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2013年8月21日 (水)

内部通報制度・最新事情2題-自浄能力の発揮に向けて

秋田書店さんの景表法違反問題(当選者の水増し問題)が大きく報じられています。消費者庁のリリースをみると長期間にわたり、相当細かく水増しの内容が特定されているので、おそらく内部告発によって発覚したものといえそうです。8月20日の こちらのNHKニュースによりますと、取材に協力しておられる元社員の証言もかなり詳細なので間違いないものと思います。さらにおそろしいのはこちらのTBSニュースでして、「他社でもやっている」との証言が出ています。

以前医薬品登録販売員試験の虚偽証明書提出事件の際にも申し上げましたが、企業がこのような悪質な不正行為をなぜ行うかといいますと「他社もやっている」という担当者の認識が規範意識を鈍麻させるからです。さて今後、同様の事例が他社からも出てくるのかどうか、これは内部通報や内部告発によって明らかになるものと予想します。

さて、本業に関する話題はあまりつぶやかないようにしていますが、内部通報制度に関する話題をふたつほど。何かのご参考にしていただければと思います。

多くの企業では、すでに内部通報制度が整備されているところも多いと思いますが、通報窓口への通報だけではうまく機能しないケースもあるかと。実際、内部通報が握りつぶされてしまうこともあります。そこで、正規の通報ルートとは異なるかもしれませんが、内部通報が一番機能する可能性が高いのは、やはり「社外監査役」しかも独立性のある社外監査役さんに直接通報することだと思います。たとえ正規のルートではないとしても、社外監査役が通報事実を知ってしまった以上は、これを握りつぶしてしまいますと法的な責任を追及されるリスクが極めて高いはずです。また監査役という立場からしても、社内調査を行いやすい立場ですし、なんといっても最悪のケースでは辞任という切り札を切ってでも社内の隠ぺいに対して反対することができます。

そしてもうひとつは、内部通報の外部窓口(たとえば法律事務所など)は、意外と中間管理職の方々に評判が良い、ということです。中間管理職の方々は、部下の苦情に対して、どうしても経営者寄りの発言になってしまうことがあります。しかし、だからといって部下達の不正不満がいきなり外部へ情報提供されたり、また管理職を飛び越して役員クラスに通報が直接飛んでしまうことはつらいわけでして、そこで中間管理職の方々は悩むわけです。このようなときに、内部通報が外部窓口に持ち込まれ、そこで常識的な審査結果を示してもらいますと、ずいぶんと気持ちが楽になるようです(パワハラ案件などが代表的な例です)。「常識的に考えても通報者の言い分のほうが分が悪い・・・」ということを通報者に認識してほしい、という願望がかなり強いようです。もちろん外部窓口の担当者が会社寄りの意見しか言わない・・・というのでは困りものですが。

8月 21, 2013 内部通報制度 |

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コメント

たいへんご無沙汰でした山口先生、DMORIです。
「秋田書店 内部統制」で検索すると、私の意見が目立つせいか、昨日から今日の昼までに2千件のアクセスが来ており、世間の関心の高さがうかがえます。
しかしながら社外監査役への内部通報が、世のビジネスマンにとって本当に頼りになるのか、私は疑問を持っております。もし社内の役員に対して、「こんな通報があったけど、どうしますか」などと、万一名前も知らされたらどうなるでしょうか。実際、そんな会社もありました。
自分の生活を考えたら、なかなか通報できないでしょう。
また、社外監査役が通報者を匿名にしたうえでも、外部へ公表するわけではありませんから、会社の名誉も保てるような調査や調整を行ったうえで、本当に悪い点は隠して、トカゲの尻尾切りの形で社会に公表してお詫びをして、おさめるという、政策的な処理も可能です。
だから私は、だいぶ前にも述べましたが、IT大手I社のように「会社が握りつぶすのではと思ったら、マスコミや行政当局へリークしていいのですよ」という教育を社員に行うのが、最も良い方法と考えております。
会社もここまで宣言することで、一層コンプライアンスに責任を持つ自覚ができます。

投稿: DMORI | 2013年8月21日 (水) 13時16分

少しご無沙汰しております。ブログはずっと読ませていただいております。
この件は、先生の推測どおりのようですね。下記が本当だとしたら、とんでもないことです。
景品の金額自体は「知れている」でしょうに、そうしたところで「ウソ」をやっ
て、こうした大事の火種を続けるなんて、コンプライアンス以前に、企業の戦略
として「愚かしい極み」だと思います。

以下、ネット記事(毎日新聞)より~
「社内で不正をやめるよう訴えた景品担当の女性社員(28)が「プレゼントを窃取
 した」などとして懲戒解雇されていたことが20日分かった。女性側は「罪を
 なすりつけられた」と主張。
 担当になった際の引き継ぎで不正を知り「一つの商品しかないのに、当選人数
 を10人にするのはおかしい」などと上司に訴えたが、「会社にいたかったら
 文句を言わずに黙って仕事をしろ」と言われたという。
 女性は不正を続けているうちに睡眠障害や適応障害を発症、2011年9月か
 ら休職していたが、12年2月29日に「多数の読者にプレゼントを発送せず、
 不法に窃取した」と書かれた解雇通知書が送られてきた」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130821-00000059-mai-soci

投稿: 伊藤 晋 | 2013年8月21日 (水) 20時18分

DMORIさん、伊藤さん、ご意見ありがとうございます。閲覧いただいているとのことで、たいへんうれしく存じます。

社外監査役への通報が100%完全無欠、というわけではございません。懸念されているような事態も全く想定されないというわけではないので、不安材料は残ります。ただ、やはり独立した社外の監査役は、それなりに逃げずに対応されるケースが多いと思います。まぁ、不安と熱意をはかりにかけて、熱意が上回れば最良の通報先ではないかなと。
ほんと、会社側が今回は相当に分が悪いのように私も思いますね。

投稿: toshi | 2013年8月24日 (土) 01時20分

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