アコーディアゴルフ株へのTOB「たかが20%、されど20%」
(21日午後 追記あります)
アコーディアゴルフとPGMといえば、今年6月の「24時間を超える株主総会」で委任状争奪戦を繰り広げた同業者ですが、いよいよ第2ラウンドが勃発したようです。11月15日にPGM側が株式公開買付(TOB)の公告を行い、前日値の株価に50%のプレミアムを付けて一般株主から株式を買い付けるとのこと。これに対して11月20日、アコーディア側としては、金商法上の(TOBに賛同するかどうか)意見表明は未だ行っていないものの、PGM側の主張事実に認識の相違があるとする説明を開示しています。
アコーディア側がTOBへの意見を表明するためには、おそらく同社の社外取締役や上場規則上の独立役員(同社では社外監査役)の意見、そして外部第三者の評価結果などを参考にしなければならないでしょうから、そういった意見等を待って、必要があればPGM側に質問をしたうえで開示する、ということになると思います(しかし同業者による敵対的買収といえば、王子・北越のバトルがなつかしいですね)。
すでに「一個人株主」さんよりコメントをいただいておりますが、なぜTOBによる取得予定株数の範囲が下限20%、上限50,1%なのか、というのは私にも実はよく理解できないところです。上限50、1%というのは、東洋経済ニュースにおけるPGM社長さんのインタビューにもあるように、今後の経営統合まで企業価値の推移を見守りたい、という一般株主さん方は、そのままお持ちいただいて結構です、というPGM側の余裕の姿勢なのかもしれません(ただし、取得のための資金が不足しているのでは?という見方もできるかもしれませんが・・・)。
いっぽうの下限20%ですが、これはプレミアム50%上乗せということと併せて「なにがなんでもTOBは成立させたい」というPGM側の強い意思の現れではないでしょうか。しかし一般に経営に関与するためには、最低でも(重要な経営判断に拒否権を持ちうる)34%程度を取得することが目的とされるので、なんで20%なのか、20%で何ができるのか、という疑問もわくかもしれません。いくらPGM社の親会社が80%の株式を保有しているとはいいましても、多額の買収資金を投入してまで、20%の株式を取得するメリットがどこにあるのか、持分法適用会社となること以外にも合理的な説明が必要となるのではないでしょうか。
たしかにベンチャー事業等において、株式に流動性がない場合や株主間契約を締結する場合のように、元々経営の安定性が図られているケースでは、35%が重要な意味を持ちます。しかし、アコーディア社のように株式の流動性が高い上場会社の場合には、20%(関連会社等を含めれば23%ほどではないでしょうか)というのも相当な威力になるのではないかと。これはヤクルト本社とダノンとの攻防を見ていても明らかでして、20%のヤクルト本社株式を取得しているダノンに対して、ヤクルト本社がたいへんな交渉を続けているところからも頷けるところです。
ましてや、6月の委任状争奪戦で、PGM側(オリンピア側)としては、一般株主のPGM社に対する賛同は、そこそこ得られるとの確信を得たのではないでしょうか。最低でもTOBで20%を取得すれば、十分に経営に関与できるとの予測があるものと推測いたします。例のトライアイズの元監査役さんのケースように、会社側が、わずか22、2%の株式を自由にできるだけで特別決議の必要な監査役解任決議を通してしまえるのです(1/3×2/3=0,222)。それだけでなく、機関投資家等の他の大株主への発言権も強くなりますし、第三者割当増資等に対して(主要目的ルール等により)法的に有利な立場にもなれます。現実の株主総会を念頭に置いた場合、この20%というのは、かなり意味があるのではないかと思われますが、いかがなものでしょうか。
なぜ下限が20%なのか、会計ルールの適用や実質影響力以外に、もっと根源的な理由がございましたらご教示ください。本件のようなM&Aネタは、専門家によって関心事が異なりますが、ガバナンスの視点からすると、アコーディア社の社外取締役や独立役員という立場であえば、どのようにふるまうべきか、興味のある視点から、またいろいろと眺めていきたいと思っています。
追記:masakoさんのコメントから示唆を受けましたが、通常は事前警告型の買収防衛策は20%以上の大規模買付行為によって発動されることになりますが、これと関係あるのかもしれませんね。先にとりあえず20%以上の株式を保有してしまえば、たとえ経営権を取得できなくても、防衛策がなければ交渉を有利に展開できるのではないか、との狙いかもしれません。いまのところアコーディア社は買収防衛策を導入していませんので、今後の防衛策導入をけん制することが目的、というのは有力な考え方かと思います。
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コメント
確かに興味深いご指摘に思います。
PGMのアコーディアゴルフへの持株比率は調べていないので分かりませんが、0%だとして、20%取得は議決権割合にはあまり意味はなさそうですが、最低でも持分法にすることを念頭に入れているのではないでしょうか。
敵対的な案件で持分法にすることは経営的にどこまで意味があるかというと、効果が定かではありませんが、統合の交渉を優位に進められるという考えなんでしょうかね・・
何で場で買い集めてからTOBしないのかは分かりませんが、今までの経緯とかで、ある程度内部情報とかも持っちゃってるんですかね・・・
投稿: ASK | 2012年11月21日 (水) 02時55分
ASKさん、コメントと私の記事訂正が一部かぶってしまったようで、ごめんなさい。私も持分法適用ルールのことが少しひっかかっていて、すぐに修正をしております。ただ、それでも費用対効果という意味では説得的な理由にはならないように思うのです。今後の戦略として20%という数字には十分な意味がある、ということなんでしょうね。
買い集めをしなかったのは、できるだけ密行したかった、ということではないでしょうかね。
投稿: toshi | 2012年11月21日 (水) 03時07分
今はあまり大騒ぎされませんが、買収防衛策の導入が盛んだった頃に多くのケースが、事前警告型買収防衛策発動の対象者が20%以上の株式取得となっていたように思います。それと何か関係ありそうですか?
投稿: masako | 2012年11月21日 (水) 13時39分
あ!そうでした!!
アコーディアは防衛策を入れてませんよね。
これからの防衛策導入に先手を打つ、ということかも。。。
なるほど・・・、それ正解かも(どうもありがとうございます)
投稿: toshi | 2012年11月21日 (水) 13時57分
取り上げていただきありがとうございます。
まず、2社の関係を書いておきます。
アコーディアの大株主石原氏(平和のオーナー)3.09%、オリンピア(平和の完全子会社)1.89%
PGMの大株主は平和で80.4%所有(平和の子会社)
PGMの社長は元アコーディアの役員(アコーディアの元オーナーゴールドマン?出身)ゴールドマン売却後退任して半年でライバル会社のPGMの社長就任
PGMの株式をファンドより平和に仲介したのもこの社長との報道もある。
株主総会に敵対的株主提案はオリンピアが行い、今回はPGMがTOB、資金は平和が貸し出す。
オリンピア及び石原氏がこのTOBに参加するかどうかは未発表です。
ほかに株主委員会に参加の個人所有があり、約5%が参加するかしないか、調整できるのではないでしょうか?
いずれ、株式交換で経営統合するつもりですので、いかに安くてに入れるかを考え、今回の20~50.1%が出てきたのではないでしょうか?
(根拠はないです)
経営統合後の平和Gの持ち株比率とかは関係ないでしょうか?
投稿: 一個人株主 | 2012年11月21日 (水) 21時30分
連続すいません。
PGMの社長(神田氏)は、GS出身でアコーディアの元役員です。昨年1月GSが44.7%の売り出しをした際、買受先を探す担当をしていたようです。
よって、その売出しを引き受けた株主をある程度していると思われます。
株主総会の際、いい線まで行ったのはその関係があると思われます。
売り出し価格65572円ですので、その際引き受けた株主は今回のTOBで儲けがでます。
石原氏がアコーディアの株を手にいれたのは2011,4月~2012,3月の間で2011,11月に平和によるPGMの公開買い付け
2012、1月神田氏がPGMの社長就任このころよりPGMよりアコーディアに経営統合の提案あり。
神田氏はアコーディアにいるころよりPGMとの経営統合を提案していたとの報道あり。
一連の動きは昨年の震災後両社の株価が下がり割安になったので、神田氏と石原氏で日本の大部分のゴルフ場をいかに安く手に入れるかと考えたうえでの流れだと思います。
よくわかりませんが、20~50.1は安く手に入れるための数字ではないでしょうか?
投稿: 一個人株主 | 2012年11月21日 (水) 22時37分
ご解説どうもありがとうございます。なるほど、時間軸で考えると一個人株主さんのおっしゃるところもよく理解できます。
もうすぐアコーディア側の次の一手が出てくると思いますので、そのあたりをご紹介するときの参考にさせてください。引き続き、よろしくお願いいたします
投稿: toshi | 2012年11月26日 (月) 01時23分
PGMの説明会の動画がUPされています。
http://www.pacificgolf.co.jp/info2012/
投稿: 一個人株主 | 2012年11月26日 (月) 22時42分
アコーディアの会社の意見が出てきましたが、”出席取締役全員の一致により、現時点においては、本公開買付けに対する意見の表明を留保することを決議いたしましたので、お知らせいたします。”と延長しただけでした。
意見表明の期限が決められているのに、法的にこんな意見でいいでしょうか?
期限の意味がないと思いますが?
また、PGMの公開買付説明書P31”届出書の提出日以後に株券等の買付け等を行う旨の契約の欄”に神田社長の保有株の内1株をPGMホールディングス㈱に譲渡すると記載がありますが、この意味がわかりません。法的な理由があるのでしょうか?
投稿: 一個人株主 | 2012年11月30日 (金) 18時08分
意見保留よりもアコーディアの取締役会が公開買い付け者に対する質問を「該当なし」としているのが腑に落ちません。
無責任に賛成もしくは反対するのでない限り、PGMの提案内容のより詳細な検討は不可欠だと思うのですが。PGMの提案内容に質問もせずに、もし今後ホワイトナイトを連れてきてホワイトナイトの提案のほうが企業価値の向上に資すると主張しても、PGMの提案の詳細な検討もしていないのになぜそう言える?と言われることにならないのでしょうか。
投稿: ty | 2012年12月 1日 (土) 14時50分
アコーディアより反対声明がなされました。
そして増配を発表しました。
しかし増配はいつまでこの方針でやってくれるのか?
来年になったらやっぱり増配やめたとならないのでしょうか?
配当性向90%して借金返済をどうするのでしょうか?
投稿: 一個人株主 | 2012年12月 3日 (月) 15時09分
一個人株主さん、いつも情報ありがとうございます。いよいよこのバトルも佳境に入ってきたようで、とても興味深いところです。社外取締役や独立役員たる社外監査役の方々の動向が(実務家の関心としては)気になるところなのですが、いかんせん私自身の本業が忙しいために、エントリーを更新するのが精いっぱいの状況です(すいません・・・)。
本日現在77000円ですか・・・(株価)。しかし、このような場末のブログといいましても、なかなかつぶやくのが微妙なテーマになってきましたね(笑)もうしばらくお待ちを。。。
投稿: toshi | 2012年12月 5日 (水) 01時16分
専門家の見方は、アコーディア側不利のようですね。
http://diamond.jp/articles/-/28991
投稿: 迷える会計士 | 2012年12月10日 (月) 12時32分
株主向け説明会を会社が3都市でする予定で案内(はがき)まで発送していましたが、延期になりました。
PGM側と手打ちをしたのか、ホワイトナイトをみつけたのか、新たな対抗策を発表するのか?
いずれにしろ正月明けの発表を期待したい。
持ち株の移管手続きはどうしよう?
投稿: 一個人株主 | 2012年12月20日 (木) 11時35分
PGM ホールディングス株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する情報提供のお知らせ
をアコーディアゴルフより発表されました。
定款変更のための株主総会と経営統合の交換比率の査定を行っています。
DCF法だと1:0.242~1:0.481(2社の査定)だそうです。
投稿: 一個人株主 | 2013年1月 4日 (金) 18時25分
一個人株主さん、本年もよろしくお願いいたします。
PGMからもリリースが出ましたね。議決権行使に関する基準日が1月16日ということらしいので、なんとも。。。
ちなみにこんな場末のブログにもかかわらず、本件に関する社会的影響に配慮してほしいとの陳情を受けておりますので(笑)、法的な理屈については書きづらくなってきました。コメント欄であれば少しぐらいいいかもしれませんが。。。
投稿: toshi | 2013年1月 4日 (金) 19時01分
本年もよろしくお願いいたします。
個人株主としては合併比率が問題となります。
PGMが合併比率を公正に行うといわれても利益相反があり、昨年来のやりかたを見ていると信用できない。
たぶん1;1あたいを提案するのではないかと思っています。
アコーデイア側が1:0.242~1:0.481の評価をだしているので比率が悪いと反対をして買い取り請求をするしかないのかな?
その際はだれか団体を作ってください。
しかし、会社側かPGM側かは知らないが個人のプログまでチェックしているのですね。怖さを感じます。
投稿: 一個人株主 | 2013年1月 5日 (土) 13時06分
日経の情報によると
旧村上ファンドの出身者が運用する投資会社レノ(東京・港)など3社がアコーディア・ゴルフ株の13.75%を保有していることが、7日に提出された大量保有報告書などで明らかになった。アコーディアを巡っては、同業のPGMホールディングスがTOB(株式公開買い付け)を実施中。レノ側は取得理由について「コメントできない」としている。
さて、ホワイトナイトか、はたまた漁夫の利をねらったファンドなのか
投稿: 一個人株主 | 2013年1月 8日 (火) 18時34分
実名blogは色々大変そうですね。コメントはおkとのお話ですのでお言葉に甘えて…
特別決議の要件を加重してPGMの株主提案の可決を困難とする戦術は、単体でみた場合にそれほど有効なのでしょうか?TOBでPGMが過半数を取ればPGMは株主提案で現取締役の解任議案と自分の息のかかった新取締役の選任議案を確実に可決できます。
その後に取締役会が会社提案としてアコーディアとPGMとの「経営統合」議案を総会に提案すればよっぽど変な条件でない限りは可決は確実なわけで…
アコーディアと特別決議の要件加重はこれ単体でみた場合「やらないよりはまし」という以上の意味があるのか、疑問に思っています。
投稿: ty | 2013年1月 9日 (水) 22時46分
TOB不成立になりました。
レノの提案によりアコーデイアサイドも経営統合を検討しないといけなくなっていますので、まだまだアコーディア、PGM、レノ3社の争いが続くと思います。
投稿: 一個人株主 | 2013年1月18日 (金) 11時31分
TOB終了しましたので、コメントできないでしょうか
投稿: 一個人株主 | 2013年1月19日 (土) 17時45分
もちろんTOBが終了したので、コメントはいろいろとしていただけますよ。
レノ社の大量保有報告(保有目的変更報告)書における意見と要望、それに対するアコーディア社側の回答、そして前日のブルームバークの記事・・・、このあたりの流れをどうみたらいいのでしょうね。PGM側はいろいろと「敗軍の将・・・」的な恨み節を語っておられますが、私もまだまだ、支配権争いということで言えばこれからかと。
どっちかというと、PGMさんのほうに有力なIR・SR支援企業がついていたのでは、と思っていましたが。アコーディアさんのほうの支援企業も頑張ったのかな。。。あの前日の報道をどうみるか、というところにもよりますが。。。
投稿: toshi | 2013年1月20日 (日) 23時11分
なぜ20%なのか?
議論がいろいろありましたが、今回のTOBは約17%の応募で成立せずです。
どちらかわからないですが、石原氏オリンピアは応募したのでしょうか?
もし応募していないなら応募すれば成立したのにしなかったとなります。
あのような状況で20%強では意味がないと判断したのではないかとおもいます。
レノがTOBによらず19.23%までPGMのTOB終了後も買い増ししています。ほぼPGMの下限まで買い増ししています。
TOBによらずいくらまでなら買い占めることができるのでしょうか?
今後出口(売却)はどう考えているのでしょうか
投稿: 一個人株主 | 2013年2月 1日 (金) 10時16分