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2013年8月19日 (月)

金融検査の見直しと林原の破綻

9784898314098お盆休みはなかなか本を読む時間がとれなかったのですが、この一冊だけは・・・と思い、なんとか時間を作ってじっくりと読ませていただきました。

破綻-バイオ企業・林原の真実(林原靖著 WAC 1500円税別)

著者のお名前からご推察のとおり、当事者(元林原専務取締役、社長さんの実弟)の方による林原倒産に至る経緯の告白・・・というものです。岡山の世界的名門企業がなぜ弁済率93%にも関わらず倒産に至ったのか、なぜ話し合いによる処理(銀行ADR)は奏功しなかったのか、当時の会社を取り巻く関係者の動きが克明に描かれています。私はそれほど詳しい分野ではありませんが、金融法務に従事しておられる方にとっては、著者の見解への賛否は別として、ご一読をお勧めしたい一冊です。

取引先銀行の守秘義務違反・・・というところは、私も本書を読んでとても疑問を抱いたところですし、どういった理由で社内資料を複数行で突き合わせたり、ADRの協議内容をマスコミに漏らしたのか、今後もできれば真相を知りたいところです。ただ林原事件といえば、私個人の立場からしますと、どうして長年粉飾決算を放置していたのか、これほどの名門企業が、なぜ会計監査人の欠如(会社法上の違法行為)について経営トップも含めて認識されていなかったのか、というところに関心が向きますが、そのあたりは(この本の中心テーマから離れてしまうからでしょうけれども)さらっとしか触れられていなかったのが残念でした。非上場会社として、計算書類をきちんと作ることについてのコンプライアンス意識が薄かった(きちんと作る必要もなかった)・・・と、あえて言えばそういった理由からだったような気もします。

なお、債務超過が大きく報じられていましたが、清算価格による非常時のバランスシートはたしかに「たたき売り」を前提としたものであり、それ自体はやむをえないものだと思います。ただ、林原のように無体財産を多く保有する会社の資産価値というものが、どれほどバランスシートの中で考慮されるのか、IFRSの議論などとも並行して考えるきっかけになればいいなぁ・・・との印象を持ちました。

ところで一昨日(8月17日)の日経新聞朝刊の一面に「金融検査見直しへ」という記事が掲載されていました。今後は金融庁が銀行による査定を尊重し、不良債権処理の優先を転換する、ということのようです。これまでよりもベンチャー企業や中小企業への資金援助が容易になるとのこと。上記「林原・・・」の本の中でも、著者が「本当に会社を成長させたいと思うならば銀行からお金を借りないほうがよい」と断言しておられますが、私はこういった金融検査も林原倒産の遠因になっていたのではないか、と考えますがいかがでしょうか。

ただ、私の記憶では、たしか林原のメインバンクの銀行さんは、林原社に会計監査人が存在しなかったことについて、ほとんど関心を示していなかった、とのことでした(登記簿で確認できるにもかかわらず、そのような確認はしていなかったそうです)。これは銀行融資の姿勢自体が、非上場会社の貸借対照表、損益計算書という計算書類を重視していなかったことの証左かと思います。いわば物的担保と人的担保による信用リスク管理ということが中心だったわけで、今後「査定中心主義」の融資姿勢となりますと、比較的大きな非上場会社については会計監査をはじめ、会社法上のガバナンス体制にも留意しなければならないわけで、このあたりは(当然に銀行融資を受けている)一般企業にとっても影響が出てくるような気がします。

8月 19, 2013 本のご紹介 |

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