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2013年2月15日 (金)

大王製紙の有事ふたたび・・・このまま嵐は去っていくのか?

創業家との紛争の末、北越紀州製紙社の持ち分法適用会社としてリ・スタートされた大王製紙社ですが、どうも北越紀州製紙さんとの間で、やや問題が表面化している模様であります。大王製紙社の最近のインサイダー疑惑、粉飾決算に関する内部告発問題など、ガバナンスおよびコンプライアンス問題が浮上していることから、北越紀州製紙社は「大王製紙社において特別調査委員会を設置してはっきりさせよ」と提案されたそうです(北越紀州製紙側のリリースはこちら)。これに対して、大王製紙側は、すでに内部告発者からヒアリングも済ませて、裏付けのない私的意見であることがはっきりした、またインサイダー疑惑についても弁護士や社内調査の結果から問題なし、とのことなので調査は不要である、と回答をされたそうであります(大王製紙側のリリースはこちら)。

内部告発は製紙業界の業界新聞、金融庁、そして東証に対してなされたようですが、とくに話題になったのは今年1月から2月にかけて業界新聞に(連載モノで)内部告発文が掲載されたことかと思います。告発されたのは(たしか業界紙の紹介では)49歳の企画課長の方だったので、まさに経営の中枢にいらっしゃる方です(現在は関連会社に異動されたようですが)。そのような立場の社員が自社の粉飾決算やインサイダー問題などを(告発者が特定できる形で)業界新聞に告発し、また新聞社側も、裏付けがあるものとしてほぼ一面を使って大きく報じたものなので、製紙業界において話題にならないはずはなく、北越紀州製紙社が特別調査委員会を設置するように提案するのも当然のように思うのでありますが、いかがでしょうか(注-なお、「とおりすがりの研究者」さんのコメントでは、この内部告発文の内容は、相当に推測、私見に基づくものだった、とのことです。公正を期すために付記させていただきます)

単純に、社員の内部告発があっただけでは、その信憑性にも問題がありますので「有事」とはいえないかもしれません。しかし、本社の機密情報にアクセスしうる立場にあると(一般には思われる)企画課長の方が、おそらく職を賭して業界紙に告発した、ということからすれば無視するわけにもいかないと思われます。とくに上場会社ということなので、ステークホルダーたる一般株主に対しても説明責任があるわけで、もし特別調査委員会が「お金がかかる」ものであるならば、せめて社内調査委員会の調査結果程度は開示すべきではないでしょうかね。そもそも業界新聞も、裏付けがあるものと確信して、あれだけの内容の内部告発文を堂々と掲載しておられたわけですから、当該新聞社への大王製紙社としての対応(たとえば報じられた内容は事実無根であり法的措置をとる、等)がどうであったのかも知りたいところであります。また、外形的にはインサイダー取引があったと疑われても仕方のない状況が存在したことは間違いないわけですから、これも調査結果を公表されることが自浄能力ある企業としての姿ではないかと思うのですが。

私的な見解ではありますが、大王製紙社は(現在のところ)再び有事に至っているもののように見受けられます。内部告発をされた社員の方が、いまどのような処遇となっているのか、社内調査に対しては真摯に回答されたのかどうか、委員会設置の提案を拒絶した大王製紙社に対して、今後北越紀州製紙側としてはどう対応するのか等いろいろと興味がございますが、ともかく早期の幕引きを図ろうとされている大王製紙社として、本当にこのまま嵐は静かに去っていき(北越紀州製紙社との信頼関係も維持されて)再び平穏に事業を展開することになるのかどうか、有事対応支援を時々本業としている者としては注目しておきたいところであります。

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コメント

 この件についての業界紙における告発というのは、法令違反などを明確に裏付けるような事実を必ずしも十分に摘示していませんし、なによりも、憶測のかたまりといった方がよいです。これまでの内部告発に比べて、質が低いのは一目瞭然です。業界紙の実物を入手されて、ごらんになった方がよろしいのではないかと思料します(事実はよくわかりませんが、この記事をみて、まっとうな経営者でも、内部調査等をしようという気になるのかはきわめて疑問という印象を受けました)。
 なお、内部告発と称するものを載せた業界紙は、元オーナーのシンパのように見えるものでして、『内部告発』と同じような内容の元オーナーの原稿も載せていたと思います。
 

投稿: とおりすがりの研究者 | 2013年2月15日 (金) 07時14分

情報どうもありがとうございます。公正を期すために、とおりすがりの研究者さんのご意見を本文に付記させていただきました。しかし、それほどの憶測による告発文をなぜ新聞社はそのまま掲載したのでしょうか?また、それほどの記事であれば当然に大王製紙側としてはコメントを出しているはずですよね?どこかに抗議文のようなものは発表されているのでしょうか?またご存じでしたらご教示いただけませんでしょうか?

投稿: toshi | 2013年2月15日 (金) 08時34分

告発した現役社員は昨年末に金融庁や監査法人に報告。懲戒処分を2月1日付で受けたため、「公益通報者保護法に違反している」として会社側に処分の撤回を求めている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130220-OYT1T01274.htm?from=ylist

投稿: 迷える会計士 | 2013年2月20日 (水) 23時25分

先週金曜の日経産業新聞によると、大王製紙取締役会はインサイダー取引疑惑の対象となった持分法非適用会社の株式売却を決議したとのことです。
この株、誰が買ったのでしょうか?18日に統治委員会で決めて、21日プレスリリース、
28日売却先決定なのでしょうか?1週間ちょっとでは買う側もデユーデリジェンスする
余裕などありません。
そもそも、21日リリース文書にはFASFマークもなく、代表者名も連絡窓口も示されて
いません。とにかく、開示情報に信頼が置けず、これでは株主は不安になります。

北越紀州製紙が指摘する「突然なる海外投融資での巨額損失計上」も同様です。決算短信にも海外事業に関する懸念事項の注記はありません。IR説明会など開催されたのでしょうか?開催されたのならば、出席したアナリストへ何を、どう説明したのか、
知りたいです。

株主が費用を払って監査人を雇う米国とは違って、企業が監査費用を払う日本では
アナリストにこそ的確な指摘を期待します。ここはアナリストさんの出番では
ないですか。山口利昭先生の意見も聞きたいです。

投稿: 沈黙したくない大王株主 | 2013年3月 2日 (土) 22時38分

3月決算月。株価下がって喜ぶ法人株主はいないと気付きました。従って、それこそ私見ですが「この時期のアナリストは株価下げる材料を出さない」です。
北越紀州製紙が指摘する大王製紙/海外事業での損失計上は"突然なるものか、否か"。IR説明会で大王幹部が直接に「海外事業は厳しい」と少しでも言及しているならば、その情報は現在の株価には織り込まれて、市場は"突然なる"とは捉えません。逆に「まずまず」「予算通り」などの定番語句で少しでも順調を表していたならば、"突然なる"と解釈され、虚偽報告として株価にはマイナスに働きます。
多くのアナリストは金融機関に属しています。その金融機関の顧客に事業法人があるとすれば「お客様保有の株式評価を下げる事は避けよう。IR説明会で得た情報公表は4月にしよう」と考えるが自然でしょう。株価織り込み済の情報ならば、3月でも追認コメントできます。本件の場合は追認しても株価は上がる事はあっても、下がる事には繋がりません。憶測ではありますが、大王幹部は「海外は厳しい」とは言っていないでしょう。アナリストが追認コメントを出さないのですから。アナリストは同件に関心がない?そうでしょうか。先週金曜の日経産業新聞には北越紀州製紙に対するコメント(大王株取得に要した100億円が問われる)を表しています。
裏返すと北越紀州製紙のガバナンスは"本物"です。決算月に保有株の評価益減を覚悟の上で投資先の問題点を指摘して改善提言するガバナンスは"本物"と評価します。北越紀州は大王の筆頭株主です。金融機関ではなく、事業法人です。金融機関は事業法人にはない幅広い情報を持っています。アナリストを抱えて情報の収集分析を進め、貸付金回収や投資先の評価精度向上など自らの収益に直結させています。
限られた情報しかない事業法人の筆頭株主は第三者委員会設立を主張しています。大王製紙の主要株主には金融機関が存在します。情報で優る金融機関へも"本物"を求めます。こうした局面で"本物"を見せてこその主要株主であり、危機においては国家から救済されるべき公器です。「4月でいいや」は公器ではありません。

投稿: 沈黙したくない大王株主 | 2013年3月 7日 (木) 21時48分

直接ではありませんが、IR説明会は昨年11月末に行われたと聞いています。
その中で、大王幹部の方は「ベトナム事業、業績は凡そ予算どおり」と話したそうです。

投稿: 通りがけの投資家 | 2013年3月 9日 (土) 10時44分

本件なかなかコメントしにくいところですが、9日の朝日デジタル有料版に北越紀州製紙の社長さんのインタビュー(一問一答)が掲載されていますね。そこに結構参考になることが掲載されているような気もいたします。

投稿: toshi | 2013年3月10日 (日) 17時24分

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