関西電力株主総会における「脱原発」と「ガバナンス改革」への賛成票の重み
株主総会シーズンが終わったとたん、世間はまったく関心を示さなくなっておりますが、7月4日に関西電力社は、今年の株主総会における議決権行使結果を臨時報告書の中で開示しております(詳細はEDNETをご参照ください)。注目の株主提案は第3号議案から同30号議案までありますが、ニュースでも報じられておりました通り、会社提案議案はすべて可決され、株主提案議案はすべて否決されました。ただ、各株主提案にどれほどの賛成票が投じられたのか、興味がありましたので、少し調べてみました。
「脱原発」を掲げる定款変更議案については17%の賛成票が投じられています(3号議案)。この「17%」という数字を多いとみるか、少ないとみるかは意見が分かれるところかと思いますが、私個人としては意外と賛成票(つまり脱原発支持派)が多かったのではないかと感じています。さすが大阪市長のパフォーマンスが効いたのでしょうか(もちろん、議決権行使結果の賛否集計は基本的には総会前日まで、ということなので、正確には総会当日の演説が効いたとまでは言えませんが・・・)。前にも述べました通り、脱原発ということを定款に記載したとしても、その文言の抽象性ゆえに経営陣による経営判断への法的な拘束力が認められることはないと思います。しかし、個人株主による17%の重みは無視できないわけで、今後の脱原発への賛成票が増えるのか減るのか、そのあたりに興味が持たれるところです。
ところで株主提案議案のなかで、ダントツで株主側賛成票が多かったのが、社外取締役に対する責任限定契約(責任軽減契約)締結に関する定款変更議案(第21号議案)です。驚くべきことに38%もの賛成票が投じられています。(議案の内容が少し難しいので)棄権票を除きますと、まさに株主提案に対する賛成票は4割を超えております。株主代表訴訟が提起された場合等、社外取締役の責任が限定されるように会社と社外取締役とが責任範囲を限定する契約を締結することができるわけですが、これは定款で定められなければできません。その責任限定契約に関する定款規定を設けるように、との株主提案だったわけですが、会社側が反対意見を述べていたために、最終的には否決されています。
法律家向けのブログであれば、ここで会社側反対理由と株主提案理由の優劣等についてマニアックに語りたいところでありますが、最近は一般の方がたくさん当ブログをお読みいただいておりますので、細かな法律論は省略させていただき、とりあえず一言感想だけを述べますと、なぜ関西電力社は、社外役員に対する責任限定契約締結に関する定款変更をされないのだろうか、という素朴な疑問が湧いてきました。今のままですと、たしかに取締役が代表訴訟等によって責任が認められた場合、現経営陣の裁量によって、社外取締役の責任範囲を限定(責任免除)することは可能になっています。しかし責任限定契約を締結しているケースと比較しても、社外役員の法的な立場は非常に不安定なままですし、また有事におきまして、社外取締役として社内取締役と対立しかねないような発言もできなくなってしまうのではないか、という懸念が生じます。
いまの関西電力の定款のままですと、これから電力会社の役員としてふさわしい方々が、本当に社外取締役や社外監査役に就任してもらえるのかどうか、かなり不安が生じるのではないでしょうか。関西電力の経営の透明性を向上させ、株主共同利益にも配慮した経営を要望するのであれば、なんといっても独立役員にふさわしい社外取締役の方が就任することが第一歩かと思います。そのような重責を担われる方に、今のままで果たして優秀な方が就任してもらえるのかどうか、今のままですと、すこし関西電力社のガバナンスに希望が持てにくくなるような思いであります。
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