ダイバーシティ問題だけではない東証のガバナンス報告書改正
朝日新聞の朝刊で4月24日から連載されている「けいざい深話・東芝サプライズ人事」はとても興味深い内容であります。日本を代表する企業における異例の人事問題をとりあげたものです。東芝社は委員会設置会社ですから、社外取締役が複数存在するのですが、法定機関たる指名委員会は過半数の社外取締役で構成されています。私は今朝の新聞を読み、果たして指名委員会がどこまでの実権(真の人事権)を握っていたのかはわかりませんが、少なくとも伝統のある日本企業が裸の権力闘争によって企業価値を低減させてしまうことを回避できたのは、まぎれもなく指名委員会の存在ではないか、と感じました。
上記記事は「社長は、次期社長候補として複数名を掲げ、会長が含まれる委員会が合議でこの候補者から一名を選出した」と報じています。このような対応となったのも、委員会設置会社というガバナンスの厳格な制度を採用し、またこれを(形の上なのかどうかは不明ですが)尊重せざるをえないことに由来するものではないでしょうか。しかしこれによって平穏に人事問題が解決されることになるのであり、もし指名委員会が存在していなければ、「サプライズ人事」どころの話では済まないのではないでしょうか。委員会設置会社であるがゆえの流れではないかと思います。
さて、昨日に引き続きガバナンスに関連するディスクロージャーのお話でありますが、私が社外取締役に就任しておりますニッセンホールディングス社が「女性の活躍状況の開示に係る『コ
ところで、今回の報告書記載要領の改訂では、女性の上場会社における活躍状況の開示ばかりが話題になっておりますが、よく読むとそれだけではないようにも思われます。現状のコーポレートガバナンスの概要を示すところにおいて、概要だけでなく「業務執行、監督機能等の充実に向けた追加的な施策の内容等を具体的に記載してください」とあります。具体例として
取締役会や監査役会など(委員会設置会社の場合は、法定の各種委員会、執行役会を含みます。)の法定の組織のほか、経営諮問委員会、アドバイザリーボードなどの名称により設置された各種の諮問委員会や、経営会議、執行役員会、常務会等について、それぞれの概要(業務執行や監督のプロセスにおける役割、構成メンバー、男女別の構成など)や開催状況等を記載することが考えられます
とあります。男女別の構成などを記載することからみると、ここでも女性の活躍状況の開示と無関係ではありませんが、ガバナンスの充実に向けた各企業の追加的施策の内容を示す、任意で設置した委員会等の開催状況等を記載する、といったことから、コーポレートガバナンスの充実に向けた各施策の見直し状況や運用状況についてまで示すことが望ましいとされているようです。
経営トップが企業の持続的成長のためにガバナンス改革をやろうとしているのか、それとも世間の風潮に合わせて改革の形だけ整えようとしているのか、強制するものではなく、任意ということでしょうが、(どっちが企業価値向上に資するものなのかは、ここでは問いませんので)せめてESG(環境・社会・ガバナンス)投資がさかんになってきた昨今、ESGに関わる事項については外から見えるようにしなければならない、ということがより鮮明に表現されているように思えます。真剣にガバナンス改革をやる、ということであれば、冒頭の東芝社の事例のように社外取締役制度、各種諮問機関を設置した趣旨等が活かされるでしょうし、そうでないということであれば社内の力学にすべての施策も流されてしまう、ということになると思われます。
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