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2013年3月26日 (火)

米国反トラスト法刑事処罰リスクと日本企業の対応策

広島高裁で「選挙無効」という、日本の統治構造の上でものすごく意義のある判決が飛び出しました。各紙「号外」まで配信されているようですが、事情判決やら、将来効判決やら、凡そ普通の方々には理解しがたい言葉が出てまいりますね。民主政治の根幹に関わる重要判決なので、これは裁判官と一般の方の「橋渡し役」が必要なのですが、そういったことにあまり関心が向けられていないのはとても残念です。おそらく(いろいろな意味で)損な役回りは嫌がられるということでしょうか。さて、以下本題であります。

今朝(3月25日)の朝日新聞の朝刊トップで自動車部品カルテルで日本企業4社の日本人社員12名が米国で収監されている、といった「競争法コンプライアンス」の事例が掲載されております。日本で勤務している社員のところへ米国当局から召喚状が届き、企業の海外取引に支障が生じることを回避するために司法取引を行い、最後には召喚に応じることが報じられていました。リニエンシー制度がうまく機能していること、カルテルへの厳罰化が国際ルールとして定着してきたことの効果が大きいそうです(しかし朝日新聞の東京版には重要ポイントが掲載されているにもかかわらず、大阪版には掲載されていない、というのはいかがなものでしょうか・・・)。

ただ、この記事に書かれてあるところは、グローバル企業であれば(既に2011年頃からリスクは承知しているところであり)、あまり驚くほどのことではないと思います。コンプライアンス上の問題として重要なのは、リスクは承知していても、そのリスク管理の運用にどれだけお金と人を活用しているか、ということではないでしょうか。この記事の中で米国の弁護士の方が「一般論だが、日本企業の法務部門は社内の立場が低く、決裁のラインに乗っていないことも多い。権限と責任を持ち、知識もある法務部門が必要だ」と語っておられますが、これは結局リスク管理に十分な資源が活用できない、という事情を示しているものと思います。

これまで反トラスト法やFCPAでイタい目に遭ったことのない企業としては、法務部門の社内における地位向上がベストだと思うのですが、弁護士秘匿特権の構築、弁護士立会権への理解、リニエンシー(米国の自主申告制度はかなり負担が重いです)決定における経営判断、競争法に特化したコンプライアンスプログラム(平時対応と危機対応を分けることが必須)の運用、民事制裁金訴訟における証拠ホールド(プレディクティブコーディング)等を考えるならば、社外取締役や社外監査役こそ、海外不祥事案件のリスク管理の重要性を経営者に説得すべき立場にあるのではないかと。いわば経営者と法務部門との「橋渡し役」がいなければお金と人を競争法コンプライアンスにかけることはむずかしいのではないか、というのが実感であります。

この海外不祥事リスクとサイバー攻撃リスクとは、(橋渡し役がいなければリスク対策の必要性が実感できないものとして)とても類似したものではないかと、最近感じております。

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