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2012年11月 7日 (水)

続・医薬品登録販売者の虚偽証明は西友だけなのだろうか?

一昨日のエントリーには、コメントやメールを多数いただきまして、厚くお礼申しあげます。私自身たいへん勉強になりました。同時に、少し思い違いをしていたところもあったようです。この問題はマスコミ各紙で報じられているとおり、西友さんが本日(6日)不正受験の事実を認め、謝罪会見を開き、今後は調査委員会を設置して調査結果を待つ、ということであります。

登録販売者という資格を設けることについては規制緩和の流れの中で頷けるところではありますが、ではなぜ実務経験1年以上、月80時間という受験資格が生まれたのか?というあたりは、私の推測ではありますが、既存業界からのプレッシャーがあったのかもしれません。なにせコンビニやスーパーで売れ筋の医薬品が販売できる、ということになりますと、調剤薬局さんやドラッグストアさんの売上に大きく響くことは明らかなわけです。マツキヨさんなどと提携をして医薬品販売に積極的だったローソンさんですら(日経新聞ニュースによりますと)いまだ90名程度しか登録されていない、とのこと。このような記事内容からしますと、いかに実務経験証明をとることがむずかしいか、ということがわかります。

そのような中で西友さんが200名を超える医薬品登録販売者を誕生させた、ということですから、(私は「内部告発では?」と一昨日書きましたが)「どうも西友さんは怪しいのでは」といった別会社からの情報提供があった可能性も出てきます。モニカのパパさんがご指摘のとおり、配置販売業の場合にはそれほど問題視されていない現状と比較しますと、この業界における激しい競争の様子が窺われます。そのあたりは行政当局への情報提供なので、今後も調査報告書には出てこないと思いますが。

しかし、なぜ西友さんの販売管理責任者の方々は、このような明白なコンプライアンス問題を起こしてしまったのか、(組織ぐるみ、というのを否定されるのであれば)やはり「他のところも普通にやっている」との認識が現場担当者に存在したことは否めないと思います。6日の日経新聞ニュースのとおり、まじめに医薬品登録販売者の資格取得者を増やそうとすると、ローソンさんのように約3年で90名程度が現実なのです。これではビジネスチャンスから乗り遅れてしまう・・・ということで無理をしてしまった企業もおそらく他にも存在したのかもしれません(あくまでも私の推測です)。ちなみに6日深夜の朝日新聞ニュースでは、ドンキさんなどの多くの販売登録員を擁する企業にも取材したところ「それは絶対にない」と否定されたそうです(当然といえば当然ですが)。約280名もの受験者が虚偽の実務経験証明書を持参していた、ということで、西友さんが「組織ぐるみではなかった」と説明すればするほど、不正を起こす動機がナゾに包まれてきます。

さて問題は、今後、厚労省が本件を契機に虚偽証明の本格的な調査に乗り出すかどうか、という点であります。私の推測が正しい(つまり西友さんは組織ぐるみではないが、販売現場の人たちが「他社もやっている」と認識したからこそ、悪気なく虚偽証明をやってしまった、という推測)のであれば、今後の厚労省の本格的調査によって別の企業でも虚偽証明が発覚してくる可能性も否定できません。毎度申し上げます通り、企業の自浄能力が発揮されるかどうかは、ここが瀬戸際かと思われます。自社で厳格な社内調査を徹底して、自ら虚偽証明を見つけ出した場合には、速やかに公表すべきではないか、と思われます。行政による調査の上で虚偽証明の事実が見つかった、ということになりますと、もはや「組織ぐるみ」「経営陣の関与」が疑われても不思議ではない、という状況に陥り、長い間信用が低下してしまう結果となってしまいます。

このように医薬品販売登録員の受験資格問題が大きく取り上げられるようになり、どこの医薬品小売店においても内部告発等をおそれる事態になってきたのではないでしょうか。もちろん、ほとんどの企業ではまじめに実務経験証明書を出しておられることは承知しておりますが、今回の西友さんのように「本部は知らなかった」という(少し不思議な)事案も出てくるのではないかと。

(お詫び)

昨日、大学設置不認可に関するエントリーを掲載し、またたくさんの方にエントリーの誤りをご指摘いただきました。皆様方のご指摘により、私自身が行政事件訴訟法の「申請型義務付け訴訟」の適用範囲について、給付請求権に対する不許可事案のみだと誤解をしていたことが、よく理解できました。大学設置認可についても、2号義務つけ訴訟が提起でき、かつ取消訴訟と同時併合される、ということなので、ミスリーディングを防止するためにも、とりあえず記事をいったん非公開にさせていただき、補正したいと思います。コメントをいただいた皆様、本当に勉強になりました。ありがとうございます!

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コメント

文科大臣が大学を認可すると決めたようです。行政の長としての責任感の欠如した人物を大臣に据えると国民が迷惑する、という良い実例かと思います。
そして、次回の選挙における選挙権者の審判が楽しみです。
いずれの結果になろうとも。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2012年11月 7日 (水) 19時48分

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