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2013年8月29日 (木)

「半沢直樹」から考える金融機関の内部統制(ご参考まで)

本日のエントリーは私が思いついたものではなく、ある方(某メガバンク出身)が某所でつぶやいておられたことを元に書かせていただいていることをご了解ください。すいません、ある方にはご了解をいただいておりませんので、「又聞き」ということでして、もちろん文責は私自身にあります。なお、先日の「破綻-バイオ企業・林原の真実」についても、数名の現役バンカーの方から有益なご意見をメールで頂戴しておりますが、こちらはちょっと公開するのは限界がありそうなので、また私の言葉に言い換えて別の機会にでもご紹介させていただきます。

いや、さすが名前が変わった(?)某メガバンクご出身の方だけあって、高視聴率「半沢直樹」を視ていても、私のようにドラマの展開にハラハラドキドキしている素人とは視方が違います(笑)。まずは半沢直樹を産業中央銀行(半沢が勤務する東京中央銀行は産業中央銀行と東京第一銀行が合併)に入行させてしまったことは旧産業中央銀行の人事部のミスである、とのご意見。

行内で不正を犯す人間の理由の第一位は「自分の人事考課に納得がいかない」というものだそうで、とりわけ銀行では「個人的な恨み」というものは内部統制上、極力回避しなければならないそうです。ドラマをご覧の方ならおわかりのとおり、半沢の父親は町工場を経営していて、融資を引き揚げられたことで父親が自殺をしてしまいます。しかしそうなりますと、その息子は入行させるべきではない、ということであり、父親が産業中央銀行と取引があったとなると、通常の銀行の事実調査からすると、容易にそのようなことはわかるそうです。なるほど。。。

次に、半沢直樹のドラマでは、合併前の産業中央銀行と東京第一銀行との間における派閥争いがとても派手に描かれているのですが、「あれは現実です」とのこと。支店長が産業中央なら副支店長は東京第一、その下の花形融資課長が産業中央なら、個人メインの取引課長は東京第一と、見事にたすき掛けが行われるのが通常であり、人事部はこのパズルを得意としなければやっていけないようです。内部告発を受領したことの行内報告書が第6話に出てきましたが、あの報告書にはたしか副支店長の印鑑がなく、課長と支店長の印鑑だけが押されていましたが、その方曰く「母体行が異なる副支店長には内密にしておきたかったのでは、と感じた」そうです。なるほど・・・さすが、そんなところまでリアルに描かれているとは(^^;;・・・・。派閥争いがないことが内部統制的には良いことなのですが、現実には派閥争いがあることが強烈なけん制機能となっているのが事実であり、「笑えない内部統制だったりする」そうです。

私なんかは、金融庁検査のような一大イベントがあれば、もう少し行内で一致団結するようになって派閥争いなど次第に解消されてしまうのではないか・・・などと考えるわけですが、まったく甘いのでしょうね。そういえば、これは別のある経営者の方からお聴きしたことですが、組織というものは、組織の信用を毀損するような大きな不祥事を隠すためには、誰かに無条件で責任をとらせる(辞めてもらう)といった小さな犠牲もやむをえない、ということで、組織の責任追及まで行く前に個人の責任追及で終わらせる、その際に派閥争いはとても役に立つそうです(こわ~(ToT)/)。最近多くの企業で「コンプライアンス部門」が法務部から切り離されて経営執行部直轄に移行している意味が少しわかってきたような気もします(汗)。

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コメント

たすき掛け人事や不祥事を個人におっかぶせるあたり、リアルですし、きっとそうなんだろうなと思います。こんな感じのリアルなお話がもっと聞きたいなと思います。

投稿: Kazu | 2013年8月29日 (木) 10時48分

最近の金融機関のことは知りませんが、採用に際して、金融機関は特に厳しく調べることはそのとりだと思います。けれど、TVドラマは所詮TVドラマなので、「それを言っちゃ、物語が成立も展開もしませんよ」というところでしょう(笑)。
むしろ、押印に関する点や、派閥が牽制機能となっている「笑えない内部統制」の指摘のほうが面白いですね。たぶん 100%に近くそのとりなんだろうな、と思います。

投稿: 伊藤 晋 | 2013年8月30日 (金) 13時54分

私は、多分同じ銀行出身者ですが、こんな心理でしょう。

仮に、支店長と副支店長の年次や年齢が接近していれば、

副支店長は本来なら俺は支店長でもおかしくない能力があるはずだが、たすき掛け人事のせいで、俺より出来が悪い相手側出身のあいつが支店長かよ。やってらんねーよ。なんて思っていたりすることは多分あったでしょう。

こういった小さいことの積み重ねが弊害となっていると言われていたようですが、部下から見れば、人事はちゃんと見ていたようにも思いましたけどね。

リスク回避第一の銀行員なら(この場合、自分のサラリーマンとしての地位のリスクを回避するという意味です)、コンプラ事項はキチンとする、というのが最低限だと思いますねえ。はんこ飛ばしは融資ではあったけど、こういった部分ではなかったなあ。

万が一のことがあって、「おれは知らんかった」と副支店長に開き直られると、支店長が管理不行き届きで窮地に陥りますから。よくある話ですが、ハンコ押すことはリスクの分散になりますからね(結局誰が責任者かわからなくするためのもの)。

そこがドラマなんでしょうが。

投稿: katsu | 2013年8月30日 (金) 18時33分

バブルが崩壊した後に金融庁が発足した筈なので、ドラマにはすごく違和感があります。
まぁ私は、MOFの検査官から「おタクはなぜ不動産融資を推進しないんだ!他行はみんなやってるぞ!」と叱責されるような地味な銀行で育てられたので、「へぇ、都銀はこんなことをやってたんだ」と思うことばかりです。

投稿: skydog | 2013年8月31日 (土) 22時41分

7話の方は、リアリティより数字のインパクトを強調した演出重視に感じました。
株式運用損が120億円発生したといっても、金融庁が示した利益の推移のグラフからみると、前期以前はかなり利益が計上されていることから、当期も一定の営業利益が計上されているはずで、最終損失はせいぜい数十億程度と推定されます。社歴が長い会社ですから、毎期利益が計上されていたとすると、相当多額の内部留保があるはずで数十億程度の損失は十分吸収されるでしょう。
それに、破綻懸念先に分類された場合、1500億円の引当金が必要ということは、引当率70%ですから2000億円以上を貸付けていることになりますが、地方の一老舗ホテルにすぎない会社に、なぜそんな多額の貸付けをしたのでしょうか?

投稿: 迷える会計士 | 2013年9月 3日 (火) 21時27分

バブル華やかなりし時代には、「天下のK銀」グループが料亭の女将に2,000億円以上を貸し込んでいたのですから、「伊勢島ホテル」に2,000億円の貸付があっても不思議ではないでしょう。ただし、あくまでもバブル時代ですから、金融庁検査ではなくMOF検(大蔵省検査)のはず。

仮に金融庁検査だとして、「金融検査マニュアル」に則って検査するならば、本業ではない損失を理由にして、「正常先」から一気に「ハケ(破綻懸念先)」まで債務者区分を落とすのは無理があるのでは。

まぁNHKの大河ドラマが「歴史ファンタジー」であるように、「半沢直樹」も「金融コメディ」として楽しめば良いのでは。

投稿: skydog | 2013年9月 4日 (水) 19時59分

申し訣ありません。先ほど第7話を録画で見ましたので、1点だけ追記させてください。

MOF検で私が接した検査官の殆どは(ノンキャリアです)、立派な見識をお持ちの方々でした。「忠臣蔵の吉良上野介」のように、権限をかさにきて銀行をネチネチ苛める検査官なんて見たこともありません。

仮に検査基準日以降の株式運用損失が発覚しても、「次回の検査を楽しみにしてますよ」と仰って下さるような方々ばかりでした。

影響力の大きい山口先生のブログですので、あえて(前のコメントに反するような)野暮な書き込みをいたしました。ご海容ください。

投稿: skydod | 2013年9月 6日 (金) 23時34分

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