« 弁護士自治からみた自由職業人としての会計士の姿 | トップページ | 「監査役の乱」ならぬ「監査役の権限濫用」? »

2012年12月18日 (火)

自民党政権下での会社法制・会計制度改革(あくまでも個人的予測)

以下で述べることは、すべて私の独断的な推測によるものなのでご注意ください。

自民党のマニュフェストの中には、企業法務に関わる項目がいくつか散見されますが、当ブログの関心事項との関係ではマニュフェスト192項(企業統治改革の推進)が注目されるところです。

社外取締役の要件厳格化、上場会社における複数独立取締役選任義務の明確化、会計監査人選任における監査役・独立取締役のあり方の見直し、公益通報制度の実効化、親子会社規制等に関する規律の法制化、監査法人・公認会計士制度の見直し、違法行為についての刑罰厳格化と「過去は問わない」一定期の自首による免責などを検討し、企業統治改革を推進します。

とのこと。安倍総裁の下での商法、会計制度改革マニュフェストといえば、愛媛1区でぶっちぎり当選を果たされた塩崎元官房長官の提言が中心になっていると思われます(これはたぶん間違いないでしょう)。当ブログでも過去にご紹介したとおり、平成17年改正会社法制定にあたっては、塩崎氏が委員長を務める自民党商法委員会によって、法制審議会での十分な審議を飛び越えて、(会社法現代化の中間試案には全く存在しなかった)大会社における内部統制の取締役会における決議・開示義務が会社法に盛り込まれました。なお、そのときに自民党小委員会が「併せて会社法改正に盛り込むべき」とされていた「取引先等関係者も認めない社外取締役・社外監査役の要件厳格化」および「監査役のなかに財務会計的知見を有する者を一人以上導入」という提案は、「とりあえず様子をみる」ということで見送られました。

もちろん今回の会社法改正案はすでに要綱化されていますので、政権交代によって大きく変わることはないと思います。しかし、上場会社を対象とするルールの改正としては、企業行動規範を含む取引所ルールの改正や金融商品取引法、公認会計士法改正等でも、ガバナンス改革が実質的には可能になりますので、現実的な企業統治改革が進むことも考えられます。

なかでも「複数独立取締役選任義務の明確化」や「社外取締役の要件厳格化」といったあたりは、(経済界の猛烈な反対が予想される中で)どのように実現を図るのか関心がありますし、最近の塩崎さんのインタビュー記事などでも「会計士処分の厳罰化は、公認会計士法改正で対応可能であり、むしろ会計士の地位を高める」といったご発言は、上記マニュフェストのなかにも片りんが窺われるところです。いっぽうIFRS(国際会計基準)の導入については、塩崎さんは極めて積極的な発言をされていましたので、導入推進派の方々には自民党の手腕に期待されている向きもあるかもしれません(このあたりはあくまでも個人的意見ですが・・・)。

マニュフェストの実現には優先順位があると思いますので、自民党政権下でどこまで企業統治改革がなされるかは、様々な政治力学に左右されるところかと。ただ、いずれにせよ掲げられたテーマについてはいずれも私自身がとても関心を持つものばかりであり、マニュフェスト193項で掲げられている「健全な資本市場構築に向けた諸策」とともに、政治力がどこまで発揮されるのか注目したいと思います。

|

« 弁護士自治からみた自由職業人としての会計士の姿 | トップページ | 「監査役の乱」ならぬ「監査役の権限濫用」? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 自民党政権下での会社法制・会計制度改革(あくまでも個人的予測):

« 弁護士自治からみた自由職業人としての会計士の姿 | トップページ | 「監査役の乱」ならぬ「監査役の権限濫用」? »