゃり相当損をしているともおっしゃっていました。しかしI氏は昨年度前半に全株数の3%買っておられます。平和によるPGMのTOBは昨年10月ですので一連の流れと思われます。
また、買収合併にはいろんなハードルがあるともおしゃっていましたし、その時の価格は株価でないともおしゃっていました。
まず、価格はもちろんいろんな計算はされるが、所詮最後は株価が重要視されそれの2割増しぐらいとなる場合が多いです。
合併には2/3の賛成が必要だが、合併かTOBもしくは太平洋クラブの買収の問題など何か裏があるとしか思えなくなりました。
投稿: 一個人株主 | 2012年6月 3日 (日) 10時25分