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2013年3月 6日 (水)

製品リコール・回収率75%と企業への社会的評価

長崎市のグループホームの火災事故で、TDK社の製造した加湿器が火元の可能性が高いとのことで、先日謝罪会見が開かれておりました。当該ホームが使用していたTDK社製の加湿器は14年前に「発火の恐れあり」としてリコールが届けられていた製品です。その製品回収率は76%程度と報じられています。なお、「リコール」というのは企業が製品事故を防ぐための対応すべてを含みますので、世間一般に対して使用禁止を呼び掛けることなどもリコールにあたりますが、ここでは製品回収を伴うものをリコールと表現することにいたします。

リコール対応支援を経験した者として、この回収率76%という数字は、他の製品リコールの実情からみても、決して低い数字ではございません。通常、リコール対応はどこかで終息させることになりますが※、この7割を超える回収率というのは、(製品の通常の耐用年数も考慮したうえで)終息をさせるための一つの目途としての意味を持つものと思われます。もちろん販売先をきちんと追跡できる製品もありますが、トレーサビリティが機能しない製品については、おおむねこの程度が限界ではないかと思われます。パロマ工業社の湯沸かし器につきましては、ご承知のとおり元社長さんが刑事責任を負うことになりましたが、パロマ工業社の場合も、述べ50万人を動員し、158億円の回収費用をかけてきました。しかしそれでも湯沸かし器回収が完全に終了する、ということは不可能であります。

※リコールの終息には、宅配会社等による対応手続きの委託を終了する、関連会社による協力委託を終了する、自社による製品回収作業を終了する、製品の危険性を広報する作業を終了する、といったいくつかの段階があります。

全く人目につかないところで製品が使用されていたり(たとえば別荘に設置されている)、海外に中古品として再販売されていたり、さらには既に廃棄処分がされているといったことから、およそ販売製品のすべてが回収できるということは困難なのが実情です。ただ、これも法律問題(リスク管理)とは別に、CSR(企業の社会的責任)の一環として、販売製品をできるかぎり回収する努力を怠らない姿勢も大切かと。たとえばブリヂストン社の場合、リコールの対象製品である自転車用チャイルドシートについては、①人目につきやすいようにポスターを改良する、②町中の自転車置き場を巡回して当該製品を探す、③幼稚園や保育園等、子供が集まる場所を訪問して、ピンポイントで製品を探すという対応を現在も続けておられるそうです。こういった作業を続けることが、再発防止にもつながるものと考えられます。

製品被害を拡大させない、ということは不具合製品を世に出してしまった企業にとっては重大な使命ですが、これをどこまで企業(または経営者)の法的責任と結びつけて考えるかは、かなり難しい問題であります。海外に出回っている製品についての回収はどうすべきか、OEM製品については誰が回収義務を負うのか、といった問題なども併せて、リコール対応にはまだまだ考えなければならない問題がありますが、企業のリスク管理の視点からいえることは、事故情報を受領した時点から自浄能力を発揮した行動をとること以外にはリスクを低減する方法はないものと思われます。

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