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2013年8月27日 (火)

企業のCSR活動と取締役の善管注意義務の履行

今年の株主総会シーズンの総括として、「株主エンゲージメント(株主との対話)の促進」が特徴のひとつとして掲げられています(たとえば6月28日付読売新聞社説)。株主総会における議決権行使のみならず、戦略、業績評価、リスク、報酬、コーポレート・ガバナンス等に関する目的をもった株主との対話が促進されつつあるということです。西武とサーベラス、ソニーとサードポイント等の交渉経過をみますと、ガバナンスの要求などを含め、対話といってもなかなかキビシイ交渉になるのが現実です。

株主価値の最大化こそ、受託者責任を負う取締役の責務であるとすれば、とくに社外取締役として理屈の上で株主に説明することがむずかしいと感じるテーマがあります。以前からボーっと考えたりしていたのですが、なかなかまとまらないのが企業のCSR活動の推進は取締役としての善管注意義務に反することにならないか?というテーマ。会社が本業で得た利益を社会貢献活動や寄付金に使う、とくに不祥事は発生していないけれども、将来の不祥事発生に備えて相当の管理費用に使う、といったあたりが具体的な例です。ちなみに不確実な負債の発生を回避するためのリスク管理と株主利益の最大化との関係は、 「数字でわかる会社法」(有斐閣 田中亘編著)の第3章「株主有限責任制度と債権者の保護」を読んで以来の私の疑問です。

このたび有斐閣から出版されました「株式会社法大系」(江頭憲治郎編著)の中に、一橋大学の野田博先生がお書きになった「CSRと会社法」という論文が収められていますが、この論文を読みますと、CSR活動と取締役の善管注意義務の履行との関係について、かなり頭の中が整理されます。とても格式のある本であり、内容を誤って引用するとマズイと思いますので、あえて安易な引用は控えますが、古くて新しいテーマである「CSRと会社法との関係」を、最近の学術的な到達点にまで引き上げておられ、たいへん勉強になります。

本稿は、会社法の解釈論としても、また株主に企業判断を説明する際の理屈の問題としても参考になるところが多いかと。社会の要請によって企業が自発的な行動に出る場合、短期的には株主の損失になるわけですが、その自発的行動がなぜ善管注意義務違反にならないのか、いやむしろCSRの要請に反して行動をとらなかった場合に、企業の信用が毀損されるような結果になれば、むしろ善管注意義務違反に問われるのではないか、というあたりの議論は、経営判断の意思決定の過程を株主に説明するにあたり重要なポイントだと思います。

CSRと会社法の関係などを考察してみますと、会社法が純粋な国内法であるにも関わらず、そこに国際ルールへの企業の適応といったことを考慮しなければならない時代になったことを感じます。このことは、編者でいらっしゃる江頭先生が「はじがき」で(IFRSと会社法の例を用いて)述べておられますが、さらに、企業の社会的責任に関する議論が会社法の解釈にどのような影響を及ぼすのか、ISO26000やエシックスコードの浸透などと共に関心を持っておきたいと思います。

PS:この「株式会社法大系」ですが、途中でご紹介した「数字でわかる会社法」とセットでお読みになると、理解がとても深まるのではないか・・・と(私は勝手に)感じています。

8月 27, 2013 民事系 |

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コメント

「法人は、「人」として社会的に存在するのだから、社会の要請に応えるのは当然」と考えるのか、
「法人は株主のために存在するが、社会の要請にも配慮しないと、いろいろと弊害もでるので、長期的には、配慮する方が、株主の利益につながる。」と、考えるのか・・・・平時では似ているようでも、場合によっては、全く異なる結論につながる気もします。
つまり、社会の要請と株主利益が全く異なる場合です。例えば、株主のためには、会社を第三者に売るとか、解散する方が正しくて、社会の要請は全く違う場合です。
いったい、日本国の取締役は、どちらの立場を求められているのでしょうか?相変わらず「うまくやれ」なのか・・・・

投稿: MAX | 2013年8月27日 (火) 17時16分

MAXさん、コメントありがとうございます。CSRと会社法の問題でむずかしいと感じるのは、一方は国内法による「法律」であり、もう一方は海外にも通じる理屈や倫理の問題、ということかと思います。私は海外向けの説明責任を尽くすためにも、倫理を大切に論理的に説明できることを重視しようと考えています。そのことは、ひいては会社法の善管注意義務の解釈にも通じるのではないかと。

投稿: toshi | 2013年9月 4日 (水) 10時34分

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