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2013年10月29日 (火)

みずほ反社会的勢力融資問題-なぜ監査役は蚊帳の外?

本日のエントリーについて念のため申し上げますが、以下は特定企業の役員の行動を批判するものではなく、あくまでも制度の在り方について焦点をあてる目的での記述であることにご留意ください。

ご承知のとおり、みずほ銀行の反社会的勢力不正融資問題について、本日(10月28日)第三者委員会報告書が公表され、みずほ銀行より「業務改善計画の提出について」と題する文書がリリースされました。土日の休みなく委員および補佐の方々が調査業務を尽くされたことに敬意を表します。また、そのご尽力が報告書に凝縮されていることがわかります。第三者委員会報告書および改善計画書を読み、私自身も提携ローンのスキームをはじめ、いろいろと勉強させていただきました。とくに、みずほ銀行とオリコとの(問題解消に向けての)やりとりを報告書で読む中で、みずほが(マスコミで報道されているような)問題を放置していた、というわけではない、ということも理解できました。しかし、どうしても解せない点だけを「素朴な疑問」として掲げさせていただきます。

このたびの不正融資問題(オリコを保証会社とする販売提携ローンについて、不芳属性の人たちを相手方として金銭消費貸借契約を締結してしまった件)をみずほ首脳の人たちが知ることになるのは銀行やFGの取締役会に報告された時点だそうです。その報告された取締役会には、いずれにも多数の監査役さんが出席していたことが報告書に記されています。

反社会的勢力への不正融資問題は、銀行の法令遵守態勢に関する点において、取締役の善管注意義務に深く関わる法律問題です。つまり監査役さん方の監査の対象となります。ところが、第三者委員会報告書のどこを読んでも、また改善計画書のどこを眺めても、FGや銀行の監査役さん方がどのような行動をとったのか、また監査役のどこに問題があったのか、今後、監査役は反社会的勢力排除の課題にどう対応すべきなのか、ということが一切出てきません。また、どこにも監査役について問題点が取り上げられていないことの結果でしょうか、関係者が多数処分されているにもかかわらず、FGおよび銀行の監査役さん方は処分の対象にはなっていないようです。

これは一体どういうことなのでしょうか?金融庁は、わざわざ検査重点項目として「監査役との対話」を掲げ、監査役さん方に公益の番人としての活躍を期待しているところだと思います。ましてやメガバンク・・・ということですから、その監査役は「公益中の公益の番人」のはずです。しかしながら、第三者委員による聴取対象者リストには、元常勤監査役の方2名の聴取はあったものの、現役の監査役さん方からの聴取は一切出てきません。これは「監査役には法令遵守態勢の整備および運用のチェックなどはできっこないし、そもそも期待していない」ということなのでしょうか?そうだとすれば、モニタリングの要である監査役制度が金融機関において軽視されていることを象徴するものであり、とても悲しい気持ちになります。

それとも監査役は取締役の善管注意義務違反の有無をチェックする立場にあり、なおかつ独任制の機関なので、監査役の意見を聴取すると、取締役の法的責任論に深入りすることになりますので、第三者委員会としては、これを回避したのでしょうか。現在、みずほFGの個人株主からFG監査役の方々には提訴請求が通知されています。つまり、このままいきますと株主代表訴訟が提起されることになります。そこで、本件報告書については、そういった関係者の法的責任に影響を及ぼすような事実や判断については明確な物言いはしない、ということなのでしょうか。

あるいは(これは穿った見方ですが)金融検査の重点項目である「監査役との対話」が功を奏して、監査役のどなたかの口から、金融庁検査官に対して「当グループでは、このような問題がある」ということが伝えられ、その結果として金融検査で発覚したのでしょうか。監査見逃しに関する社内処分も問われていないというのは、何か事件発覚に監査役が貢献されたのでしょうか。もしそうであるならば、私の本日のエントリーは全く的外れ・・・ということになりますが。

銀行の改善計画書によれば、銀行に社外取締役を導入するとのことで、ガバナンス、コンプライアンス、危機管理に精通した外部有識者の就任を予定しているそうです。しかし企業価値向上や経営者業績の評価という社外取締役選任の一般的な理由ではなく、ガバナンス、コンプライアンス経営の向上という理由からであるならば、社外取締役を選任する前に、現在の監査役制度をどうするのかを先に議論することが求められるはずです。第三者委員会報告書の中に、今回の事件の原因として「役員の退任・異動による引き継ぎの不備」というものが掲げられていますが、そうであればなおさら、任期が長くかつ身分が保障されている監査役が機能していれば、このような問題は早期に解決できたのではないでしょうか。

本来、スピード経営が求められる銀行において、経営陣がリスク管理に割くことができる時間は限られていると思います(これは持株会社の役員でも同じかと)。とりわけ問題となっていた時期に、システム障害という、反社会的勢力問題と同じくらい大きな信用問題のほうに経営陣が注力していたわけですから、思考経済の上でどこかに隙ができていたとしても不自然ではありません。しかし監査役はそういった経営陣の「知見優先による思考回路」とは異なる判断が可能であり、また求められているはずです。立ち止まって、金融機関における反社リスクの大きさを改めて取締役の人たちに認識させ、別の思考回路で問題解決を図るべきことを示さなければならなかったのではないでしょうか。

委員会報告書によると、本件の提携ローン問題に関する資料がFGの取締役会に提出された際、ひとりの社外取締役の方が、FGの取締役会で反社会的勢力排除システムについて質問をされたそうです。社外役員としては、決して見過ごすことができな問題だったはずです。同じ非業務執行役員である監査役の方々は、そこで一体何を言い、監査役会ではどのように意見形成をしていったのか、そのあたりが浮かび上がらなければ今後の法令遵守態勢がどのように整備されたとしても、また同じことの繰り返しになるように思えます。

そもそも、反社問題は法律問題だけでなく、企業倫理に関する問題を含んでいます。なぜ反社会的勢力というだけで人権が侵害されるのか、憲法上のグレーな課題が法律上はつきまとっています。しかし反社への利益供与は間違いなく社会における不正を助長することにつながるものであり、企業倫理として許容できないものです。貸付の原資は預金だからといって、最大回収率を優先し、反社への利益供与が「正常債権」であるかぎりは目をつぶるという「法律チック」な解決に説得力が乏しいのは、倫理問題(企業の品位問題)があるからです。企業倫理に関わる問題に監査役はどこまで関与するのか、それはコンプライアンス委員会の判断に任せておけばよいのか、それとも法律問題を超えて、企業倫理の問題にも監査役は積極的に関与しなければならないのか、そのあたりが明確にされなければならないと考えています。

反社問題は企業の品位に関わるのです。報告書を読むと、銀行は二度も弁護士から法律意見書を受領し、それをもって可としています。いくら法律意見書をとっても、それは役員個人の善管注意義務に関わる問題のクリアであり、企業の品位に関わる倫理問題をクリアしたわけではありません。これが、知見による思考回路とは異なる思考回路による判断が求められる理由です。このたびのことをきっかけとして、経済同友会でも社外取締役の導入義務化に賛同する意見が出されるものとマスコミで報じられていますが、社外取締役制度の義務化の前に、現在の監査役制度の在り方についても、きちんと議論されることを期待いたします。

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コメント

純粋な制度論からすれば、第三者委員会の活動も、取締役会の付託による活動の一環であって、「第三者委員会による検証活動並びにその後の取締役の対応まで」含めて監査役の監査対象、ではないのでしょうか?
とすれば、監査役に対して第三者委員会が意見するのは制度的にはベクトルが異なるかと思いますし、監査役の責任判断を行うことができるのは、株主(ないしは機関として株主総会)に限られるようにも思います。

少なくとも制度論を踏まえると、監査役について、第三者委員会が事実経緯の検証を超えて「評価対象」とするのは困難ないし権限逸脱にも思えます。
そこまで行うには、「純制度的な整理としては」株主総会の付託を得た第三者委員会にのみ可能、とも考えられます。

少なくとも、政治的な背景・意図を持った経営陣がある場合を考えると、監査役に対するけん制道具ともなりかねず、監査役と第三者委員会との関係は慎重に期するべきと考えますが、いかがでしょうか。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2013年10月29日 (火) 10時19分

>場末のコンプライアンスさん

一投資家として考えると、第三者委員会による検証活動はステークホルダーへの情報公開見方になり、第三者委員会は名目上は取締役会の付託を受けた活動でありますが、実質的にはステークホルダー(特に株主)に変わっての付託なのではと考えています。
そう考えると、本文中にもある通り、監査役の業務監査によるチェック機能が適切に行われていたのかという点もスコープに入るべきかと見ています。
また、第三者委員会の中立性を信頼する前提であれば、取締役会による意向を汲み、監査役への牽制手段とすること自体が、第三者委員会の設置意義自体を歪めるように思うのですが。

投稿: 投資家 | 2013年10月30日 (水) 08時31分

場末のコンプライアンスさんのご意見は正論だと思いますが、第三者委員会は一時的なプロジェクトなので誰を調査対象とするかはその都度調査報告書に記載すればよいのでは。
なぜなら社外のステイクホルダーは監査役は自らを聖域にせず第三者委員会の調査に積極的に協力しているはずと黙示的に要求しますので。
みずほ銀行経営者の政治的な背景云々はわかりませんが、調査報告書には監査役は調査対象外とするというような記載されてないように思いました。

投稿: Student | 2013年10月30日 (水) 08時52分

監査役は誰がモニタリングするのか?という話になるわけですが、立て付け上は株主総会ということになるのでしょうか。ただし、事実上モニタリングは不可能ですね。法的な責任追及は無理でも、調査とその結果に対する意見ぐらいは、第三者委員会が述べてもいいのではないかな、と思います。株主に対する報告として。

投稿: こばんざめ | 2013年10月30日 (水) 11時52分

場末のコンプライアンスさんのご意見に全面的に賛成です。また、toshi先生は「監査見逃しに関する社内処分も問われていない」ことを問題にされておりますが、冒頭「問題を放置していた、というわけではない、ということも理解できました」とおっしゃっているので、みずほの監査役もやはり「取締役会は問題を認識しているし、適切な対応を試みようとしている」と判断したとも思われます。つまり「監査見逃し」はなかったか、あったとしたなら「リスク認識が生ぬるい、対策のテンポが遅い」ことを注意喚起しなかったことで、一般にそれを「監査見逃し」とは言わないのではないでしょうか。したがって「監査見逃しに関する社内処分」との発想は出てこなくて当然でしょう。だいいち「社内処分」とは、誰が誰を処分するのですか?
「そもそも、反社問題は法律問題だけでなく、企業倫理に関する問題を含んでいます」とおっしゃる通り、この問題は違法な貸付に資金手当てをしたとかの法律問題ではなく、「企業の品位」「企業の信頼」に関するリスク管理上の問題です。みずほの監査役がリスク管理に鈍感であったのではないかと疑われるのは仕方ないことですが、極論すれば東電の監査役が津波による原発事故のリスクを指摘しなかったのと同じレベルの、「能力の問題」であり、任務懈怠による違法行為の見逃しのような「処罰」の対象にはならないと思います。
監査役の業務監査の対象は、適法性監査と妥当性監査と言われますが、はっきりしたモノサシがある適法性監査と違って、企業倫理を踏み外していないかどうかなどを含む妥当性監査は監査役個々人の哲学をベースとしなければなりませんから、まことにモノが言いにくいのです。toshi先生は、「法律問題を超えて、企業倫理の問題にも監査役は積極的に関与しなければならないのか、そのあたりが明確にされなければならない」とおっしゃるのですが、「監査役は積極的に関与しなければならない」と強制するならば、現在の環境のままでは、監査役のなり手はいなくなるでしょう。

投稿: 茶飲み爺さん | 2013年10月30日 (水) 17時26分

上場会社は皆、内部統制基本方針に反社条項を盛り込まされており、暴力団排除条例も施行されております。したがって、倫理といった言葉を持ち出すまでもなく、本件は監査役の守備範囲です。
第三者委員会は会社法とは別次元の機関なので、会社法上の機関との関係を同一平面で説明する必要はありません。強いていえば、形式上の委託者は「株式会社」であり、その意思決定を取締役会が行ったということでしょう。別に、社長が発意した第三者委員会があってもいいし、監査役(会)発意のそれがあってもいいはずです。いずれにせよ、株主、潜在投資家を中心としたステークホルダーのために働く組織ということになりましょう。本件のいきさつを客観的な立場で調査し、監査役を含むコーポレートガバナンス全体のどこにどのような問題があるのかを評価する材料を提供してくれればそれでよいのです。株主は議決権や訴権で対応するでしょうし投資家はポジションを自ら判断するでしょう。

投稿: JFK | 2013年10月30日 (水) 22時59分

かつて銀行に在籍(みずほではありませんが)していた経験からして、
今回のみずほの対応は信じがたい話です。30年前、私が担当していた
取引先が「反社の関係者」と判明した時点で、私は支店長から即刻、
回収を命じられました。その融資は、「信用保証協会保証付」で
債権保全に余り問題が無い先だったのですけれど。
昔から、反社と聞くだけで条件反射的な拒否をする事は銀行員の
常識で、そうした感覚が麻痺していたのか、あるいは3行が鼎立し
権力が拮抗しているという「みずほ」の特殊な社内政治状況が
わざわいしたのか、真相究明はまだ道半ばのように思えます。

投稿: 彷徨える監査役 | 2013年10月31日 (木) 09時28分

再度の投稿失礼します。
元・銀行員であった私から見ると、山口先生が仰る「任期が長く身分が
保障されている監査役」と言う表現が、残念ながら銀行については
当てはまらないのではないかと思います。
ちなみに、みずほFGの過去4~5年分の有報をご覧になれば、常勤監査役の
異動が如何に頻繁か、ご理解頂けると思います。4年の任期を全うされた方
はおられず、多くは1~2年で関係会社社長か、みずほメインの上場企業役員にご栄転(?)されておられますね。
私が過去見てきた銀行監査役の方々も、そういうご転進をされた方が多かったと記憶しています。誤解を恐れず率直に言えば、取締役には「なり損ねた」が、転出先が未定の理事クラスを処遇する為のポストであり、転出先が決まり次第出ていく一時預かりの役員、と言ったら言い過ぎでしょうか??
そういう位置付けと、ご本人も理解されている以上、監査役として胆力の
ある行動を期待できるのか、はなはだ疑問ではあります。

妄言失礼の段、お詫び申し上げます。

投稿: 彷徨える監査役 | 2013年11月 1日 (金) 14時23分

今回の第三者委員会と監査役の位置づけについては、法律の専門家の皆さまからすると法的には様々な解釈があるのかとは思います。
一方で投資家(特に海外の投資家)からは、「問題が発生した際に取締役や従業員の行動は第三者によって検証される必要があるが、監査役については検証が不要であると日本を代表する企業が判断した」と映ります。
投資家の「日本の社会は監査役に期待をしていない」「日本企業はガバナンスが劣っていると指摘されると”日本には監査役という独自のきちんとした制度がある”というが監査役はお飾りである」といった思いがより強くなる出来事だと感じました。

投稿: ty | 2013年11月 2日 (土) 11時24分

(本稿のご趣旨とは外れますがご容赦ください)2013年3月4日リリースの日本監査役協会のアンケート集計結果によると、任期途中での監査役辞任があったのは、回答があった上場924社(監査役の退任自体がなかった882社を除く)中312社。うち①役職定年等の社内規定によるもの42社、②執行部門に戻る等の職掌の変更に伴うもの49社、③一身上の都合によるもの187社となっております。
①②は「よくも回答したなぁ」という感じですが、③については協会自身もさすがに「自発的な辞任と捉えてよいかは必ずしも明確ではない」とコメントしております。

要するに、銀行業界に限らず(リリースされた組織図に監査役会がないという、ベリテ社も顔負けの一部上場の地方銀行もありました)、我が国の監査役の現状はこの程度であるという悲しい現実は認めなくてはならないと思います。
そうした中でも、「執行部と監査役とは経営の両輪」と、本気で取り組んでいる企業もあると信じたいですし、さらには、「三等重役」と見られていることを自覚しつつも、会社法の課する責務を果たさんと誇りを持って生きている監査役もいると、投資家さんにもご理解いただきたいです。

投稿: skydog | 2013年11月 2日 (土) 18時05分

skydogさんのご意見に共感します。

新興企業の傲慢な経営者に対して物言う勇気を持った
T社元監査役・古川氏の様な方も実際は(報道されない
事例も含め)多いと信じています。

しかしながら「朝日」の本日の記事(記者有論)の様に、
すべての監査役に胆力と自己犠牲(?)を要求するのは
如何なものでしょうか?

監査役制度が形骸化しているとすれば、その責任がすべて監査役側
にあるとする見方には、正直違和感を感じています。
監査役が研さん努力を重ね、時に応じて経営者に直言する胆力を
養う事は当然として、反対サイドの「経営者」はどうなのか?
相も変わらず「監査役は3等役員で、報酬も役員中最下位で良い。
適当な転出先が決まる迄一時預かりだ」と言う認識ではないのでしょうか。

銀行の例は一例です。もっともガバナンスが堅牢なはずの商社では、実態は
どうなのか?商社には「グループ定年制」があり、子会社(非上場が多い)に監査役として出向されている60歳前後の元商社マンは、63~65歳のグループ定年に達した時点で自動的に辞任となるようです。「監査役任期は4年だ!」等と会社法を盾に抵抗した場合、後輩のポストがなくなる事になりますので、誰も抵抗せず(できず)粛々と辞任されているようです。
こうした事が、残念ながら日本の監査役制度の実態です。CSRを掲げる大商社でも「監査役の処遇」はこんなものですね。人事キャリア制度の一環として監査役制度が利用されている状態ではないでしょうか?

投稿: 彷徨える監査役 | 2013年11月 5日 (火) 16時09分

彷徨える監査役さん、ありがとうございます。

「筆は1本、箸は2本、衆寡敵せず」(いつもこればっかり)という絶対的な真実の中では、監査役の選任議案の提出権を(取締役会ではなく)監査役会に移管するのが最善だとは思うのですが、経団連が絶対に認めないでしょう。

私の前任者は「監査役は、イザという時に自分の辞表と引き換えに社長と刺し違えれば良い」と言ってました。それに同感している私は、監査役協会の推奨する「歩き回る監査役」にはならずに(決して否定している訣ではありません)、祇園茶屋の大星由良之助になっております。

投稿: skydog | 2013年11月 5日 (火) 22時32分

Skydogさんが言及された監査役選任権の問題が、監査役制度の持つ最大の弱点であることは、多くの監査役が感じていることです。以前学者や弁護士からの「監査役会へ選任権付与」提案が、経団連をはじめとした経済界からの猛烈な反対に遭って、議論が封殺された形となったためか、以降一部の学者や実務家以外は殆ど誰も表立って主張しなくなってしまいました。
しかし、社外取締役義務付けが経団連等の大反対で法改正に織り込まれなかったものの、ソフトロー等の活用で実質はほぼ義務付けに近い形になった例があります。やはり、「最善」なものは抵抗が強いからと諦めずに実現に向けて粘り強く努力することが必要ではないでしょうか。
①制度改正としては、監査役会に監査役選任決定権を与えることを求める
②①が実現する前の段階では、下記をベスト・プラクティスとして明確に打ち出し、拡大する
A.監査役会が実質的な選任案提案権を行使(取締役案に同意の形を取る場合の事前協議も含む)
B.子会社監査役選任には親会社監査役が関与する。最短でも4年間任期を極力尊重させる。
そこで、小生が注目したのは、太田監査役協会会長が「商事法務2013.9.15号」に発表された論文で、十数年後の会社法改正への課題としてではあるが、「監査役選任における監査役の決定権の付与」を法改正課題として挙げられたことです。個人的見解とはいえ、過去の経緯をご存知の協会トップが敢えて指摘されたことは画期的なことです。またベストプラクティスの積み上げが重要とも主張されています。
ベストプラクティスとして地道に実績を積み重ねて、監査役に監査役の選任権を与えるべきとの認識を内外に広げていくことが、協会のみならずすべての監査役関係者に求められているのではないでしょうか。

投稿: いたさん | 2013年11月 8日 (金) 15時05分

当初にコメントした者が、放置した形になっており、恐縮です。

私のコメントは、取締役会(経営者)によって行われる第三者委員会の性質に応じて、若干の私見を述べたものです。
投資家さん、Studentさんのコメントにあるように、株主・市場の視点からは、監査役と同じく、実質的には株主の付託につながるものであるとの理解もできるのは承知しております。

ただ、そのような位置づけにするのであれば、監査役が「監査役」なる機関である必要性は乏しくなる、内部監査との一体化でも十分であり、「監査役」なる機関は不要なのではないか、と思う次第です。

大企業になればなるほど、どんなに人数を多くしたところで、個別の取引事案を直接監査することはできず、「取締役会」という機関と同じくモニタリングモデルにならざるを得ないのでしょう。
だからこそ、第三者委員会などが活動した報告をもとに、取締役の注意義務の履行状況を精査するのが役割の本筋であろうかと思う次第です。
そうではなく、さらに「監査役」を監査する必要があるのであれば、内部監査部門で十分であって、有事には第三者委員会に判断させれば十分であるとなりかねません。

監査役を対象にするのであれば、経営陣の付託によるのではなく、明確に株主総会などによって権限を与えらえるような強力な「機関」として第三者委員会などの役割を明確化したほうが良いと、常々思う次第で、コメントにつながりました。

つらつらと書き並べましたが、あまり深く考えていなかった中で、コメントに対する感想をいただき、大変恐縮しており、あえて蛇足ながら再コメントさせていただいた次第です。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2013年11月11日 (月) 16時34分

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