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2012年9月 1日 (土)

契約書の見方・つくり方(新刊のご紹介)

Keiyakusho001_2契約書の作成方法や活用法などは、弁護士が企業向けセミナーとして開催する定番のテーマであります。もちろん企業法務として最も重要な業務であるがゆえに、昔から契約書作成の手引き的な参考書はたくさん世に出ています。企業間取引の現代化とともに、改訂版が出たり、頻繁な差し換えサービスもなされるところです。

しかし、私のようにコンプライアンス経営を支援する立場の者からしますと、当事者間における力関係で合意条項が列記される契約書も重要であることは間違いないのですが、求められるものはそれだけには限りません。紛争が発生した場合に自社が有利な状況になれるよう、契約書を作成することも大切ですが、むしろ紛争が発生しないように契約書を作成することも大切であります。たとえばM&Aによる事業再編が頻繁に繰り返される状況のなかで、契約書の持つ公示機能は大切であります。契約書の当事者だけでなく、第三者がみても権利義務関係が一目でわかるようなものでなければ紛争の種になってしまいます(法務デューデリ等を想起いただければおわかりになるかと)。また、BS(資産・負債)中心の財務会計制度が進展する中で、いかなる会計事実が存在するのかを監査人に説得的に説明できるためにも、権利変動の要件・効果がわかりやすく記載されていることが求められています。企業法務を取り巻く環境変化の中で、契約書に求められる要素も少しずつ変化しているのでありまして、契約書を作成の前提となる法律行為の中身を理解しておくことはとても重要なことであります。

このような状況のなかで、とくに企業の法務担当者だけではなく、経営陣の方々にも参考になると思われるのが、TMI総合法律事務所の淵邊善彦弁護士が書かれた新刊書(契約書の見方・つくり方 淵邊善彦著 日本経済新聞出版社 1,000円税別)であります。日経弁護士ランキング「企業再生、M&A部門2011年度」でトップに選出されたこともある淵邊弁護士によるものですが、新書版にふさわしく、契約書の見方・つくり方の実務が、法律の専門家以外の方々にもわかりやすく書かれています。ビジネスの世界でトレンドと思われる契約形態を紹介され、その契約形態に合った「ひな型」に沿って法律関係を解説されるというもので、とても内容的に新鮮であります。「完全合意条項」の付記、などといった解説は、実際に契約関係がもつれて紛争に発展したような事例を取り扱ったことがなければ、なかなか理解しにくいところですが、そういった解説も非常に分かりやすい。

本来は、契約書のひな型だけをみて、チョコチョコっと書きうつして活用するのが、このての書物の特長ではありますが、本書では「どうしてこのような条項になっているのか」といったところの解説がなされていますので、企業の経営者や法務担当者ご自身が原理・原則に関する理解を進めながらご一読いただくにふさわしいものであると思われます。こういった原則的な法律関係を整理しながら学ぶ、ということにより、当事者間でいろいろな注文がつけられた契約書作成事務にあたっても、その応用が効くものになるのではと。まさに契約書の作成を学ぶことによってダイナミックは交渉の場面での対応を学ぶことができる一冊かと思われます。

9月 1, 2012 本のご紹介 |

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