会社の有事に前面に出る社外取締役-資生堂のガバナンス
資生堂さんの社長交代劇がいろいろな風評を呼んでおりますが、その風評をあえて断ち切るように、同社の社外取締役の上村先生が東洋経済の独占インタビューに応じておられます(資生堂-実力会長トップ復帰の真相)。今回の交代劇のシナリオは社外役員6名(社外取締役3名、社外監査役3名)の総意によるものであり、元会長は自ら敷いた経営路線を自己否定してでも次の経営トップがアクセルを踏める体制を築くことが使命である、との理由で復帰要請した、とのこと。平時は経営判断への信認を付与することで足りるが、有事には前面に出ていかざるをえない、との社外役員としての心情を語っておられるところは、このようにさまざまな風評が流れる中、ナットクするところであります。
しかし資生堂さんは、これまでもCSRやコンプライアンスに熱心に取り組んでこられた会社として有名ですが、上記インタビューにあるように、CSRにまじめに取り組んできたことが、かえってネガティブ情報の開示や減配といったマイナス行動を阻害していた(かもしれない)というのは、なんともショッキングであります。企業と社会との共生ということからすれば、マイナス情報を適時開示することは「社会契約」の履行と捉えられるわけでして、このあたりは理想と現実のかい離なのかもしれません。
ところで上記インタビュー記事において、もっとも興味を抱いたのが「社外役員6名の総意」というところであります。このような有事場面におきまして、社外取締役だけでなく、社外監査役も経営の重要な局面における判断に積極的に参加されているのですね。そういえば「議決権講師2009年版」(日本プロクシーガバナンス社発行)の中で、当時の資生堂社の専務取締役の方が「当社では社外取締役と社外監査役では、その果たしている役割にはほとんど差はない」との説明をされていました。ガバナンスにうるさい海外機関投資家向けの説明なのかな・・・と私は理解しておりましたが、上記のインタビュー記事からすると、実質的にも役割は変わらないようです。
2012年に「社外監査役が期待する社外取締役の役割とは?」とのエントリーをアップしましたが、そこで私が社外取締役に期待していた内容(利益や損失を出すプロセスを長期的な視点から検討する)を、まさに社外監査役も(自らの責任において)実行しなければならない、ということなのでしょう。この社外監査役と社外取締役との協働というのは、日本独特のガバナンス問題として残された課題だと思います。
PS ちなみに上記インタビュー記事に出てくる「経営者の自己否定」という概念ですが、これって本当にむずかしいですね。自分の職業人生を否定するくらいなら不正に走ったり、不正を隠すことのほうがマシ・・・という場面を何度も過去にみてきました。
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