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2012年9月 5日 (水)

インサイダー取引の実態とその未然防止(セミナーのお知らせ)

雑誌「銀行法務21」の最新号(2012年9月号)巻頭におきまして、初代金融庁長官でいらっしゃる日野正晴弁護士(元名古屋高検検事長)が、「インサイダー事件で情報伝達者を処罰できるか」と題する論稿をお書きになっておられます。もちろん、最近の増資インサイダー事件を題材としたものであります。日野先生は、いままでも情報伝達者を処罰することは可能だったのであるが、実務的には共謀を立証することは困難であり、とりわけ取調べの可視化が導入された昨今では、共犯者の自白を獲得することがきわめて困難になっているとされ、状況証拠の積み重ねを丁寧に行わないと共同正犯、教唆犯、幇助犯の立件はむずかしいとのこと。

そこで立証の困難性を回避するために、いっそのことインサイダー情報の伝達行為自体を刑事罰の対象にしたらどうか、ということで立法論が議論されているということのようであります。しかし日野先生は、安易な立法化には反対のご様子で、情報伝達行為自体の処罰化は企業社会にとって劇薬になってしまい、委縮効果が高く反動はあまりにも大きいだろうと予想されておられます。困難かもしれないが、多くの状況証拠を積み重ねることで、証券市場の公正性を担保していくのがまっとうな方策ではないかと締めくくられています。課徴金制度との整合性や、情報提供者の利益獲得問題など、私自身も情報伝達者に対する刑罰化(立法論)については理論的な疑問点があるものと考えており、基本的には日野先生の見解に賛同するところであります。

上記日野先生がお書きになっておられるように、増資インサイダー事件をきっかけとして、インサイダー取引規制の在り方については、見直しの機運が高まっているところですが、ここであらためて企業のインサイダー取引防止体制や証券取引所における管理業務の視点から、インサイダー取引の実態と未然防止対策を考えるためのセミナーが開催されることとなりました(関西編ということでありますが)。今回は大阪弁護士会、日本公認会計士協会近畿会、そして東京証券取引所による共催事業ということで、平成24年9月21日午後2時から5時まで、場所は大阪弁護士会館2階ホールにて開催いたします。詳しくは下記の東証HPよりご確認ください。2時間半の研修内容は、インサイダー取引規制に関する最新事情なども織り交ぜた解説であり、実務家の皆様方にもわかりやすい内容で仕上がっているものと思います。なお企業担当者の方々はこちらの東証COMLECのHPからお申込みいただけます(地方開催分をご覧くださいませ)。

先日公表されました金融庁の平成24事務年度の金融検査方針のなかでも、インサイダー取引防止のための施策が重点項目とされており、おそらく証券会社や銀行等でも、上場会社や上場会社と取引関係のある企業に対するインサイダー取引防止体制の構築について、例年になく目を光らせることが予想されます。まさに企業の自助努力がより一層求められる時代となり、その具体策構築について、東証関係者の方々のお話を参考にされる良い機会ではないかと思います。お時間がありましたら、ぜひこの機会に大阪弁護士会館まで足をお運びいただければ幸いでございます。

9月 5, 2012 商事系 |

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コメント

日野正晴氏は、コージツ事件における第三者委員ですね。
うーん。これはどうですかね。情報提供者への処罰なしに、インサイダー取引を防止するというのは、絵空事にしか思えません。また、代案(例えば罰金の引上げ等)があるならともかく、それも併記せずに単に規制強化に反対するというのでは、弁護士にとっての実質的依頼者である役員への追従のため、議論を捻じ曲げている印象を受けます。
守秘義務については、個人情報保護法などで、末端の従業員すら非常識な対応を強いられ、業務に萎縮的効果が生じることもあります。また、役員は、株主の役会議事録閲覧などに対して、嫌がらせのような拒絶をすることが多々あります。にもかかわらず、役員の萎縮的効果だけ特筆大書して規制強化を免れようとするのは、いささかバランスを欠いていると思います。

投稿: 山口三尊 | 2012年9月 7日 (金) 20時40分

山口三尊さん、コメントありがとうございます。このあたりは検察の起訴方針に関する伝統的な考え方、刑事罰と課徴金制度との活用方法、法人犯罪に対する制裁の趣旨など、いろいろと検討・整理すべき問題があると思っています。私は日野先生が検察出身だからこそ、の意見だと理解しましたが、たしかに弁護士としての考え方(?)も影響するところがあるかもしれませんね(そのあたりまでちょっと断定的な物言いはできませんが・・・)。

投稿: toshi | 2012年9月 8日 (土) 13時11分

日野先生はアコーデイアゴルフのプロキシーファイトの際、株主提案側の役員候補だった人でぎりぎりなれなかった人(約1000票差で敗北)です。また、その際の説明でわかったことですが、社外監査役で雇われている会社を訴えて勝った人です。
本人はもちろん知りませんが、何か背景があるのか?正義の味方なのか?

投稿: 一個人株主 | 2012年9月 9日 (日) 11時08分

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