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2012年6月29日 (金)

壮絶・アコーディアゴルフ株主総会-24時間、闘えますか?-

(6月29日 午後0時30分追記あり)

今年の株主総会の話題としては、電力会社や不祥事を起こした企業に集中した感があります。ガバナンス問題によって会社側の取締役選任議案が否決され、株主側提案による社長さんが誕生した会社も出てきたようであります。しかしながら、マスコミの関心とは別に、当ブログとしましては、今年の株主総会の「真打ち」としてアコーディアゴルフ定時株主総会に注目しておりました。予想通りといいますか、前代未聞といいますか、壮絶な株主総会となっているようであります。

結局のところ、本日(6月28日)の総会では取締役議案の賛否集計が終わらず、29日の午前10時に議長が集計結果を報告する、という事態となりました。法的には総会をいったん打ち切って「延期」や「続会」にする、ということではなく、実際に集計作業が続いている、ということでしょうから、28日の午前10時から29日の午前10時まで株主総会が続いていることになります。つまり会社側も、大株主側も、委任状争奪戦をもって24時間以上闘い続けている、ということであります(いちおう、ホテルニューオータニの会場はそのまま使用され続けている、というなんでしょうね)。

会社側リリースによりますと、どうも会社側による取締役・監査役候補者の大半の方々が過半数の賛成票を得たようですが、委任状の集計結果次第では、ほかに会社側候補者2名、大株主側候補者1名の方の賛成票が過半数に達する可能性があるとのこと。「大株主側は敗れたのか?」と思いきや、深夜になって大株主側(アコーディアゴルフ株主委員会側)よりリリースがアップされ、「不公正極まりない会社側の行為によって総会の手続きが異常事態となっている。我々は今後、委任状等の閲覧謄写請求を行い、株主総会決議取消の訴えも辞さない」と声明を出しておられます。ちょっとこれでは株主総会で決着がつく雰囲気ではなくなってきたようにも思われます。

こういったことにならないように、わざわざ事前に裁判所によって総会検査役が選任されているのではないか?とも思うわけであります。しかし、そもそも総会検査役というお仕事は、決して「株主総会を仕切る」ことが求められているのではなく、そこで行われている手続きや決議方法を逐次観察して、これを記録し、報告するというものであります。ただ、総会が混乱しないように検査役が選任されるのであれば、あらかじめ双方の代理人弁護士と集計方法や委任状の有効性に関するルールについて合意したり、事前に予想もしていなかったような問題が発生した場合のジャッジを行うなどといった、多少「権限外」とも思われるようなことにも積極的に参画すべきではないか、とも思ったりしております。なお、こういったことは外野だからこそ言えるのでありまして、いざ総会検査役の立場からすれば、委任状の有効・無効の判断が速やかに行われることは重要ではあるものの、あまり(法の趣旨を無視して)荒っぽいルールで仕切ってしまいますと、今度は株主総会決議の有効性にも影響しかねないところなので、どこまで総会検査役が仕切ってよいのかは、非常にむずかしいところであることは事実であります。

現に、会社側リリースによりますと、議決権行使数を確定するための委任状の有効性の判断に時間を要するために、一日では取締役・監査役選任議案の集計結果が出ない、ということのようであります。会社側も大株主側も、あらかじめ一般株主向けに「委任状発送上のご注意」ということで説明をされていたようですが、それでも1000枚以上の委任状に疑義があるとのこと。平成21年1月から株券電子化が施行され、届出印制度が廃止されましたので、委任状の真正の確認が行いにくくなっています。また、ひとりの株主が会社側と大株主側双方に委任状を提出しているような場合には、日付の遅い方が有効として取り扱うはずですが、これも日付が同一であったり、日付が記入されていない場合にはどっちが有効とすべきかは判断しかねないところです。さらに事前に議決権行使書を提出していながら、委任状を送付している株主さんの場合、原則としては代理人が出席した時点で議決権行使書は効力がなくなりますので、その取扱いも問題となります。

こういった理屈の問題とは別に、その瑕疵の程度もさらに問題となります。委任状の記載から判断して、軽微な瑕疵の場合には有効としてもよいのではないか、瑕疵が軽微といえるかどうかは、双方の主張が食い違う場合どうすべきか等、考えるだけでも気が遠くなりそうな問題が発生するわけです。さらに、これは私だけの考えかもしれませんが、平成19年のモリテックス事件東京地裁判決が、両立しない議案に関する委任状の取扱いについて、委任者の合理的な意思解釈を許容しているところがありますので、ひとつひとつの委任状の不完全な記載部分を、委任者の全体の意思解釈によって補う、という作業も出てくるようにも思われます。もうこうなってきますと、委任状争奪戦に関与するすべての人たちの「互譲の精神」でもないかぎり、つつがなく総会を終了させることは至難の業ではないかと。

いずれにせよ、29日午前10時の議長報告だけでは、アコーディアゴルフの支配権争いは終結することはないように思われます。委任状・議決権行使書の閲覧謄写請求が認められるのかどうか、総会決議取消の訴えが認められるのかどうか等、争いの場は総会議場から裁判所に移りそうな気配がいたします。なお、総会に参加された株主の方から、総会の雰囲気等に関するご報告、総会審議に関するご意見・ご感想などをお待ちしております。マナー違反にならない程度にて、またご紹介させていただきます。

(追記)ロイターニュースが報じるところでは、会社側提案の取締役・監査役のみが選任され、株主側提案の役員候補者の方々はすべて否決されたとのことです。

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コメント

会社提案が原案通り可決されたようです。
会社で総会事務局を担当されていると思われる方のtwitterを見ているとこういう案件は本当に大変そうですねぇ…

投稿: ty | 2012年6月29日 (金) 12時01分

総会事務局ご担当の心労はいかばかりかと思いますが、こんなことにはなりませんでしたが、多少なりとも「荒れた」総会を経験することは、企業法務を齧る者としては非常に力がつく「良い経験」になると実感しています。

とはいえ、物語の完結にはまだまだ遠く、起承転結の「承」ぐらいの状況かもしれませんので、事務局の方にはお身体を大切にされてほしいものです。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2012年6月29日 (金) 13時23分

四季報速報の記事をお知らせします。

投稿: 一個人株主 | 2012年6月29日 (金) 14時43分

東洋経済オンラインに速報記事が掲載されましたね。二日目は3分で終了、出席株主は5名とのこと。

投稿: toshi | 2012年6月29日 (金) 15時08分

 両社のリリースを見ました。事実を淡々と記載する方と、刺激的な言葉を並べる方と、どちらが説得力があるのでしょうか。

 今後の法廷闘争については、記録を閲覧するなど、証拠等の確認もして勉強したいです(モリテックス事件についても、証拠のレベルで重要なポイントがあったとか。)。

 ここまできたら、双方とも引けないだろうなあ。

投稿: Kazu | 2012年6月29日 (金) 18時59分

会社に問い合わせたところ総会検査役は議決権、委任状の判断はしていません。単に記録係です。判断は、会社側弁護士とも相談して問題ない形で会社側が判断しています、とのことです。
株主側は、納得しないでしょう。
賛否の数を会社はいずれ発表するが、間違いなく問題になると思います。

投稿: 一個人株主 | 2012年7月 2日 (月) 10時05分

アコーディアから臨時報告書が提出されました。
株主委員会提案の取締役候補 日野正晴さんは48.93%でやぶれました。
賛否の差924株、462株がひっくり返れば選任されました。
無効株数が4128株ありますので、当然もめます。
個人的には1人ぐらい株主委員会側が入っていても、取締役会運営に問題ないとおもいますが、いかがなんでしょうか?

投稿: 一個人株主 | 2012年7月 3日 (火) 18時41分

一個人株主さん、情報ありがとうございました。たしかにこれではもめますすね。無効株数を判定したのは会社側ですよね。うーーーん。

投稿: toshi | 2012年7月 3日 (火) 18時55分

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