東証・独立役員セミナー(パネルディスカッション)のご報告
2月5日、東京国際フォーラムB7会場にて開催されました、東京証券取引所主催「独立役員セミナー」のパネルディスカッション「独立役員・こんな時どうする?」に登壇させていただきました(一日ずれていたら、私は雪で出席できなかったかもしれません)。第1回の独立役員セミナーから約2年半ぶりの開催でしたが、700名の独立役員の方々がお集まりになり、たいへん盛況でございました。モデレーターは西村あさひ法律事務所の武井一浩さん、パネリストは経済同友会の副代表幹事の橘・フクシマ・咲江さん、日本CFO協会理事長(伊藤忠商事元副社長CFO)の藤田さんなど、現在も数社の社外取締役を務めていらっしゃる方々や、いちごアセットマネジメントのスコット・キャロンさんとご一緒させていただきましたが、正直、登壇している私自身が(横で拝聴していて)たいへん勉強になりました。といいますか、普段モヤモヤしていたものが、ずいぶんとスッキリ整理できた気分です。
先日ご紹介しましたとおり、私は社外監査役たる独立役員として何ができるか・・・というポジションに徹しましたので、「独立役員が業績評価を報酬の決定にどのように活かすか」といったご質問には、ちょっと回答できませんでした。独立役員としての活動において、監査役であることの意識はあるか、とのご質問もありましたが、「たしかにありますね」と回答したものの、その理由を明確にお話できませんでした。新規投資などの重要な業務執行の決定に関する取締役会などでは、どうしても「経営判断の合理性」の点について、取締役の善管注意義務を尽くしたかどうかを中心に検討します、と回答したかったのですが、うまく語ることができませんでした(汗)。会場での様子は、後日東証WEBにて議事録が公表されますし、今回は(なんと!)動画配信される(ということは議事録の修正がきかない?)そうですので、お越しいただけなかった皆様におかれましては、そちらのほうで議論の模様をご確認いただければと思います。
ディスカッション終了後、控室にて、東証の皆様を交えて登壇者で40分ほど、懇談させていただきましたが、これがなかなか私の関心を惹くものでありました。ここで書いてもよさそうな話題のみ取り上げますと、①社外取締役に就任するにあたり、本当に留意するのは社外取締役対応の事務局の力量(これはかなり重要とのこと)、②社内と社外で情報格差が生じるのは当たり前、その情報格差が存在する中で、何ができるかを考えないといけない(この点、私は少し肩に力が入りすぎていたかもしれません)、③今日は「社外取締役1人で何ができるか」を検討したが、現実には一人の場合と二人の場合とでは大きな違いがある(二人であれば社外取締役の役割が大きく異なる)、④会社役員賠償責任保険(D&O保険)の適用範囲が真剣に検討されたら、「社外取締役のリスク論」が盛り上がるのではないか、そして最後に⑤あの「独立役員ハンドブック」はよく出来ている、これまでの社外取締役としての活動がほぼ間違っていないことが確認できた、とのこと(だそうです>編集担当のKさん ちなみに商事法務で昨年一番売れた本、とのこと)
いつもこういった社外役員シンポで思うところですが、経営者や独立役員の皆様へのメッセージとしては参考になるとしても、現実に社外役員を迎え入れる会社側の実務担当者の皆様へのメッセージとしては、「もうひと押し」が必要なのではないか、と。「もう、社外取締役が企業価値向上に有用、ということは一般論としてはわかった。でも、どうすれば役に立つのか具体性や説得力に欠けるんだよな」という声はよく耳にいたします。社外取締役が実質的に制度化されるにあたっては、実はそのあたりをきちんと考えること(アイデアを出すこと)が先決ではないか、と考え込むところです。
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コメント
一昨日のセミナー参加させて頂きました。パネルディスカッションは短い時間にも拘わらず非常に内容が濃く勉強になりました。
山口先生の如く法律の専門家としての高度な見地からではありませんが、全く異業種の経理事務出身者から今の会社の常勤社外監査役という立場にあるものとして興味深く拝聴させて頂きました。
同じ独立役員であったとしても非常勤取締役(監査役)と常勤監査役とはやはり要請されるものに一定の差異があると思います。
小生も「経営執行に奉仕する監査」や「内部監査に埋没する監査役監査」であってはならないと認識しているつもりですが、日常の情報収集の人的ルートの偏りや業種の知識の無さから現業部門から離脱した監査になっているのではないかと危惧しております。(能力の問題も大きいですが・・・)
以前の会社(創業オーナー系)で取締役であった経験からも取締役会の監督機能が不全でありその際、いかほども監査役に期待していなかったことを自省しております。
しかし、ディスカッションを拝聴し、漸進的ではありますが会社の統治機構は進化しいる感を強くしました。藤田氏の言われる(役員)指名と社長継承指名の問題が日本の企業文化の転換となると思われます。
当社はオーナー企業ではありませんが新興企業で、独立役員の意義について自分も含めて再認識の必要性を感じた次第であります。
「それと「ビジネス法務の部屋」いつも感謝し期待しております。
ありがとうございました。
投稿: 若手?社外常勤A | 2013年2月 7日 (木) 13時26分
社外常勤Aさん、コメントありがとうございます。たしかに社外取締役が複数存在するとなると、あのように報酬決定においても独立役員が活躍できるのですね。私も藤田さんのお話を聞いていて「スゴイな」と感心しておりました。常勤社外監査役という立場での独立役員というのも、たしかに一般の社外役員とは視点が異なるのでしょうね。これまで常勤社外の方の視点はあまり意識しておりませんでしたので、新鮮なお話、参考にさせていただきたいと思います。
今後とも、どうかよろしくお願いいたします。
投稿: toshi | 2013年2月12日 (火) 00時37分
twitterより
ぽえ (h_canceller)
某東証の第2回独立役員セミナー講演録がTargetに上がってたので読んだけれどこんな手前味噌かつしょぼくれたイベントに上場管理料使われてるかと思うと泣けてくる
残念ながら、これが上場会社のご担当のかたの感想であるようです。
私は講演録を拝読し、大変勉強になったのですが。。。
投稿: annms | 2013年3月22日 (金) 12時08分
き、きちょうなご意見として承ります・・・Orz ありがとうございました
投稿: toshi | 2013年3月23日 (土) 12時45分
YouTubeで拝見しましたが、パネリストの方々がのってきたところで時間になってしまったという感じでしょうか。もう少し長くても良かったのではと思いました。
控室でのお話も興味深いので、アップしてほしかったです。
投稿: unknown1 | 2013年4月 5日 (金) 17時46分
ですよね?心中察していただき、ありがとうございます。なかなか時間の関係で。。。
ちょっと非公式な場でのお話は差し支えです(笑)
なお、独立役員セミナーの第一回、第二回をまとめた本が企画されているようです(あくまでも企画、ということで)。
投稿: toshi | 2013年4月 5日 (金) 18時42分