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2013年6月28日 (金)

川崎重工内紛劇に対するマスコミの姿勢について

日経新聞の記事によると、1月にクーデターが発生した広島電鉄社の株主総会でも、やはり解任劇に対する株主さん方からの質問が集中したようです。内紛劇は株主を不安にさせてしまうことがよくわかります。記事によりますと、監査役さんが説明されたようですが、かなり苦しそうですね。。。

さて、6月26日に神戸で開催されました川崎重工業社の株主総会に出席された方より、コメント欄のとおり総会の状況をご報告いただきました(どうもありがとうございます<m(__)m>)。当ブログでも、法律的な観点からではありますが、クーデターの総決算と言う意味で注目しておりましたので、マスコミから報じられているところと、コメント欄のレポートを読むかぎりでは、クーデターを起こした側のペースで進んだように思います。

それにしても、26日に「某さん」がコメント欄で述べておられるように、あの内紛劇から株主総会まで、日経新聞さんは川崎重工の新体制については徹底的に批判的でしたね。どうしてそこまでキビシイのだろうか・・・と思えるほどに、統合白紙に向けた川崎重工社の動きについては消極的なご意見が多かったようです。ちなみに私は今でも意見は変えておらず、M&A撤回はクーデターのきっかけであり、それ以前の社長派の方々の経営の進め方に対する不満こそ本当の原因だったのでは・・・と考えています(もちろん、そのようなことは株主総会で語られることはありませんが)。

当ブログで過去に何度も繰り返し書いておりますとおり、M&Aに関する情報はごくごく一部の役員だけで管理すべきトップシークレット情報なのです。ではなぜ情報が洩れてM&A時にはインサイダー取引事案が増えるのかといえば、それは私利私欲に目がくらんだ人がいたからではなく、いわゆる派閥争いの力学が極限まで高まるからです(これは間違いないと確信しています)。情報が拡散するのは、なにも儲け話を人に伝えるためではなく、自分の派閥の力を確認し、統率する必要があるからです。したがって支配権争いが存在しないような組織では情報統制が効くわけですが、そもそも本件において多くの取締役がM&Aの情報を知っていた、ということは、まさに以前から組織に緊張感があったことを裏付ける事実だと考えています。

日経新聞の姿勢とは少し違って、朝日新聞は比較的中立冷静な立場で報じられていたように思います。とくに今朝(6月27日)の記事では京都大学の前田教授の意見(取締役会が機能した事例として積極的に評価)も出されており、中立的な報道の象徴のように思えました。結局M&Aが成功するかどうかは「人」である、というのは経営学の先生方から何度も教えていただきましたが、統合後に陣頭指揮をとれるだけの「人」が存在しないと判断すれば、デューデリでどのような結果が出ていようとも、統合に後ろ向きになるのはミクロ的には十分にありうる結論なのでしょうね。日本が世界と戦うためには、という視点からは「残念」という結論になるのかもしれませんが。。。

ひとつだけ朝日新聞の記事で気になりましたのは、数日前に(選任されなかった3名のうちのおひとりの)取締役の方が朝日のインタビューには「総会に出席する」と回答されていたことです。しかしながら結果的には欠席されたのですね。そこにいったいどんなドラマがあったのか、総会の裏でどのような力が働いたのか、野次馬的には興味をそそられるところです。

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コメント

トップシークレットと言っても、基本合意すれば公表せざるを得ず、公表してからでも、キリン-サントリーのような「破談」もあるので、本当に難しいですね。

人で決まるのは、おっしゃる通り、確かなので、結局のところ取締役の善管注意義務のようなものをもっともっと厳しくない限り、社内取締役は部門の利害代表者としてしか動かないのではないでしょうか?
(執行役員や部長が秘密をリークしてしまえば、同じかも知れませんけどとりあえず)

先に統合がトップ同士で決まって、後で価格を決める、という日本式も違和感が残ります(欧米では価格は会社同士の合意と同時発表が一般的)。

(厳しい)新聞社さんはソニーには優しいですね。

投稿: katsu | 2013年7月 1日 (月) 17時53分

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