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2012年7月23日 (月)

監査役の監査環境の整備に関する議論はいずこへ?

会社法改正論議について、要綱案(第一次案)が法務省のHPにアップされておりますが、なぜこのような案がまとめられたのか、私の勉強不足と、ここ数回の審議会の議事録が公開されていない(公開が遅れている)ため、よくわからないところがございます。新聞で報じられているところは、要綱案で明記されている事項に関するところなので、社外取締役導入論、監査・監督委員会の設置、多重代表訴訟、組織再編など、おおむね理解できるところであります。しかし、これまで何度も審議会で議論されてきたにもかかわらず、どういうわけか要綱案から抜け落ちているところがございます。

たとえば監査役の会計監査人報酬決定権の議論については、これまでの補足説明などによって、法制化から外れることは予想されました。しかし、監査役監査の実効性を確保するための整備に関する事項については、今回の要綱案からは消えております。これはどういった経緯からなのでしょうか?社外取締役の義務付けのように、議論の末、今回は見送りになったのか、それとも会社法施行規則を改訂すべし、ということが提案されていましたので、そもそも会社法改正要綱案には掲載されない、ということなのでしょうか。議事録等があれば、そのあたりの説明もわかると思うのですが・・・。監査役の権限強化については、会計監査人の選任・解任権あたりで済むだろうとは思っておりますが、監査環境の整備については、現行の監査役の権限行使の実効性にも影響が及ぶものと認識しておりましたので、もし立ち消えになってしまったとしたら、とても残念です(このあたり、何か情報をご存じの方がいらっしゃいましたらご教示いただけますと幸いです)。

たしか第二読会あたりでも、この監査役監査の実効性を確保する体制については、あまり反対意見も出ておりませんでしたし、中間試案に対して公表されたパブコメの内容を見ておりましても、既存の内部統制システムに関する規定との関係以外には、特に有力な反対意見はなかったように記憶しておりますので、私自身は楽勝ムードでおりました。世間ではガバナンス改革といえば「社外取締役制度」のほうばかりが注目されており、監査役制度の充実についてはイマイチ認知度が低かったようですが、社外取締役義務付けが法制化されないということになりますと、今まで以上に監査役にガバナンス上では頑張っていただかないといけないと思うところであります。ということで、ぜひとも改訂されることを願っているのでありますが、情報から疎いもので、このあたりは何か「あたりまえのこと」を知らないだけで赤面モノかもしれませんが、ちょっと気になっている点でございます。

これまで再三にわたって議論していたテーマについて、要綱案から抜け落ちている・・・というところがもっと他にもあるかもしれません。できれば早めに議事録等で要綱案(第一次案)作成に関する説明などが聴きたいところであります(よくわからないうちに、次の第二次案が出てしまったりするのでしょうか・・・)。

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コメント

確かに監査役監査の実効性を確保するための仕組みに関する事項がすっぽり抜けているのは奇異ですね。
取引所の上場規則化に誘導されるであろう社外取締役義務化にしろ、監査・監督委員会制度にしろ、その議論の背景には既存の監査役制度、とりわけ社内・常勤監査役への不信と軽視が抜き難く存在しています。実務を担う監査役にとっては重要なこれらの仕組みも、大方の関心が極めて薄いことは、今回この事項が抜けていることを指摘したのは小生の知る限り山口先生だけという事実にも如実に示されていますね。しかし理念と現実に乖離があるとしても、誠実に経営の監視機能を果たそうとしている何万という監査役の活動を蔑ろにした議論には深い疑問を禁じ得ません。
ただ監査役の地位の脆弱性がこうした議論を許しているのも厳然たる事実でしょう。監査役を指名するのは経営トップであり、その選任基準は監査役に適格かではなく、また監査役の任期は会社法で4年と決められているが、実際は経営側の人事ローテーションの都合で任期途中で交代させられるケースが少なくないのが実態です。
もし今後も監査役制度を続け、本来持っている強力な権限を生かすつもりであれば、この決定的な弱点に思い切って踏み込んで、監査役選任議案の決定権を監査役会に与えることが不可欠になっているのではないでしょうか。社外取締役の監督機能を十分に発揮させるためにも常勤監査役の役割は重要です。合わせて、とりわけ不安定な地位にある子会社監査役の選任に親会社の監査役が関与するというルールを確立することも急務です。

投稿: いたさん | 2012年7月25日 (水) 21時57分

いつもコメントありがとうございます。そういえば今年度の監査役スタッフ全国会議で、法制審委員の先生が「要綱案を中心に」講演されるようですね。この問題について詳細を聴けるかもしれません。どなたかご出席される方がいらっしゃいましたら、またご報告いただければと。

投稿: toshi | 2012年8月 1日 (水) 09時51分

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