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2012年10月25日 (木)

社長の一言が企業価値を毀損してしまう可能性

すでにご承知のとおり、10月20日、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ社の社長さんが、twitter上で暴言(らしき)言葉を思わず吐いてしまった、として話題になっております。1000円の商品に750円もの商品配送手数料がかかるのは法外ではないか?詐欺ではないか?との利用者のつぶやきに

詐欺??ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらしてヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文しなくていいわ。

と反論した、というもの。そもそも会社にも顧客を選ぶ権利はあるわけですから、合理性のない要望を行う顧客に対して丁寧かつ明確に「もうご注文はなされないでください」とお願いすることはできるはず。しかし、SNSという公的な空間で、しかもかなり辛辣な言葉で反論をした、となりますと、やはり世間が上場会社の社長のつぶやきを批判をすることも当然かと思います。社長の辛辣な言葉に幻滅したのか、それとも社長の言葉からビジネスモデルの将来に悲観したのかはわかりませんが、業績予想の下方修正と相まって、株価が一日で5%下落する、というのも頷けるところかと(ちなみに、その後、同社長はこのつぶやきについて謝罪をされた、とのことだそうです)。

ここまで急成長してきた会社ですし、上場の前後にわたり、海千山千の胡散臭い輩が社長に近づいてきたことは想像できるところであり、その中をかいくぐってここまで来られたわけですから、同社長のリスク管理能力はかなり高いものかと思います。そのような方が、誰かのつぶやきに、これほどまでに反応してしまった、というのはどうも解せないところではあります。そもそも社長さんは「暴言」だと思っていればつぶやかなかったのではないでしょうか。暴言にはあたらない、全うな正論だと考えたためにつぶやいたのかもしれません。ともかく、こういった社長の一言にマーケットが反応したとしても、その後の社長の反省の姿勢によって信用が回復され、再び株価が上がることで一件落着すれば、それでよいと思います。

しかし問題は、対外的なことではなく、社内的なところにあると私は考えます。社内的にはかなりマズイかな・・・と。こういった新興企業のオーナー社長は社員のあこがれの的です。社員は(良いところも、悪いところも)真似しやすいところから社長の真似をします。普段から社内的には辛辣な言葉で叱咤激励していた社長さんであったとしても、対外的にもこういった態度をとってしまいますと、「お!さすが社長!俺がふだん言いたかったことをはっきり言ってくれたぞ。これでいいんだ」と今後の社員らの顧客対応にも影響が出てしまうのではないでしょうか。また、これまで顧客からクレームを出されても、「苦情は宝の山」と思って会社のためにがまんをして対応し、企業のブランドイメージを維持・向上させてきた社員たちにとっては、この社長の「顧客へのホンネ」が公開されたことで、いままでの努力が水の泡になってしまう気分になってしまいそうであります。この一件が、同社の平時の営業努力にどれほどの影響を及ぼすものなのか、とても不安であります。

こういった社長の一言で、対外的な企業価値の低下は回復できたとしても、社内的な企業価値の毀損はなかなか回復が困難ではないかと思います。有事に至った企業の経営トップが、顧客や消費者、監督官庁などのステークホルダーに対して、あえて反論のパフォーマンスを展開して従業員の士気を高める・・・という手法は過去に何度かみたことがありますが、社長自ら平時を有事に変えてしまうような発言は、これまであまり聞いたことがないパターンでありまして、今回のことで真っ先に謝罪をすべきなのは、むしろ社員に向かって、というのが正しいのかもしれません。よく「社長の暴走を止めるためのガバナンス」といわれますが、こういった暴走はちょっと止めようがないところが一番の問題であります。

10月 25, 2012 ディスクロージャー |

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コメント

この言葉使い!
こんな人物が今にも上場しようとする新興IT企業の
トップなのかと思うと
非常に幻滅!

わたしの中では新興IT企業の胡散臭さがまた一層
増した気がします。

投稿: unknown1 | 2012年10月25日 (木) 10時05分

まぁ、あの社長さんのことだから、社内的にも辛辣な言葉は使ってると思いますよ。あぁ、やっちゃった、くらいの感覚でしょう。

投稿: nobu | 2012年10月25日 (木) 10時48分

>unknown1さま、この会社は「今にも上場しようとする新興IT企業」
ではなくて、既に「東証1部上場企業」なのです。
従いまして事態はより深刻なものと思います。

曲りなりにも東証1部の社長が、ヤクザまがいの恫喝的な言葉を
実名ブログで吐くなどとは前代未聞の事ではないでしょうか?

対外的には別人格を装っていたのでしょうね。
東証や主幹事証券、メイン行、監査法人なども
社長の「本質」を見抜けなかったのか、
又、監査役の方々は日頃、社長をどのように観察していた
のでしょうか??
ブログで社長が謝って済むなどという軽い問題ではないと思われ、
今後の、ガバナンス関係者の対応を注視したいと思います。

投稿: 彷徨える監査役 | 2012年10月25日 (木) 13時05分

皆様コメントありがとうございます。他にもコメントをいくつかいただいておりますが、ちょっと公開することに問題が生じそうなものもありますので、どうかご勘弁ください なお、判断は全て管理人の責任でございます。

投稿: toshi | 2012年10月25日 (木) 13時36分

お客様からのクレームへの対応についてはどこの会社さんもカスタマーサービスの様な部門が対応するようになっていて、例えばご紹介のケースについてCSの担当者に相談があれば「お客様に少しでも良い商品を安くご提供するため配送を専門業者さんに委託してコスト削減を図っています。ご理解をいただければありがたく存じます。尚、一括購入していただきxx円以上になりますと配送料は無料となっております。」など上手に対応できたのではないかと思います。
twitterなどで社長に限らず社員がチェックなしにこういうクレームにレスしてしまうことによって、会社の企業価値を損ねるリスクがあるという点、他人事とは思えません。
お客様とのコミュニケーション手段が多様化しているので、どの様なメディアであれチェックなしに勝手に対応することのないように社員に再徹底する必要がありそうです。

投稿: チャック | 2012年10月26日 (金) 11時12分

 社長の失言リスク、というところでしょうか。今まで、雪印乳業とか、色々あったと思います。

 ところで、結局スタートトゥデイはゾゾタウン送料を無料にしましたね(ポイント付与率のアップと一緒に)。元々営業政策で導入を考えていたのか、それとも、今回の社長発言をきっかけに導入したのか、どちらなんでしょう(計画的に社長が発言したとすれば、それはリスクの高い勝負かも)。

投稿: Kazu | 2012年10月31日 (水) 20時08分

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