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2013年10月15日 (火)

コーナン社の不祥事-法令より重い企業倫理の率先垂範

私生活ではいつもお世話になっておりますホームセンター大手のコーナンさん(東証1部)ですが、このたびは創業者である社長さんと女性取締役さんとの不明朗取引により謝罪会見、四半期開示の延期という「一大事」に見舞われています(不祥事の内容については、たとえば朝日新聞ニュースはこちらです)。株価も一時急落とのこと。

毎日新聞が最初(10月10日)に報じたところでは、記事の詳細が「複数のコーナン関係者らが明らかにしたところによると・・・」とありますので、おそらく社内もしくは取引先による内部からの情報提供が、マスコミになされたものと思います。こういった記事に接しますと、どうしても「内部告発の前にコーナンさんの社内通報窓口に通報があったのだろうか?仮に内部通報があったとすれば、いままで会社は通報について何も調査をしていなかったのだろうか?」との疑念を抱いてしまいます。報じられるところでは、第三者委員会が設置されるそうですが、委員会には、まずそのあたりを詳しく調査していただきたいところです。

さて、ここからが本論ですが、コーナン社の社長さんは、謝罪会見において「軽く考えていた」「思慮が足りなかった」と釈明しておられます。この「軽く考えていた」というのは、私も社長さんの本意ではないかと思いますし、ひょっとすると、ほかの取締役、監査役の方々も「軽く考えていた」のではないかと推測いたします(もちろん、あくまでも私個人の推測です)。

各マスコミの記事では、会社と取締役との利益相反取引といった会社法上の問題、会計処理に関係するリベート授受の問題、取締役の資産譲り受けに関する税務上の問題等に焦点があたっていますが、コーナンほどの大きな会社にしれみれば、一店舗の駐車場用地の問題など、日常の業務執行に関する問題であり、かりに法令違反になるとしても、形だけでも取締役会の承認を得ていれば済む問題、ととらえていたのではないでしょうか(実際、女性取締役の方が就任されたのは2011年ころのことであり、取引はそれよりもずっと以前から、ということのようです)。

むしろマスコミが真正面から取り上げているわけではありませんが、このたびのコーナンさんの不祥事は企業倫理上の問題のほうがよほど大きいのではないかと。上場会社の創業家社長さんが、中途採用の女性取締役さんと個人的な支援関係にあることを裏付ける事実が表ざたになってしまったことが、企業倫理上どうなのか・・・という点です。普段、社員や取引先に対してビジネス上の倫理を率先垂範していた(であろう)経営トップが、取締役(もしくはその親族)が代表者を務める会社から賃借している固定資産の取得に関与している、というのは倫理上ちょっと説明がつきにくい問題です。

コーナンの社長さんの特殊事情というのではなく、ここで企業の経営トップの方々にご注意申し上げたいことは、法務や会計等のビジネス上のコンプライアンス判断に気を取られていると、その背後にある原則の部分、つまり企業倫理上どうなのか?という点への配慮に欠けてしまうことがある、ということです。法務や会計処理上の懸案事項については、ビジネス判断としてグレーゾーンは審議の対象となります。しかし、そこで(法令違反が軽微、会計上の重要性の原則違反はない、といったことで)「たいしたことではない」といった判断が下されると、それが免罪符になってしまいます。ではグレーゾーンに入ってしまったこと自体が上場会社の経営者としてどうなのか、ステークホルダーに説明がつくのだろうか、というところの意識が欠如してしまいます。

コーナンさんの件でも、利益相反問題については従来から(おそらく顧問弁護士さん等の意見を聴いたうえで)問題を把握されていたようで、法人登記等の虚偽申請がなされていたことも毎日新聞ニュースに掲載されています。つまり、違法の程度は軽微なので、後でなんとかすれば大丈夫、といったところかと思います。しかし、法的な問題がクリアされたことで、当事者も周囲の役員の方々も、それで一件落着と考えておられたのではないでしょうか。これは決して倫理意識が薄弱だったというわけではなく、おそらく倫理意識は高く持っていたとしても、いざ実行の段階において無意識に非倫理的行為を選択してしまう可能性がある、ということです。他社さんでも十分注意をしていなければ「うっかりコンプライアンス」にはまります。

通り一遍の倫理教育を行ったとしても、それは倫理的行動がとれるという平時の考え方に影響を与えるだけであり、実際に倫理的行動が必要な場面で、かならず期待される行動がとれるとは限りません。なぜなら法律意見書が免罪符になってしまう、といったことで無意識のうちに非倫理的行動に出てしまうケースは意外と多いからです。おそらく内部告発に出たコーナンの関係者の方々も、違法行為への憤りよりも、まず経営トップが倫理的に問題のある行動をとったことへの怒りが先に立っていたのではないでしょうか。コンプライアンスは法令遵守ということよりも、社会からの要請への適切な対応である、といわれる時代の、典型的な不祥事ではないかと考えます。今後、第三者委員会が設置されるかもしれませんが、果たしてどのような報告書が出てくるのか、注目されるところです。

10月 15, 2013 企業不祥事を考える |

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