日本版パックマン・ディフェンス(敵対的買収対抗策)について
アメリカで、紳士服小売業者どうしによる買収合戦が一部の話題になっています。敵対的買収を仕掛けられた相手の上場会社が、逆に仕掛けた上場会社を対象に敵対的TOBで対抗するという、いわゆる「パックマン・ディフェンス」という防衛策です(防衛策というよりも、本気で仕掛けるのであれば、これは買収対抗策、といったほうが適切ですね)。株主は提案価格がつりあがるので歓迎する向きが多いとのこと。詳しい内容は朝日新聞ニュースで紹介されています(ただし有料版)。
ちょうど当ブログを立ち上げた2005年ころ、会社法の話題といえば敵対的買収防衛策の導入でした。いろいろとアメリカの防衛策が紹介されていた中に、このパックマン・ディフェンスも含まれていたので、なつかしい響きです。日本でも2005年、ライブドア(当時)がニッポン放送の買収を仕掛けたときに話題になりました。ニッポン放送のグループであるフジテレビなどが逆に、ライブドア株の買い占めに動くのではないかという噂も出ていました。ただ、アメリカの事例をみても、かなりの元手が必要になるので、費用対効果という意味からすると「?」といった感想を持ちます。いや、これも「サメよけ」としてのポーズが目的であるとすれば、それなりに効果はあるのかもしれませが・・・
ところで、パックマン・ディフェンスといえば、「日本版パックマン・ディフェンス」というのが考えられます。たとえば敵対的な買収を仕掛けられたときに、相手の議決権の過半数を取得しなくても、25%超を取得すれば相手の取得した当社株式の議決権を無効化することができる、というものです(会社法308条1項、施行規則67条1項)。株式を相互保有している場合に、議決権総数の4分の1以上を保有する会社は、その実質支配している会社の有する相互保有対象議決権につき議決権を行使し得ない、という理屈です。
この日本版パックマン・ディフェンスは、25%以上の株式を取得すればよいので、本場アメリカのパックマン・ディフェンスに比べるとかなり費用は割安で済みそうですが、相手方が上場会社でないとむずかしそうなので、SPCなどの非上場会社によるTOBを仕掛けられた場合などには向いていないかもしれません。また、そもそも買収を仕掛けられている会社の株式にプレミアムを付けて買付を行うとなると、一部の株主だけに利益供与を行ったおそれもありすです。たしか弥永先生が「日本版パックマン・ディフェンス」について会社法関連の書籍の中で検討されておられたと思います(どちらの本だったかは記憶しておりません・・・)。
「サメよけ」という意味での防衛策を考えるのであれば、このように相手方取締役の善管注意義務違反や利益相反行為、特定株主への利益供与といった「グレーゾーン」に相手方取締役を追い込むことが(相手がSPCであっても)効果的ですね。なお、最近のファンドの動きをみていますと、こういった日本版パックマン・ディフェンスの発想で、有事になるとひそかに株を買い集めて敵対的買収の流れを窺っている方もいらっしゃるように感じますが、いかがでしょうか。
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