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2013年3月18日 (月)

法の世界からみた「会計監査」-拙著のご紹介(新刊)

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連日、私事で恐縮ですが、いよいよ私の三冊目の単著本が出版されることになりました。

法の世界からみた「会計監査」-弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える-(山口利昭著 同文館出版 1890円税込)

アマゾンさんでは既に予約受付中ですが、実際に店頭に並ぶのは3月26日あたりになりそうです。とくに不正リスク対応基準の施行時期に合わせて・・・というものではございません。

自分では、たいへん平易な文章を心掛けて書いたつもりですし、ちょっと難しそうな用語には、各ページ下欄で解説を付しましたので、企業実務家の方々にもお読みいただけるものと思います。法と会計の狭間に横たわった問題を中心に書き下ろしています。ぜひぜひお時間のあるときで結構ですので、お買い求めいただけますと幸いです。

以下、はしがきと目次をご紹介いたします。総ページ数は274頁です。

本書はしがき より

本書は、公認会計士の方々と仕事をご一緒する中で、弁護士のスキルと公認会計士のスキルのシナジー(相乗)効果を模索しながら執筆したものです。

弁護士といえば裁判所における弁論を中心とした仕事、公認会計士といえば上場会社における監査を中心とした仕事というイメージがあります。ただ、弁護士の中にも企業法務を中心として仕事をする方々も多いので、公認会計士・監査法人の業務上の接点も多いように思われがちです。しかし真剣に考えてみると、あまり接点というものが思い当たりません。私は企業の不正調査を主たる業務にしておりますが、公認会計士の方々と一緒に調査チームを構成することもありますので、不正調査という業務において接点がやっと見えてきた、というところでしょうか。ただ、この不正調査という仕事も、双方の専門スキルが要求される業務だからこそ、必要に迫られての協働作業ということになります。つまり1+1=2の世界のお仕事です。

もう少し創造的な協働作業、たとえば法律家のスキルを向上させるために会計士と協働する、逆に会計士の能力のレベルアップのために法律家のスキルを応用する、といった取組みは、これまであまり聞いたことがありません。世の中ではIT革命やグローバル化の流れが進み、企業における事業戦略の面でも、またリスク管理の面でも、ものすごいスピードで変わっているにもかかわらず、弁護士の世界も公認会計士の世界も時代の流れほどに変わっているようには思えません。双方の仕事の中身がそれほど変わらない中で、資格者の人数だけが急増しています。
会計や法律の知見を「所与の専門領域」だけで活用するのはわが国の成長戦略からすると非常にもったいないと思います。会計の世界で学ぶ「数字による経営管理」、法律の世界で学ぶ「理屈や倫理、説明責任」は、ビジネスの世界で広く応用できるにもかかわらず、一般的には「弁護士さんは困った時に相談できたら良い」「会計士さんには、期限どおりに適正意見を出してもらえば良い」といったイメージに捉えられています。このようなイメージで、企業社会から捉えられていることについては、弁護士や公認会計士側にも、これまで専門領域に閉じこもってきたことに責任の一端があると思います。

弁護士と公認会計士が相互理解を深める中で、どうすればスキルアップを図ることができるのか、また1+1=3になるようなシナジー効果を発揮するためにはどうすればよいか、そのような問題意識から、本書を執筆しようとしました。しかし、法と会計の世界には、なかなか分かり合えないミゾのようなものがあると考えるに至りました。そこで、その「ミゾ」はどこからくるのか、その思考の過程と解決策(らしきもの)を一冊にまとめてみたのが本書です。
本書が世に出る頃には、不正リスク対応監査基準や会社法制の見直しに関する要綱、民法改正中間試案など、上場会社の監査・開示・会計にも多大な影響を及ぼすであろう制度改革が議論されていると思います。こういった社会インフラのあり方が議論される中で、企業の成長に向けて専門職のスキルを最大限に活かしていけるだけの環境整備も必要です。
本書は会計や法律の専門職の方々だけでなく、組織内専門職および企業の経理、法務、総務に携わる実務家、そして(ガバナンス改革が進む中における)経営者の方々にもお読みいただけるよう平易な言葉を使って執筆いたしました。事業を前向きに進めていく上で、専門職の素養を経営にどのように活かすことができるのか、考えるヒントにしていただければ幸いです。まだまだ問題提起の域を超えないものでありますので、本書をお読みいただき、多くの皆さまからご意見・ご批判を頂戴したいと存じます。

なお、私自身は公認会計士の資格を有するものでもなく、ましてや会計監査の実務経験もありません。本書執筆にあたって、会計監査の現場に関する様々な実務や会計監査人としての考え方について、中堅監査法人で毎日監査実務に従事しておられる張本和志会計士に有益なご意見を頂戴いたしました。張本会計士には、あらためて御礼申し上げるとともに、ここに掲載されている内容に関する全ての責任は筆者にあることを念のため申し添えさせていただきます。
最後になりますが、私の拙いアイデアを一冊の本にまとめることをご提案いただき、会計監査業界の最新事情について逐次提供いただいた同文館出版編集部の青柳裕之氏に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

平成25年2月
弁護士 山口利昭

「法の世界からみた会計監査」目次

1 公認会計士を「憧れの職業NO.1!」にするために
 1 外から見た会計士のお仕事
 2 今なお根強い「期待ギャップ」論
 3 もはや「期待ギャップ」では済まされないのでは?
 4 リスクをとる会計士
 5 オリンパス事件の粉飾と監査の限界―会計士の意見
 6 かっこいい会計士を目指して

2 弁護士・会計士の「守秘義務」は七難かくす?
 1 はじめに
 2 弁護士・会計士の守秘義務とは?(守秘権利もある?)
 3 専門家倫理と守秘義務の関係を示す具体的事例
 4 弁護士と会計士の守秘義務の差について
 5 第三者委員会制度と弁護士の守秘義務
 6 専門家のミスを隠す「守秘義務」

3 他人(ひと)のせいにする弁護士と会計士
 1 はじめに
 2 弁護士の主張とセカンドオピニオン
 3 会計士の意見とセカンドオピニオン
 4 最終判断権者としての会計士の仕事
 5 辞任することでミスは隠せるか?
 6 最善を尽くす義務というけれど…
 7 重要になる監査法人の品質管理と職業倫理
 8 誠実性は外から見えなければいけない

4 事後規制社会に組み込まれる弁護士と会計士
 1 はじめに(コンプライアンス経営との関連で)
 2 会計士と弁護士の本来のフィールド
 3 事前規制から事後規制の社会へ
 4 事後規制社会と企業の自律的行動への関心
 5 ソフトロー時代とレピュテーション(評判)
 6 生活者の企業観の変遷(ブログ記事より)
 7 事前規制の代替案(弁護士、会計士を活用する)
 8 法化社会に必要な弁護士・会計士像

5 会計士から嫌われる「第三者委員会」と「金商法193条の3」
 1 不祥事発生企業における第三者委員会
 2 第三者委員会に対する社会からの評価は?
 3 会計士と第三者委員会
 4 会計士と金融商品取引法一九三条の三
 5 第三者委員会制度と金商法一九三条の三問題の共通項

6 会計監査のリスク・アプローチを法的に考える
 1 はじめに―監査法人の引継ぎ問題
 2 リスク・アプローチとは
 3 判例にみるリスク・アプローチ
 4 リスク・アプローチを法的に考える
 5 会計士の責任と粉飾との因果関係

7 会計基準は法律なのか?
―古田裁判官の補足意見はなぜ会計士にウケるのか?
(長銀・日債銀最高裁判決を振り返って)―
 1 はじめに
 2 長銀、日債銀最高裁判決とは?
 3 法廷意見と古田判事の補足意見
 4 古田裁判官の補足意見の紹介
 5 古田意見が会計士に評価される理由とは
 6 公正なる会計慣行と会計不正事件

8 会計士と監査役の連携に関する本気度
 1 はじめに
 2 会計監査人と監査役の連携は機能しているか
 3 連携の在り方を考えるうえで重要な裁判例
 4 異常兆候の補完関係
 5 会計士はどこまで監査役を信じる?
 6 中小規模上場会社こそ連携が必要
 7 「会計監査人と監査役の連携」は開示せよ

9 なぜ企業は粉飾に手を染めるのか?
 1 はじめに
 2 最初から確信犯はいない
 3 不祥事の原則1―不祥事の芽(予備的不正)
 4 不祥事の原則2―一次不祥事
 5 不祥事の原則3―二次不祥事
 6 誰も粉飾は止められない?
 7 一次不祥事への早期対応
 8 有事意識の共有(二次不祥事対応)

10「訂正」と「非開示」のコンプライアンス
 1 はじめに
 2 情報開示に関するコンプライアンスの視点とは?
 3 投資家、消費者の目からみた企業情報開示を意識する
 4 情報開示の方法自体の問題点―東京電力の原発事故情報
 5 企業情報開示のタイミングとコンプライアンス
 6 有事の情報開示遅延の重大性(トヨタとソニーの事例から)
 7 開示コンプライアンスと企業価値
 8 平時から情報開示の重要性について認識すべき

11 日本人は原則主義がお嫌い?―内部統制の議論は何処へ―
 1 内部統制研究会
 2 「内部統制」の多義性
 3 原則主義による規制手法(横並び社会に感じる違和感)
 4 内部統制報告制度の疲労感
 5 経営学の立場からの批判に応える必要性
 6 会社法上の内部統制の議論を整理する
 7 内部統制報告制度(開示制度)との融和を図る
 8 企業社会の現状にあった制度改革を目指して
 9 原則主義と倫理問題

3月 18, 2013 本のご紹介 |

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コメント

オリンパス事件で企業評価を行った会計士が処分されましたね。
http://www.fsa.go.jp/news/24/sonota/20130322-2.html

投稿: 迷える会計士 | 2013年3月23日 (土) 12時32分

迷える会計士さん、実は拙著の中でも迷える会計士さんの言葉を引用しているところがあります(もちろん「迷える会計士」というハンドルネームも使用しておりませんが)。この本を書くにあたり、いろいろとコメントいただいたことも参考にさせていただいております。この場を借りましてお礼申し上げます。

投稿: toshi | 2013年4月 5日 (金) 18時46分

御著書『法の世界からみた「会計監査」』を頂戴し、ありがとうございました。先般から読み始め、本日、やっと読了しました。
この分野には門外漢であるため前提とする知識が不足しており、完全な理解はできていないかもしれませんが、深い考察に興味深く読ませていただきました。
新たな山口ワールドの創設に脱帽です!

投稿: inouemoto | 2013年5月28日 (火) 22時15分

長年のおつきあいの人からは「どうしちゃったの」と言われることがあります。ちょっと普通の弁護士のラインからははずれてしまいましたが(笑)、今後ともおつきあいください

投稿: toshi | 2013年6月 1日 (土) 12時27分

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