6月株主総会会社における議決権行使助言会社ポリシーへの憂鬱
日経ニュースによりますと、キヤノンさんが3月28日に開催した定時株主総会の議決権行使結果が公表され、取締役選任議案では同社代表取締役への賛成比率が72%と2012年の総会(91%)に比べて大きく低下したそうであります。他の取締役は9割以上の賛成票を得ていることから、議決権行使助言会社による反対推奨が影響を及ぼしたものと思われます。ご承知のとおり、今年からISSにおける議決権行使ポリシーにおきまして、社外取締役を一人も置かない会社の代表取締役選任議案については、機関投資家に対して反対票を投じることを推奨することになりました(ちなみに同社の外国人持ち株比率は約3割)。
このニュースを知って、すこし意外に思われた方も多いのではないでしょうか。ISSの議決権助言ポリシーが本年度から変更されることは承知していたところではありますが、たしか昨年の12月ころの情報では、議決権を行使する外国人機関投資家の間では、
「ISSは社外取締役導入に熱心ではあるものの、果たしてガバナンス改革が企業価値向上にどの程度反映されるのかは未知数。しかも社外役員にふさわしい人物を短期間のうちに見つけ出すことは困難。社外取締役の導入は、個々の企業の判断を尊重すべきであり、社外取締役がボードに一人もいないことで社長に反対票を投じるのはちょっと抵抗がある」
という意見が大勢、とのことでありました。アナリストの方々の分析でも、ISSの推奨にもかかわらず、社外監査役議案や買収防衛策議案とは異なり、社外取締役を選任しない企業の代表取締役選任議案については、機関投資家が反対票を投じる確率は低いというものだったように理解しております。
ところが最近、どうも大型公的年金基金をはじめ、機関投資家の考え方に変化が生じてきているのではないか、との風の噂が聞こえてきております。その理由としては、①最近の調査で東証一部上場会社の55%がすでに社外取締役を導入していることが判明していること、②会社法改正論議の末、東証が社外取締役たる独立役員の登録をルール化しようとしていること、そして③独立取締役の選任まではむずかしいが、まずは社外取締役を導入することを求める程度であれば(とりあえず候補者を探し出すことは可能だと思われることから)相当の理由があると思われること、といったことのようであります。
先日、当ブログでもご紹介したとおり、トヨタ自動車さんが(独立性は別として)社外取締役を導入した、ということの衝撃も影響しているのではないでしょうか。もちろん、各社外国人持ち株比率は様々でしょうから、上記キャノン社の議決権行使結果の受け止め方も様々かと思います。しかし、最近の株高の状況の中、外国人機関投資家の持株比率が高まっている企業も増えているものと思いますので、そういった企業の総会担当役員、担当者の方々は、今後の機関投資家の動向(議決権行使助言会社の推奨について機械的に処理するのか否か)に留意しておく必要がありそうです。
さて、お知らせでございます。
拙著新刊「法の世界からみた『会計監査』-弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える-」がおかげさまで発売日より1週間で増刷が決定されました。どうもありがとうございます。今後はさらにお買い求めやすくなるものと思いますので、どうか多くの方にお読みいただければと。
ちなみに左の写真は本日(4月2日)の文教堂 新大阪駅店の販売状況です。新幹線でお読みいただくにはピッタリ(?)の一冊でございます<m(__)m>。
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