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2012年7月27日 (金)

会社法改正要綱案と最高裁意見の影響度

ここのところ、会社法改正に関するエントリーばかりで申し訳ございません。<m(__)m>ご興味のある方は、それほど多くはないかもしれませんが、要綱案が公表されて以来、「なぜあの提言はすっぽり抜けてしまったのか?」といったメールをいくつかいただきまして、私も「なぜだろう」と考えることが多くなりました。

そんなことを考えているうちに、今回の会社法改正要綱案にはひとつの「法則」があることに気づきました(そんなエラそうに申し上げるほどのことはございませんが・・・・・)。新聞等では「会社法改正の中身判明、経済界の意向が通る」といった形で、報じられているところであります。しかし、経済界の意見がすべて通ったわけではないようで、経済団体も一定のところで妥協しているものと考えられます(たとえば社外取締役制度を採用しない場合の「当社には社外取締役を置くことが妥当でないとする理由の開示義務」「多重代表訴訟制度の新設」など)。

昨年12月に出された中間試案への各界意見の集計結果と、今回の要綱案(第一次案)で採用された改正内容とを比較してみますと、一番意見が通っているのは間違いなく「最高裁」だと思われます。最高裁が全面的に賛成(もしくは反対)している場合には、そのとおりに改正案が作成されており、たとえ経済団体が反対していても、最高裁の一部でも(条件付きで)容認する意見が出されている場合には、賛成意見が通っています。たとえば法制審ではさかんに議論されていた「子会社少数株主の保護」における「親会社等の責任」については、今回の要綱案からはすっぽりと抜けていますが、この点は「現行法の解釈によっても少数株主保護は十分に図ることができる」とのことで、最高裁が全面的に反対意見を出しておりました。経済界からの反対意見が強かったために、そちらの意見が通ったようにも思いがちですが、実は最高裁の意見の方が強く影響したのではないでしょうか。

若干微妙なのが「第5 組織再編等の差止請求」であり、ここは審議会における議論の中でも、裁判所の代表的立場にある委員の方からも、「対価の不当性」を差止請求の裁判に持ち込まれては困る、といった意見が強硬に出されておりました。そこで、取締役の善管注意義務違反に該当するような場合まで含めて差止請求ができるというわけではない、ということが明確になる形で差止請求の規定を新設するような提案になっていますので、これも一応は最高裁の意見が通ったものと考えることができそうです。

平成17年改正会社法の実際の公権的解釈を行ってきた裁判所の意見は重い(無視することはできない)・・・ということなのでしょうね。ちなみに最高裁は、ガバナンス改革(たとえば社外取締役制度の義務付け、監査・監督委員会制度の導入、監査役の権限強化、実効性を確保するための施策等)に関する会社法改正案については、一切意見を述べていないようでして、沈黙が保たれています。司法の場における経験的な知見に基づく判断以外は、裁判所としては一切口出ししない、ということかと。あくまでも立法的提言については謙抑的な立場を堅持しているように思われます。

7月 27, 2012 会社法改正 |

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コメント

「対価の不当性」を差止請求の裁判に持ち込めないなら、実質的に組織再編は経営者にフリーハンドが与えられ好き勝手できるようになるわけですね。

対価の不当性は買取請求で行うべきというのが裁判所の立場ではあったわけですが、買取請求だと通常は発表後の経営統合比率で算出された価格しか保証されないので、意味無いんですよね。

対価が不当である事を立証できる場合は発表前の価格ぐらいは保証されるのかもしれませんが、買取請求はかなり重い手続きなので不満を持つ株主のうち買取請求までするのは多くても100人に1人ぐらいでしょうし、成果が買取請求した株主に対してしか及ばなければ、不当な対価での経営統合を経営者に躊躇させる動機付けが殆ど無くなります。

実効力に欠けるお飾りの差止め規定なら、初めから一切の差止め条項を取り払って、組織再編リスクの存在を投資家に十分に認知させておいた方が親切ではありますね。少数株主保護は存在しないことをハッキリさせた上で、少数株主を保護するのは裁判所には荷が重いので裁判所は関知しないと定めて、商事部裁判官をリストラしたほうが良いでしょう。もともと少数株主保護は存在していなかったのですから、裁判官をリストラ出来れば、税金が浮く分マシかもしれません。

投稿: あいう | 2012年8月29日 (水) 16時33分

コメントありがとうございます。最終段落のご意見はノーコメントとしまして(笑)、それまでのご意見は傾聴に値するものだと思います。会社法改正論議のなかでも、一般に報じられないところなのですが、裁判実務ではなかなか進展しないところなので、せめて法改正の議論のなかで意見交換がなされるべきところですよね。次回のブログネタとしてご意見を参考にさせていただきます。

投稿: toshi | 2012年8月31日 (金) 12時52分

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