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2013年7月29日 (月)

日本公認会計士協会「不正調査ガイドライン」と調査人の覚悟

土木工事会社との不明朗な高級車のやり取りが問題視された大阪府池田市の市長さんが「逆ギレ」しているとの記事が報じられておりますが、その逆ギレの原因とされているのが第三者委員会の報告書だそうです。自らの身の潔白を証明しようと準備していたにもかかわらず、その主張がことごとく第三者委員会から排斥されてしまったことに不満を抱き、「第三者委員会は裁判所でもないのだから想像でモノを書くな。いったいどこに証拠はあるのか」とご立腹されたそうです(産経新聞ニュースはこちら)。

さて、少し遅くなりましたが、7月2日に公表された(15日にパブコメ締切)日本公認会計士協会 経営調査会研究報告書によります「不正調査ガイドライン」の公開草案を読ませていただきました。公認会計士さんが第三者委員会や社内調査委員会の委員など、不正調査に関わる機会が増えておりますが、公認会計士の方々が不正調査を行う際の留意点などがガイドラインとしてまとめられたものです。業務を受嘱する際の注意点や実際の調査方法、報告書にまとめる際の留意点など、たいへん詳しい内容でして不正調査実務の参考になるものと思います。不正の発生要因や是正措置案の提言に関する記述ではCFE(公認不正検査士)の教科書なども参考にされています。

これは上記ガイドラインへの意見ではなく、私自身の不正調査人としての感想にすぎませんが、冒頭の事例でもおわかりのとおり、不正調査についてはシロかクロかをハッキリさせる覚悟がないと報告書の有用性はなかなか認められないなぁ・・・と思います。「調査をしてみましたが、対象とすべき事実が真実かどうかよくわかりませんでした」という結論は、まさに任意調査の限界を如実に表現するものです。しかし、この結論は依頼主から有利に援用されるだけであり(依頼主の思うツボであり)、委員会の考えとは違った意味で報告書が用いられる可能性があることは、最近の第三者委員会報告書をみてもおわかりのとおりかと(これは不正調査を担当する者にとっての新たなリスクになっていると思います)。

たとえば不正調査の途中でパソコンの中身を調査したいにもかかわらず、これに会社が同意しない場合、調査人は何ができますか?反面調査をしたいにもかかわらず、関係者がこれに同意しない場合、不正調査人はどうすればよいでしょうか?同意を得ずに調査を進めるでしょうか、それとも調査はあきらめるけれども同意がないことを証拠として事実の認定を行うのでしょうか、それとも関係者が協力しなかったので事実を調査することはできなかった、結局事実の真偽は不明のままです、と報告をするのでしょうか。このあたりがリスクアプローチを前提として、「意見不表明」という結論が許容される定例監査と、仮設検証アプローチを前提として、白か黒かはっきりさせることが求められる不正調査とのかなり大きな違いが出てくる場面ではないかと思います。つまり、不正調査にかかわる専門家は、かならず誰かに結論に対して文句を言われる立場となり、ある程度のリスクを負担せざるをえないものと思います。

私の個人的意見としては「不正調査のスキルを磨く」ということは、強制力を持たない調査人が、いかにして真実を明らかにするような調査を行うことができるか、その際にいかに調査人の法的リスクを低減することができるか、という相反する二つの目的を、バランスをとりながら両立させる・・・・・ということに尽きるものだと認識しています。

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