田辺三菱製薬に業務改善命令⇒二度あることは三度ある?
昨年10月、試験データの改ざんにより業務停止および業務改善命令を受けていた田辺三菱製薬社と子会社バイファ社ですが、その後、匿名社員からの内部通報により、製造の承認書に記載されていない成分が含まれていたことが判明し、このたびまたまた田辺三菱社には業務改善命令が下された(子会社には業務停止命令)ことが報じられています(たとえば毎日新聞ニュースはこちら)。
当ブログでは過去に何度か申し上げているとおり、一度企業不祥事が発生しますと、これを機会に内部通報や内部告発が一気に噴出することがあります。そしてそういった告発は、同じ不祥事に関連するものもありますが、全く別の事件に関するものもあります。田辺三菱社は昨年10月以前にも、大きな不祥事を発生させていますので、これは類似のパターンであり、「二度あることは三度ある」という典型例のようにも思われます。
しかし今回のケースでは、今年2月に通報があり、4月には親会社・子会社合同での社内調査が行われ、その結果として不適切行為の事実を確定し、自ら厚労省に届けています。その後の厚労省の調査にも積極的に協力しているようです。さらに多くの製品が患者さん方に利用されていたそうですが、これまでのところ健康被害が認められたケースはありません。こういったケースでは、匿名の内部通報事実ですから、もし社内で公表しないという選択肢を採用した場合、通報は外部への告発に代わり、「隠匿した」と評価されるリスクはあります。
そのあたりは、はたして田辺三菱社が自浄能力を発揮したといえるのか、それとも「バレる前に公表してしまおう」といったやむをえず届出に踏み切ったのかは明らかではありません。ただ、通報事実を認知した時点から社内調査の結論が出るまでにわずか2カ月しかかからなかったということは、ほとんど躊躇することなく自社で不正を認識して自社で公表する、つまり以前の不祥事とは異なり、田辺三菱社としては過去の教訓を生かしてまさに自浄能力を発揮したものと評価できるのではないでしょうか。前回までの不祥事と、今回とではマスコミの取り上げ方が全く異なる(今回はニュース価値が乏しい)というのも、これを裏付けるものではないかと。
たしかに患者への思いやりに欠ける、というご批判もあるかもしれませんが、今回の田辺三菱社の一連の行動は「不祥事は起こさない」ということよりも「不祥事が起きるかもしれないけど、起きたとしても逃げない」という思想のもとでの対応です。これまでとは異なり、不祥事はもし起きた場合には自分で調査をして、自分で届出・公表に走る姿勢が垣間見えたものと思いたいところです。「二度あること三度ある」ではなく、「今度こそ、三度目の正直」としてコンプライアンス経営の精神が具備されてきたものと期待しています。
| 固定リンク
コメント