金融庁の佐々木審議官より書評をいただきました(経営財務)
おかげさまで、発売から2か月で4刷となりました拙著「法の世界からみた『会計監査』-弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える」でありますが、このたび経営財務の最新号(3115号)にて、金融庁検査局審議官、公認会計士・監査審査会事務局長でいらっしゃる佐々木清隆氏より書評をいただきました。
佐々木審議官といえば、ご存じのとおり、当ブログでも「金〇庁のチョイ〇るおやじ ことS審議官」として著名な方ですが、このたびは金融検査、監査法人チェックでお忙しい合間をぬって最初から最後までお読みいただき、各章へのコメントをいただいております(どうもありがとうございます<m(__)m>)。もちろん佐々木審議官の個人的な意見という形だと思いますが、市場の健全性確保のために規制する側が「法と会計の狭間の問題」についてどのように考えているのか、というところをいろいろと推測するにはたいへん参考となる内容です。とりわけ当局の事前規制的手法の在り方、リスク・アプローチへの理解、会計監査人と監査役の連係問題などについては、佐々木氏の「思い」が垣間見られ、書評を超えて、一読の価値があります。
書店販売ではございませんが、もし会社等で定期購読されておられる方々がいらっしゃいましたら、ぜひともお読みいただければ幸いです。すばらしい書評を頂戴し、あらためて佐々木審議官には感謝申し上げます。なお、この後も著名な方々の書評が続々と登場する予定でございます。
PS レックスHD事件の高裁判決が出ていることを旬刊商事法務で知りました。すでに川井先生のブログで解説されていますが、これ、たいへん興味深い判決内容です。最近の企業法務に関する裁判所の審査の在り方にも関連する内容で、私も判決全文を読んでみたいところです。
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コメント
佐々木審議官の講演資料等では様々な不正事例の解説がされてきた訳ですが、ここで企業、監査法人、金融庁の連携の限界について。(一般事業会社の場合。)
会計士は不正事例に有るような様々なグレー事案について証拠(偽造/嘘の答弁/忌避も含め)を収集して検討していますが、海外や特殊な方法が用いられていた場合、調査の深堀りまでできないケースが多いと思います。(不正調査のプロでは無いので。) 一方、監査法人の品質保証や審査の部門も、監査チームにいろいろ資料提出させる訳ですが、そこは企業と違って、特別な支援チームを用意はしない。どちらかというと、事後に問題が起きた時に、監督官庁に対する答弁や裁判での自衛の範囲で行動しているように見えます。(それにクライアントとは揉めたく無いでしょう。)
一方、法的には、公益通報(個人)や、監査法人から金商法や会社法違反による通報を当局にする場合、事実証拠が求められています。弁護士の世界では当然のことと思いますが、一般の会社員や会計士の場合、状況証拠や全体の蓋然性ではクロだが、事実証拠が掴めない。よって、当局への通報や報告も行われないとなります。
結果的に、何年か経過して、ついに犯則事案になって初めて、過去の不正が表面化する。このパターンの繰り返しです。
不正事案では予防が重要とは言われるわけですが、現行法では、グレーな状況/要注意企業の情報は、少なくとも会計士->監査法人->当局、または社員->当局のルートでは、上がって来ないと思われます。
この辺りが、不正を断ちたい思いと、現行法の枠組みの中での実際の動きの、期待ギャップになっていると思います。
投稿: ももんがー | 2013年6月 2日 (日) 10時34分
山口先生
御著書「法の世界からみた会計監査」をじっくりと拝読させていただきました。
若輩会計士として、この仕事が怖くなったのも事実です。
クライアント企業に対し、いい加減な監査をする会計士などいないと信じます。ただ、真摯に仕事をした結果、不幸にも粉飾がわからなかったら、だまされた事が罪に為るかも知れない仕事なのでしょうか?
御著書の中でも数多く例にだされていたオリンパス事件はあまりに衝撃的な事件でしたので自分なりにフォローしていました。監査にセカンド・オピニオンは存在しないとはいえ、A監査法人・S監査法人共に見解が違ったのかも知れませんが、監査はしっかりと行われたと思っています。
ただ、116ページから118ぺージに述べられている「引継ぎ問題」に関しては全く疑問が解消しません。確か、金融庁から両法人に業務改善命令が出される直前、東京新聞に「A監査法人が不正見逃し隠しか」という記事が出ました。A監査法人が監査人の交代が決まると突如、一度は認めた決算についてその修正をオリンパスに要求しており、しかもその事実はS監査法人には引き継いでいなかったようです。この行為自体、監査基準違反であると思います。
特に、オリンパスのジャイラス社は、例の国内三社とは異なり、実態のあるむしろ企業価値の高い会社であるが故、S監査法人は粉飾に関連していた企業などとは疑いようがなかったと思います。もし、自分が後任の立場だったらと考えただけでぞっとします。今後、このA監査法人の行為について、その事実関係が明らかになっていくことを願っています。
投稿: 若輩会計士 | 2013年6月 3日 (月) 00時09分
先生の御著書で勉強させていただいております。
私もオリンパス事件の、特に「引き継ぎ」に関しては疑問を持つ一人です。先生の御著書を読んで、受任者(会計監査の前任者)は、被監査企業の監査が後任者にも適切に行えるよう、きちんと引き継ぐところまでが事務処理上の善管注意義務の範囲になる、という御見解は納得できるところです。
投稿: 一読者 | 2013年6月 3日 (月) 23時15分
皆様、拙著をお読みいただき、ありがとうございます。たくさんの方にご意見をいただいているところでして、そのうち「ご意見集」のようなものを公表しようかと考えております。
さて、本日ご紹介しました「逐条解説」でも、八田先生が監査法人の連係と引き継ぎ問題について熱く語っておられますよね。オリンパス事件の総括が終わっていない以上、これからも、監査法人の品質問題として話題に上るのではないかと思います。
今後とも、どうかよろしくお願いいたします。
投稿: toshi | 2013年6月 7日 (金) 01時36分
山口利明先生
初めて投稿させていただきます。ご著書を拝読させていただきました。
昨年まで3年間ほど,あるサービサー(債権回収会社)で取締役弁護士をしており,会社の中に入り込んで,コンプライアンス指導を行っておりました。会計中心に設計されている「内部統制」と法的観点からのアプローチのずれの存在が,ずっと,喉に引っかかった小骨のように気に掛かっており,そんなときに,東京の弁護士会のブックセンターで先生のご著書に出会い,とても合点がいきました。やはり「ミゾ」だったんですね。
小職の関与した当該会社は,コンプライアンス上,いろいろ問題があったのですが,小職の在任中に,相互牽制の仕組みの再構築の作業を行い,終局的な問題解決まで導くことができました。
「原則主義」と「社員の倫理」が大切だという先生のご指摘は,まさに同感で,同社においても実践しておりました。前者は,小職が,折に触れて講話をしたり,営業関係の会議で問題提起をしたりしたことが功を奏し,後者は,「酒」が有効でした。酒を酌み交わしながら,胸襟を開いて語り合えば,やはり,社員のみなさんは,家族に胸を張って,こういう仕事をしているんだと言えないような,後ろめたい会社には勤めたくないと思っている訳で,その琴線に触れることができました。社内で弁護士が活動していれば,そういう,社内では少数派になりがちな,「心ある人たち」の理論武装に役だって,多数の意見に押し上げていけるように思います。
取締役弁護士という制度は債権回収会社特有の制度ですが,インハウスロイヤー全般に同じ効用を期待できるように思うのですが。
小職は東京におりますが,何かの機会にご挨拶ができればと思っております。 拝
投稿: おとうさん弁護士 | 2013年6月19日 (水) 16時12分
おとうさん弁護士さん、はじめまして。ご意見ありがとうございます。内部統制やコンプライアンスの理論をきちんと現場で使っておられる、というのは尊敬いたします。現場で実践するためには、経営者への説得をはじめ、かなりの困難を伴うものと思いますので、日ごろからの信頼関係の賜物だと思います。
そういった実践の中で、弊職の本が役に立つのであればたいへんうれしく思います。
こちらこそ、また東京でご挨拶させていただきたいと思います。どうか引き続きヨロシクお願いいたします
投稿: toshi | 2013年6月25日 (火) 01時53分