会社法の視点による「親子会社規制」と監査役監査
昨日(9月4日)、伝統ある産業経理協会にて監査役さん向けの講演をさせていただきました。当研究会にお招きいただいたのは初めてでしたが、もう40年近くの歴史のある監査役さんの研究会(正式には監査役業務研究会)ということで、250名ほどの監査役の方々がお越しになられてビックリしました。コメンテーターも酒巻俊雄先生が務められて、伝統を感じる研修会でした(コーディネーターは、同じ大阪弁護士会の村中徹先生が務められたので、少し安心できました)。
親子会社規律と企業集団内部統制に関する講演だったのですが、講演の冒頭で申し上げましたとおり、監査役の皆様方が研究されるテーマとしては、最近話題の海外リスクと並んで、かなりハイレベルなものではないかと思っています。
まず、このテーマは論じる方の立ち位置によって、いろんな切り口があります。たまたま私は弁護士という立場なので会社法という視点から語るわけですが、コンサルタント的な立場の方からすると、取引法(企業間契約)という視点から語る方もいらっしゃいますし、また経営者の方であればマネジメント(投資-独立当事者間取引か否か)という視点から語ることになるのではないかと思います。監査役さんは、いずれのタイプの方々とも業務上で接することになるわけで、頭が混乱しないだろうか・・・と思ってしまうわけです。なので、昨日は、まず会社法に基づくお話、という視点を明確にするところからお話させていただきました。
つぎに、ミクロの視点とマクロの視点がありますよね。ミクロの視点とは、会社法上は親子会社といえども別々の法人格がありますし、それぞれに会社の機関があるわけで、これを無視して法律的なお話はできないのです。しかし、経済実態的にとらえれば、企業グループというひとつの完結した組織が存在するわけですから、その実態に沿った形で株主や債権者保護を考えないと妥当な結論が導き出せません。そこで、このバランスをとることを、親会社取締役の行為規範とどう結び付けるのか・・・というところが難問です。
そしてもうひとつは、企業経営の効率性の問題でして、これは私が社外取締役をしていて、最も配慮しなければならない点だと思っています。大きな企業として経営したほうが効率的なのか、それともリスクを分散して分社化したほうが効率的なのか、機関投資家に説明するにはとても重要な視点なのです。とりわけ海外の機関投資家には「日本の会社法ではこうなってるから」という説明は通用しないので、理屈(論理)と数と倫理で企業価値の向上に合致するガバナンスを説明しなければなりません。いわば内部組織的にみたらどうか、グループ間取引の視点からみればシナジーが発揮できるか、というあたりの問題です。
監査役さんは、取締役の職務執行を監視・検証する立場にあるので、取締役の善管注意義務の履行としてのグループ会社経営の執行に配慮するわけですが、どうしても二つ目、三つ目の視点も法解釈の中に顔を出してくるわけで、このあたりは「審議される事項ごとに親会社取締役の指揮監督権を重視する場面や、子会社取締役の裁量に任せる場面などを検討せざるをえないのではないか」とお伝えせざるをえませんでした。(答えになっているのか、なっていないのか、ちょっとわかりませんが・・・・すみません<m(__)m>)。企業集団内部統制についての関心が高まっているところですが、企業集団内部統制を考えるにあたっても、同様の配慮が必要なのが「親子会社規制」のむずかしいところではないでしょうか。
なお、酒巻先生から、平成2年の商法改正のころの、とくに企業会計審議会と法制審議会の様々なやりとりについて、たいへん興味深い話をお聴きすることができました。そのころの法と会計の融和(対立?)に関する問題を理解する参考資料などもわかりましたので、また資料にあたった後に別途エントリーでご紹介したいと思います。
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