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2013年11月14日 (木)

会社法改正の話題はどこへ行ったのだろう?-臨時国会では無理?

マスコミの話題が特別秘密保護法や民法改正(民法900条問題)、そして多発する企業不祥事に集中してしまうことは理解できます。しかしこの臨時国会で当然に法案が成立すると(少なくとも私は確信していた)会社法改正がいったいどうなっているのか、ほとんど情報が入ってきません。国民の関心が薄いせいかもしれませんが、マスコミもあまり話題として取り上げてくれないようです。巷の噂では商事法務研究会、経営法友会共催による会社法改正の説明会も開催日程が延期された、とのこと。

震災前の平成22年頃から会社法改正の審議が始まり、昨年8月には会社法の見直しに関する要綱が出され、いよいよ秋の臨時国会では法案が成立するはずだったと思います。しかし、どうも最近の自民党政務調査会(法務部会)での審議状況をみておりますと、会社法改正案が重要な項目において見直されるのではないか?との疑問が湧いてきます(14日には自民党議員による自民党企業改革案の解説、18日には諸団体からのヒアリングが予定されているようですが、これって要綱の一部については白紙に戻す、ということなのでしょうか?)

ここからは私の推測ですが、やはりこの秋以降の多発する企業不祥事が国会議員さん方のガバナンスに対する意識に影響を与えているように思えます。社外取締役の制度化ということが、企業価値向上のため、というよりも不祥事の未然防止のため、といった方向性で語られているように感じます。行政による厳しい監督にも限界があります。したがって、やはり企業自身がコンプライアンス経営に前向きに取り組まなければならない、ということなのでしょうか。取締役会の監督機能の強化や、ディスクロージャー(たとえば会計監査制度)あたりは、見直し要綱よりもさらに踏み込んだ改正が必要との意識が強くなっているのではないかと。

経済同友会さん、日本取締役協会さんからも、ガバナンス改革には前向きの公式見解が述べられており、民主党政権下でとりまとめられた要綱がさらに見直されることがあるのかもしれません。すでに社外取締役ガイドラインを策定した日弁連の委員の一人としては、早く法案が成立してほしいという気持ちと、更なるガバナンス改革が進むことも歓迎したい気持ちとで、非常に複雑な心境です。マスコミもあまり報じていただけないので、どなたか、このあたりの政治事情についてお詳しい方がいらっしゃいましたら、ご教示いただければ幸いです。<m(__)m>

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コメント

某高名な会社法学者と9月に話した際には、会社法改正は通常国会上程・成立で進んでいる、それを受けて、自著の改版作業をはじめており、4月刊行に向けて準備に着手している(自著の発行社では校正に4ヵ月近くかかるので、逆算すると年内成立を想定されている)と仰ってました。

投稿: K.C. | 2013年11月14日 (木) 05時41分

情報どうもありがとうございます。なるほど、そうですか。基本的には流れは民主党政権下の法案がそのまま通るということなのでしょうかね。しかし改訂作業が終了した後に改正法の中身が変わってしまうとなると悲惨な状況になりますね(笑)。

投稿: toshi | 2013年11月15日 (金) 01時41分

ご存知のページでしたら、失礼します。
本日(11/19)の自民党会議情報 https://www.jimin.jp/activity/conference/ に、「政調、法務部会  議題:会社法の一部を改正する法律案及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について」とありますので、
ここで議論・承認されれば、閣議決定を経て、そろそろ国会に上程されるのではないかと想像しているのですが、如何でしょうか。特に社外性要件の親会社の取扱について、要綱案通りに改正されれば実務上の変更があるので、改正・施行時期に注目しています。

投稿: M.B. | 2013年11月19日 (火) 15時20分

既にご承知の方が多いかと思いますが、今回の会社法改正を
めぐる「迷走」の経緯が書かれています。↓
https://www.y-shiozaki.or.jp//oneself/

しかし、期待した民主党案は経団連に実質骨抜きにされ、
本来は経営寄りと見られていた自民党から極めてまともな
議論が起こり、ガバナンス強化が図られるとは。。
塩崎代議士の胆力に敬服しました。

投稿: 彷徨える監査役 | 2013年11月25日 (月) 09時07分

彷徨える監査役さん、ご教示ありがとうございます。なるほど、塩崎先生は最後まで法務省とやりあったのですね。この会社法改正案に自民党案の一部が含まれ、とくに独立社外取締役の選任については、ほぼ義務化されたような感じですね。

投稿: toshi | 2013年11月25日 (月) 21時46分

久保利弁護士が緊急提言しています。
いつまで同じ内容で議論し続けているのでしょうか?
国際会計基準の議論と同じです。

投稿: AY | 2013年11月27日 (水) 22時38分

AYさん、ご教示ありがとうございました。さっそく拝見いたしました。今回の自民党案をとりいれた会社法改正法律案で、ずいぶんと久保利先生の意見に近づいたのではないかと思います。もちろん納得がいかないところもあるでしょうけど、取引所規則の改正も含めて、企業として導入へのインセンティブになっているのではないかと。

投稿: toshi | 2013年12月 3日 (火) 22時04分

独立社外取締役の「独立性」の定義が気になってます。どこで線引きしたら不正に対して有効なのか悩ましいところと思います。
東証の要件では、少数株主との利益相反、資本関係、取引先、過去のコンサル/弁護士/会計士等、普通問題になりそうなところは抑えているようです。
 ですが新興市場等の不正があった企業では、類似の経営者特性を持つ企業間で、少しの株の持合い、一時的な資金の融通、特異な一部の取引の融通も有るでしょう。また、過去のコンサル/弁護士等にしても、その人たちが紹介するお友達など。この辺りになると、お世話になったからとか、紹介してくれた人の顔を潰すから、などの日本的、情緒的な要素の影響は出ると思います。またそれを期待して就任してもらう傾向も出てくると思います。
そうなると、開示した属性情報には全く独立して見えるけれども、人間関係では緩く繋がっているケースは出ると思います。
 一方、独立性は担保したとして、適格性はどうなんでしょうか。少なくともある程度の会計/法律の素養と、事業を理解し、違和感を感じれば発現してくれる人で無いと意味が無いですよね。一般には経歴程度でしょうか。
 法律では根拠条文だけですので、やはり運用の課題になりましょうか。

投稿: ももんがー | 2013年12月 4日 (水) 11時06分

独立性に関する実質的な問題点はまさにももんがーさんがおっしゃるとおりですね。ここはやむをえないところかと思います。友達関係など開示資料からはわかりませんね。ただ、アメリカの統計などによると、友達だからといって社長に対して甘い対応になるという傾向はみられず、むしろ言いたいことをはっきり意見する、ということもあるようです。やはりお金か血縁でつながっている、ということだけが明確になることが限界点かと。

投稿: toshi | 2013年12月12日 (木) 02時27分

としあき先生らの関心が社外取締役にあるのは理解していますが、株式等売渡請求について、撤回ができるというのは、改正会社法案の最大の問題と思います。これだと、個人株主が弁護士に着手金を払って、価格決定を申し立てたところで、撤回される悪夢があり得ることになります。この他、仮払いするかしないかの選択権が会社側にあったりと、МBО関係の規定はかなり酷いです。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65884644.html

投稿: 山口三尊 | 2013年12月16日 (月) 02時33分

す、すばらしい・・・・・。なにかコメントをしなくては。。。
http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20131216_17

投稿: toshi | 2013年12月16日 (月) 21時51分

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