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2012年5月 8日 (火)

闘うコンプライアンス(景表法違反で御社は闘いますか?)

(9日午前 訂正あり)

ひさしぶりの「闘うコンプライアンス」シリーズですが、ソーシャルゲーム(アイテム課金制の無料ゲーム)で急成長のグリー社、DeNA社のコンプガチャ(ソーシャルゲームにおいてレアモノのカードを入手するための絵合わせ電子くじ)が景表法違反になるのではないか、との報道がなされ、両社とも株価が急落したとのこと。消費者庁としては、まだ違法性の疑いがあるかどうか、リリースはしていないようです。

カード合わせ、絵合わせによる懸賞くじは、たしか1960年代から景表法によって全面禁止だったように記憶しております。その昔、某キャラメルのおまけで巨人軍の選手と監督のカードを全部集めると豪華景品がもらえるとのことで、必死になって集める子供たちがいて、そのうちキャラメルだけ捨ててカードだけ集める、ということが社会問題となったのが規制の発端ではなかったかと。銀のくちばしを5個集めて「おもちゃの缶詰」がもらえる森永チョコボールとどこが違うのだろうか・・・と素直に疑問を感じておりました。

消費者法はあまり詳しくございませんので、このコンプガチャが景表法違反に該当するのかどうかはコメントいたしませんが、消費者庁が「景表法違反の疑いがある」と各方面に広報する、ということになりますと、グリー社等は(コンプガチャによる売上が、ゲーム事業の収益の9割を占める3割程度を占める課金制度なので)今後の収益に大きな影響が出てくるのかもしれません。いずれにしても、ゲーム会社にとって一大事となりましたので、もし今後景表法違反の疑いがあり、消費者庁から排除措置命令の可否に関する呼び出しなどがあった場合、どう対応すべきか、という点が企業の課題となるところであります。

消費者庁が、不正行為と判断したとしても、あくまでも行政当局の判断です。もし反論があるのであれば、事前手続きで弁明すればよいでしょうし、排除措置命令が下りたときには不服申し立てをすればよい、ということになります。当局の解釈が絶対ということはありませんから、司法の場で争えばよい、まさに新潟県加茂市と正々堂々と闘ったファストファッションのしまむら社のように、闘うコンプライアンスの姿を貫けばよいと思います。

ただ、このコンプライアンス経営のご時世、景表法違反の疑いをかけられた企業が、本気で消費者庁と闘うには相当の勇気が必要です。排除措置命令や警告、というものが下りた場合、もちろん不服申立、取消訴訟、国賠等の司法救済は可能ですが、行政処分は止まってくれません(行政行為の公定力)。つまり不正行為を継続する企業としてのレッテルを貼られたままです。レッテルを貼られるとどうなるか?金融機関は「コンプライアンス違反企業」に融資を継続してくれるでしょうか?大手小売業者は商品の棚を提供してくれるでしょうか?ソーシャルゲームのひとつとして、遊ぶ場所を携帯各社は提供してくれるのでしょうか?それぞれの企業にとって、不正行為の助長による収益拡大はコンプライアンス違反です。各社とも、消費者庁の是正命令に従うことを条件に取引を継続する、ということになるのではないかと。

被害者団体から訴訟を提起されたり、将来収益への疑問から株価が急落することはまだマシです。時間をかけてゆっくり対応しても大丈夫です。しかし、消費者庁と正々堂々闘うことは「自分が正しい」と考えている上場会社にとっては賞賛されるべきですが、その闘っている期間、商品の販売ができなくなってしまう可能性が生じる、ということです。これが景表法違反を争う場合の最大の問題です。かつてはこんな状況にはならなかったと思います。しかし他社がコンプライアンス違反に敏感に反応してしまうようになった分、景表法違反は企業の息の根を止めてしまうほどの威力をもつようになり、結局争いたくても争えない状況に置かれてしまいます。

世間では(意外と)景表法違反問題は軽くみられているところがありますが、BtoCの上場会社におきまして、商品を販売するルートは極端に狭められてしまいます。したがって、多少不服があっても行政当局には逆らわない(逆らえない?)という道を選択してしまいます。今回のグリー社らも、今後どのように景表法問題に対応していくべきか、正念場を迎えることになりそうです。

5月 8, 2012 経済法 |

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コメント

(コンプガチャによる売上が、ゲーム事業の収益の9割を占める課金制度なので)
通常のガチャとコンプガチャは違います。
ガチャがすべてコンプガチャみたいな表現はちょっと誤解を招くかもしれません。

投稿: Jazon | 2012年5月 9日 (水) 09時58分

ご指摘のとおりです。間違いを指摘いただき、ありがとうございました。さっそく訂正させていただきました。

投稿: toshi | 2012年5月 9日 (水) 10時53分

 今回問題となっているコンプガチャについて、弁護士先生の意見書はどのように適法であるという結論を出しているのか、非常に気になります。また、景表法の改正(http://www.caa.go.jp/representation/index.html)の時に、意見書を取り直したかどうか(当初の意見書の作成日が改正前だった場合)、色々気になるところがあります。そもそも、弁護士先生から意見書を取っていなかったり、ということはないと思うけど。

 お金が儲かっている会社については、そのお金がどのように稼がれたか、CSRの観点からよく考えて欲しいですね。未成年から多額のお金を得るとか、投資に疎い高齢者にハイリスクの金融商品を売り付けるとか、自己責任とは言えないような取引で稼ぐのは、個人的には好きではありません。

投稿: Kazu | 2012年5月 9日 (水) 16時57分

グリーもDeNAも廃止を打ち出しましたね。
私は、これぐらいのビジネスは規制の間隙をぬった適正なビジネスであり、使う方の自己責任だという意見の持ち主です。会社の目的は利益を上げることであり、過保護な規制にはチャレンジしてよいのが当たり前です。
ただ、チャレンジする姿勢とともに、問題になった場合の身のこなし(流れを読む目とスピード)が重要で、今回の両者の対応は素晴らしいです。とりわけ、グリーの短いプレスリリースは企業対応の在り方が凝縮されておりますね。

投稿: JFK | 2012年5月 9日 (水) 21時03分

いつも読ませていただいております。
景表法の件は当事者の身のこなしの適確さは称賛に価します。

ところで、文中の「排除措置命令や警告、というものが下りた場合、もちろん不服申立、取消訴訟は可能ですが」について若干疑問ですのでご教示いただきたく。
「警告」は行政処分ではなく、行政指導に過ぎない筈ですので行政不服手続きや取消訴訟の対象にはできないのではないか、と思いますがいかがでしょうか。
どうしても見解を正したいのであれば国賠ぐらいしかないのではないか、と思います。

投稿: KEIGO | 2012年5月 9日 (水) 23時21分

 私からすると、疑わしいからもうけるだけもうけて雰囲気が悪くなったらさっさと撤退、という予定の行動にも見えます。太く短い焼き畑農業としてはその通りかもしれませんが、長く続くビジネスや会社ではないような気がしますが、これが新興企業や新しいビジネスの限界なのでしょうか。少々寂しい気がします。
 ほどほどのもうけにして長く続けるという選択肢はないのでしょうか。

 私は、未成年者が収益(収奪?)の対象になる場合は、国家が動き出しても過保護とは思いません。大人とは明確な区別をするようなシステムは容易に作り出せるでしょうし、それをしなかったのはどうかと思います。

投稿: Kazu | 2012年5月10日 (木) 01時19分

皆様、ご意見ありがとうございます。すべて参考にさせていただいております。まだまだコンプガチャに代替する課金システムも出てきそうなので、これで一件落着ということにはならないでしょうね。

KEIGOさん、ご指摘ありがとうございます。警告はとくに作為や不作為を命じるものではありませんので不服申し立ての対象にはなりませんね。本文を訂正しております。

投稿: toshi | 2012年5月10日 (木) 02時36分

DMORIです。
問題は、こうしたアイテム購入代金を、ゲーム業者が携帯電話の通信料に載せて請求できることです。
パソコンの場合、販売代金を業者が手に入れるためには、インターネットのプロバイダー料金に載せることは難しく、クレジットカード番号を入力させたり、電子マネーを購入させたりしなければなりません。
したがって、子どもをだましてアイテムを買わせることは難しい仕組みになっています。それが、携帯電話だとアイテム購入をOKクリックすると、通信料金に載せて自動引き落としで回収することが可能なのです。
もちろんこのやり方は、ゲーム業者と携帯電話会社が結託しているからできるわけで、携帯電話会社こそ非難されるべきです。
インターネットが普及する前、電話で有料情報を提供する「ダイヤルQ2」という仕組みが、一時期流行したことがありました。3分10円の電話料金に上載せして、1分100円とか、もっと高額な情報料を課金できる方法でした。その当時も、子どもが知らないうちに、あるいは興味本位でダイヤルQ2の番号へかけてしまい、保護者がひと月何万円もの電話代金を請求されるケースが出て、社会問題になりました。
消費者の怒りが高まり、当時のNTTは、ダイヤルQ2を一切利用しない設定を選択できるように、システムを改善した経緯があります。今の携帯ゲームサイトの課金も、昔とまったく同様のケースであります。
監督官庁はダイヤルQ2の問題と改善を経験しているはずなのに、携帯電話会社へもメスを入れないのは、無能または不作為による同罪でしょう。
無料のソフトやアイテムをダウンロードすることはかまわないにしても、1円でも有料アイテムとして通信料金に課金される場合は、親権者が契約時に手続きをしないと、使用できないようにすべきです。
仮に親が認める場合でも、1か月あたりの課金限度額を指定できるようにすればよいのです。これができないのは、携帯電話会社も課金ゲームからのマージンを得ているから、手放したくないなどと、利権に群がる同類のような企業なのでしょう。

投稿: DMORI | 2012年5月12日 (土) 21時59分

DMORIさんのご指摘に同感です。また、子供に起因する高額課金の問題は課金システムの問題であって、短絡的に景表法の問題に結び付けるべきではないと思います。

投稿: JFK | 2012年5月13日 (日) 13時31分

今更ながらこちらのエントリーに投稿させて頂きます。

消費者庁がコンプガチャを違法と判断するのであれば、デジタルアイテムの利用に「経済上の利益」を認めることが前提になろうかと思います。となるとコンプガチャ以外の論点にも飛び火することになります。

例えば、握手会のチケットを添付したCDの販売や、オンラインで独占配信されるライブ映像のパスワードが付けた雑誌など、景品における経済上の利益をどう判断するのか、多くの会社に影響を及ぼすのではないかと危惧します。

また別の論点ですが、携帯電話各社は成人を含む形で昔から上限額規制をしています。未成年については特に厳しい金額規制があります。まさにソフトロー的規制が寡占的市場と相まって、トラブルの声を未然に封じている形ですが、ここではその話は置いておきましょうす。

今回話題になったSNS各社でも未成年利用金額の上限を2009年頃から設けていて、キャリア決済では月1万円程度が限度額となっていました。

子供が使いすぎたというという事例は、キャリア決済の問題なのではなく、クレジットカード決済により生じた問題になのです。DMORIさんの挙げられているケースは実態には即していないかと考えます。

おっしゃる通り課金システムとの関係はより深く論じられるべきものと私も思料します。

投稿: ホーム部長 | 2012年5月14日 (月) 18時10分

この問題ですが、例えばノーアクションレターを利用して問い合わせあった場合はどうなるのでしょうか?
大手2社が今まで行っていた内容“そのまま”で、
具体的な事例をもって景表法の指定をして問い合わせをした場合、
行政の回答として「ただちに違法性があるとは考えていない」旨の回答がされるのでしょうか。

ノーアクションレターも会見も行政の見解に過ぎないのでしょうが、
「全くもって問題ない」では先の会見と矛盾しますし、
「抵触します」では行政の不作為が指摘されこれまた難しいと思います。

当然、議論はなされているのでしょうけど。

投稿: 博多ぽんこつラーメン | 2012年5月15日 (火) 21時29分

ノーアクションレターですが、当局は、(他社も含め)既に行われている行為についての相談は受け付けず、企業が具体的にこれから行おうとする行為のみ受け付けてます。

なので、本件相談は受け付けてくれないはずです。

例え、本件について事前相談した場合でも、「問題ある」or「問題なし」のはっきりした回答ではなく、「問題のおそれがある可能性がある」とか玉虫色の回答しかもらえないので、結局使えなかったと思います。

投稿: ラーメン三郎 | 2012年5月15日 (火) 23時46分

DMORIです。
ホーム部長さんの、子どもが使いすぎた事例は、キャリアの問題でなく、クレジットカード決済により生じた問題であるとのご意見について。
結果的に代金は、多くの携帯電話加入者が、クレジットカードによる支払いを登録しているから、引き落とされる事象にはなっています。
しかし、通話料金だけでなくゲーム利用料も含めて、なんでもかんでもクレジットカードから引き落とされるのは、クレジットカード会社が仕組んだことではなく、携帯電話会社が作った仕組みです。この仕組みが犯罪的な行為なのです。
たとえば、パソコンでインターネットを利用する場合、いずれかのプロバイダーへ申し込み、代金支払いはクレジットカードを利用するケースは多いです。
ここで、悪質なプロバイダーがゲーム業者などと結託し、ゲームのアイテムを購入した場合も、プロバイダー料金に載せて引き落としする仕組みを打ち出したようなものです。
これにより、アダルトサイトに少しの興味でクリックしただけでも、閲覧料10万円の支払いに同意したことになり、その代金を、同時にクレジットカードでの決済につなげることが可能なのです。
こうした消費者無視の、悪質な仕組みが、ケータイ電話会社とゲーム会社が結託して考えたことなのです。
クレジットカード会社は、むしろこうしたリスクのある支払いへも、立替払いをしているわけですから、カード会社の責任問題ではないでしょう。

投稿: DMORI | 2012年5月16日 (水) 22時05分

コメント欄が盛り上がっているにもかかわらず、アコーディアの件に話題が移ってしまい申し訳ございません。決して管理人として放置しているわけではなく、皆様方のご意見をたいへん興味深く拝読しております。せっかくですから、またアコーディアの件がひと段落したところで、総括的なエントリーを書きたいと思っておりますので、少々お待ちください。なお、こちらでの意見交換は今後もご自由にどうぞ

投稿: toshi | 2012年5月17日 (木) 01時43分

政府が違法性を公表しましたね。それにしても、7月1日からとは。これがほんとの「事後」規制ですね。
「おもしろうない世じゃ。」(清盛風)

投稿: JFK | 2012年5月18日 (金) 13時00分

ゲームが公正であるためには、利用者がゲームのルールを知っていることが必要ですが、この点ではルールのキーであるカードの出現確率を会社が明確にしていないことが問題で、さらに状況に応じて射幸性を煽るように調整していたようです。http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120514-OYT1T00577.htm

「絵合わせ」の全てを違法とする必要はなく、過度の射幸性のある「絵合わせ」を違法とするべきではないでしょうか。そうでなければ、新しいビジネスモデルが出てきた時に、定性的に「絵合わせ」がどうか判断しなければならず、過剰な規制につながる可能性があります。
過度の射幸性について、定量的な基準、例えば「絵合わせ」が完結するまでの試行回数の期待値を設定することも可能ではないでしょうか。試行回数の期待値は、出現するカードの種類数とその出現確率、及び「絵合わせ」のカードの種類数から数学的に算出できるはずです。

投稿: 迷える会計士 | 2012年5月18日 (金) 22時52分

皆様の内容を拝見させて頂きました。

景品法?での、なおかつ無店舗であったため
問題が大きくなったものと思います。

有店舗の場合、その管轄への届け出があれば
”おまけ”であったり”抱き合わせ販売”でも
さほどお咎めありません。

問題は、縦割り行政ですもの、そっちは
関係あるor関係ないって事になりますでしょ。

「絵合わせ」までは問題ないのです。

問題はそれによる課金またはそれに類するもの

そこが商品販売景品法に触れると言ったところ。

また、多くが、その部分(ふれているところ)に
対しての売り上げが大きいところ。

実際に、CPが無い場合のアクセス数は半減するで
しょう。当然広告だけで維持できるかというと、
そんな気はしません。

だましは、さっさと撤退すべきです。(本音)
失礼しました。

投稿: 通りすがりのものですが | 2012年6月 7日 (木) 18時08分

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