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2013年3月29日 (金)

三菱自動車の不具合情報の開示と「非開示のコンプライアンス」

リスクマネジメント協会さんが発行しておられる「TODAY」最新号(3月15日号)に、「三菱自動車を二次不祥事から救ったもの」と題する論稿を掲載していただきました。昨年、国交省から「リコール対応が誠実ではない」として口頭注意を受けた事件を契機として、あの2000年当時のリコール隠し事件の体質が変わっていないとの批判が出ておりました。少し逆説的に聞こえるかもしれませんが、国交省から指摘を受けた事件においては、二次不祥事を発生させなかった三菱自動車は、むしろリスク管理の面においては向上しているのではないか、といったことを述べたものであります。組織から見た場合、一次不祥事の発生は運、不運の問題もあるかもしれませんが、二次不祥事の発生は確実に自助努力でなければなくせないものと考えられます。

さて、昨日より、またまた三菱自動車のハイブリッド車について部品に不具合が生じ、リコール対応の可能性が記者会見で明らかになりました(たとえば毎日新聞ニュースはこちら)。販売系列店での事故に起因するものだそうで、流通している販売車にとって、未だリコールの必要性がはっきりしたわけではありませんが、ともかく部品事故が発見されたので、十分な調査を行う、という段階で公表されました。これは過去にCSR対応で社会的に批判を受けている企業としては当然の対応だと思われます。つまり過去にCSR対応で失敗している企業では、製品の安全と、これを対外的に表明する「安心」の距離が、CSR対応で成功している企業よりも近づいてしまうからであります

またまた広告のようで申し訳ありませんが、拙著「法の世界からみた会計監査」の第10章「訂正と非開示のコンプライアンス」で述べておりますように、製品事故等によって消費者や投資家にとっていったん「安心」の意識に傷がついてしまいますと、次に(他の会社であれば、とくに製品の安全への信頼が崩れない程度の不祥事であったとしても)不祥事が発生した場合には消費者の「安心」のイメージが崩れやすくなり、直ちに製品の「安全」のイメージに大きな影響を及ぼすことになります。

拙著では、このように非開示を選択して、社会的に強い批判を受けた企業の事例をいくつか紹介しております。つまり消費者に強い印象を与えた不祥事が発生しますと、その企業の製品の安全に対するイメージは、ちょっとした不審行動によって毀損されてしまう可能性が出てきます。他の同業者であれば、同じように「非開示」を選択しても問題視されないにもかかわらず、CSRで失敗した過去がありますと、「なぜ開示しなかったのか」と国民から(マスコミから?)問題視され、その非開示の企業行動が製品の安全性への信頼に直結してしまう・・・という風潮はおそろしいものです。むしろ徹底的に調査の上、安全性を確保する、といった対応を世間に示すことが(これが安心の思想)、信頼回復のために求められる姿勢であります。

あのリコール隠し、そして昨年のリコールへの対応遅延、といった問題行動が続く同社においては、このタイミングで事故情報を国民と共有することは、(企業の事業戦略上ではたいへんな痛手ではありますが)リスク管理の面からすれば必要な経営判断だと思います。また、(これも本書において紹介しているところでありますが)三菱自動車社だけに限らず、海外戦略を必要とする自動車会社として、情報を行政や国民と共有しながらリコールの必要性を考えるという姿勢もこれから必要とされるのではないでしょうか(この点は別途エントリーにてご紹介したいと思います)。

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