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2013年7月 3日 (水)

JICPAが「不正調査ガイドライン(公開草案)」を公表

本日(7月2日)、日本公認会計士協会(経営研究調査会)さんが不正調査ガイドラインの公開草案をリリースされました。「 日本公認会計士協会(経営研究調査会)では、公認会計士が実施する不正調査の業務が増えているものの、こういった不正調査業務が体系的に整理されていなかったことを踏まえ、現在一般的に不正調査業務で利用されている概念、手続及び手法について検討してまいりました」とのことで、意見を公募されています。70頁以上にわたる膨大な研究報告であり、このような体系的なガイドラインの素案をまとめてこられた研究会の皆様に敬意を表したいと思います。

まだチラっとしか眺めておりませんが、体系的には公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)で、これまでまとめ上げたり、海外から紹介してきた理論が多数採用されているので、ACFEの理事を務めさせえていただいている私としましても感慨深いものがあります。この不正調査ガイドラインの広報により、カッコいい会計士さんが増えることを期待すると同時に、今後ますますCFE(公認不正検査士)の資格取得者が増えることを願っています。また、日弁連第三者委員会ガイドラインについても数か所において参照されているようですが、弁護士および会計士の協同作業が必要となる第三者委員会の活動について、双方の協議を行う上でも活用されるといいですね。

実際に不正調査を本業としている者としては、海外不正リスク、海外から訴えられるリスクへの配慮というものも含まれていたらいいかなぁと思います。たとえば海外子会社の会計不正事件の調査においては、証拠毀損による会社の不利益に配慮する必要がありますし、現地の(法人および従業員個人の)弁護士の秘密特権侵害のおそれもありますね。また、粉飾決算(証券詐欺)の不正調査においても、その調査委員会が会社とどのような関係にあるのか(会社の利益のための委員会なのか、それとも中立公正な第三者委員会なのか)といったところを(海外の司法当局や投資家から訴えられるリスクに配慮して)明確にしておく必要もあります。私も海外不正調査の専門家ではありませんので詳しいところまでは不案内ですが、初動対応を間違うと企業自身に更なるリスクを発生させてしまうので、気を付けておきたいところです。

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コメント

山口先生

はじめまして。公認会計士/CFEとして個人開業している元SESC職員です。
不正調査の現場にいた一介の者として、今回の記事、大変、興味深く拝読したため、思わず筆をとらせていただきました。
特に、自分が気になったのは、「調査委員会が会社とどのような関係にあるのか」といった点です。
数ページの日弁連の第三者委員会ガイドラインでは、経営者にとって不利なことも記載する、と明記されているのに、今回の草案にはあれだけ分量のにもかかわらず、そのような記載が見当たらないことも気になっています。
JICPAが不正調査人の実質的依頼者が企業のステークホルダー全体である、と本当に考えるのであれば、その点は、まずは明確にする必要があるのではないでしょうか。
なお、お恥ずかしながら、弊会計事務所HP”ニュース”でも、本件の草案に関する記事を掲載しています。お目汚しではありますが、ご高覧いただけますと大変幸甚です。どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 横浜の個人開業会計士 | 2013年7月 3日 (水) 11時10分

横浜の個人開業会計士さん、はじめまして。ご意見どうもありがとうございます。ご指摘の点は今回のJICPAガイドラインの核心の部分ですね。第三者委員会の報告書が様々なところで参照される前提となるのは、まさに誰のための報告書なのか、というところに依拠するわけでして、ここが曖昧だと「隠れ蓑」の推定が働くわけです。最近はどうも良品と粗悪品(若干失礼ですが)の差が激しくなっているように思います。
貴HP拝見いたしました。なるほど、、、たしかこの「事前協議」は先日JICPAから公表された「第三者委員会に対する見解」の流れをくむもののようですね。なんか議論を呼びそうな内容ですね。興味深い内容のエントリーが今後も並びそうで期待しております。

投稿: toshi | 2013年7月 3日 (水) 19時33分

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