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2013年3月 7日 (木)

トヨタ自動車、社外取締役人選の妙味(さすが、というしか・・・)

「第1トヨタ」「第2トヨタ」等の新ユニットの開発もさることながら、トヨタ自動車さん初の社外取締役を導入、とのニュースにとても関心を持ちました(こちらのニュースが詳しいかと)。

トヨタクラスの企業は、(江頭教授が先日のご講演でお話されていたことからの理解ですが)大口の非安定株主からの圧力が常時ありますので、社外取締役の導入にはあまり抵抗はないはずであり、また最近では海外での大規模紛争にも巻き込まれるリスクが高まっているわけですから、「開かれた経営」は普通の政策的判断ではないかと思われます。とくに会社法改正で話題となりました「社外取締役制度導入論(強制導入)」とはあまり関係はないものと思います。もしあるとすれば、売上2000億円以上の規模の企業で一人も社外取締役がいないところへの心理的な圧力くらいでしょうか。

むしろ私が驚きましたのは、その(候補者の)人選であります。概ね、社外取締役採用の意義というのは、①経営陣に対する外部者からの有用な意見、②外部に対する経営の透明性による規律の確保、そして③一般株主の利益保護(一般株主の利益の代弁者)というところに求められるのが通説であります。今回のトヨタ自動車さんの3名の社外取締役候補者の方々は、このそれぞれの趣旨を併せ実現するにふさわしいものになっております(どなたがこのような人選をされたのでしょうか?)←ただし「独立性」については疑問があるとのコメントをいただいております(注)

不肖、私も来週の定時株主総会により、皆様もよくご存じの上場会社の社外取締役に就任する予定でありますが(もちろん株主総会でご承認いただくことが前提でありますが)、社外取締役の導入は企業価値向上のための目的ではなく、あくまでも手段にすぎないということを肝に銘じております。社外取締役が企業のパフォーマンスを上げることのために何ができるかが最大の問題であります。このトヨタ自動車の社外取締役候補者の方々も、どのような形でパフォーマンス向上に参画されていくのか、今後のトヨタのガバナンスモデルを学ぶ上でもたいへん興味がございます。

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コメント

日本生命はトヨタ自動車の5位株主ですから、独立性に疑念があります。社外取締役としてはふさわしくないように思います。

投稿: ガバナンスを学ぶ学生 | 2013年3月 7日 (木) 13時54分

 前記学生さんのコメントは的確ですね。社外性と独立性の問題は、いつも気になりますね。また、他の役員はどうなんでしょうか。職歴を詳しく見たいです。加藤氏はどうやら大蔵省税務畑中心で、その後は保振りだけのようです。

投稿: Kazu | 2013年3月 7日 (木) 21時06分

 山口先生、社外取締役内定おめでとうございます。反対多数はまずありえないでしょう。
 ところで、過去にブログの記事で取り上げた会社の社外役員になるのは、いかがですか?

投稿: Kazu | 2013年3月 7日 (木) 21時10分

ガバナンスを学ぶ学生さん、KAZUさん、コメントありがとうございます。たしかに独立性という点では問題がないとは言えないですね。本文に注記をしておきます。3月4日付けの日本監査役協会アンケート結果でも、まだまだ独立性のない社外取締役の方々が依然として多いことがわかりますね。
私のポリシーとしては、過去に事例分析として取り上げた企業についてはとくに問題意識は持っておりません。ただ、今後は社外取締役としての活動については具体的な記述は当然に書けないかと。

投稿: toshi | 2013年3月 7日 (木) 22時19分

ガバナンスについて、ステークホルダー型と株主主権型のいずれかの立場をとるかによって、何からの独立性があれば良いかについて違いがありますね。株主主権型では、会社から独立していれば良いのに対して、ステークホレダー型では株主を含めて各ステークホルダーからの独立が求められます。
経済思想として、新自由主義に対する批判が強くなっている現在では、株主主権型からステークホルダー型のガバナンスが主流となってくると思われます。ステークホルダー型のガバナンスにおいての社外取締役は、各ステークホルダーの利害を調整するコーディネーターの役割を果たすことが期待されていると考えられます。

投稿: 迷える会計士 | 2013年3月10日 (日) 11時31分

迷える会計士さん、コメントありがとうございます。なるほど、ステークホルダの利害調整機能も必要なのですね。

実際に社外取締役としての予備トレーニングを積んでおりますと、まずは株主主権型の理念を実際の経営にどう落とし込むか、その具体策を社外取締役が考える作業がとても大切だと思います。自分が社外取締役として実務に携わることで初めて「企業価値向上のための社外取締役の有用性」を理解することができました。守秘義務に反しない範囲で、またこういった具体策を今後検討していきたいと思います。

投稿: toshi | 2013年3月10日 (日) 17時21分

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