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2013年2月20日 (水)

会社法に残された課題(あくまでも個人的見解ですが・・・)

昨日(2月18日)、近畿法曹稲門会の皆様の主催により、法務実践講座「会社法改正と裁判・企業実務」が開催されましたので聴講させていただきました(大阪市 中央公会堂)。私は早稲田の出身ではございませんが、関西の実務家に広く参加の機会をくださいました近畿法曹稲門会の皆様に、厚くお礼申しあげます。<m(__)m>おかげさまで、江頭先生のご尊顔を初めて拝見することができました。そういえば、今月は神田教授、江頭教授と名刺交換をさせていただく、というたいへん記念すべき如月となりました(神田先生のように「いや~、ブログいつも拝見してますよ~」といったお言葉は江頭先生からはいただけませんでしたが←あたりまえですが 笑)

会社法改正の経緯、これまでの法改正との違い、要綱の主たるポイントの解説と進み、有斐閣より5月に出版される「株式会社法大系」の中身もご紹介され、私にとりましては、まさに至福の90分でございました。機関設計をいろいろと変えてみるよりも、株主の在り方、労働市場の在り方を変えていかないと、実質的なガバナンス改革は困難ではないか・・・とのご意見も裏話などを交えて、楽しく拝聴できました。

なお、江頭先生のお話をお聴きしての個人的な見解ではございますが、今回の会社法改正に「残された課題」のようなものがあるように感じました。江頭先生のご講演の中にも出てきたお話ですが、そのひとつは、社外取締役の定義(会社法2条15号)等に関わる問題で、会社法の規定する「業務執行」とは一体何を指すのだろうか・・・というところであります。昨年、ダイヤ通商さんが、社外役員の善管注意義務違反の有無を判断するための第三者委員会を設置したことがありました(「監査役の乱」ならぬ「監査役の権限濫用」?)。そこでは、大株主が出身母体である社外監査役さんの行動(海外の取引先企業が日本の販売先を探していたときに、別の会社をこの海外企業に紹介をして、その取引の仲介を図ったこと)が問題になっておりました。もちろん、ダイヤ通商さんでは監査役という立場だったわけで、そもそも業務執行となれば善管注意義務違反になってしまいそうですが、もしこれが社外取締役による行為だとすれば、果たして業務執行にあたるのでしょうか?また、(これは江頭先生が例としてお話されていたものですが)MBO等の交渉の場に社外取締役が(社長さんの横で)立ち会う、といったことは果たして業務執行に該当するのでしょうか?

もし、こういった行動が業務執行にあたるということになりますと、会社法2条15号の「社外取締役」にはなりえないわけですが、実際には社外取締役として選任されていながら、さまざまな(会社法上の)業務執行をされておられる社外取締役の方も多いのではないか、という素朴な疑問であります。この「業務執行」とは何ぞや・・・というのが、実はよくわかっていないような気もいたします。もちろん執行すべき業務の決定権限は、取締役または取締役会が有していることはわかるのですが、ではその「業務」というのは、具体的にどのようなことまでを指しているのだろうか・・・というと、コンメンタールなどを読んでもよくわからないところであります。取締役の業務執行の正当性(有効性)を付与するのは取締役会による委任(包括委任)でありますが、たとえ正当性が付与されていなくても、対内的にも対外的にも業務執行といえるものがあるのではないかと。そういった事実上の業務執行という概念がある以上は、(社外取締役が行うべきではない)会社法2条15号の業務執行を論じる実益はありそうです。近時、社外取締役は企業価値向上のために積極的な活動が期待されているところですが、どうなんでしょう。

そしてもう一つの残された課題でありますが、これは江頭先生も(個人的なご意見として)最後におっしゃっておられましたが、会社計算規定に関する改正、つまりIFRS(国際財務報告基準)と会社法との関係規整ということであります。普通は、これだけの会社法改正が終了しますと、当分は改正はないというのが常識的な考えだそうですが、今回は会社計算規定が全く改正されなかったので、IFRSの動向により改正作業が行われる可能性があるのでは、とのこと。

2010年8月、私は早とちりをして「いよいよ法制審会社法改正論議にIFRS登場か?」とのエントリーを出しておりましたが、江頭先生のお話をお聴きして、あながち「大外れ」でもなかったようで、ホッといたしました。IFRSの国内法への取り込みは、以前にも述べましたように、各国で一致しておりません。また金商法と会社法の垣根(財務諸表と計算書類の調整問題)にも触れることになります。これを日本の法の世界と会計の世界がどのように取り扱うのか、あの平成10年 「商法と企業会計の調整に関する研究会報告書」(大蔵省・法務省)が出されたときのような調整協議の場が再び蘇るのかどうか、こちらも楽しみであります。

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