来年は「内部統制」に再び光があたる年になりそうな予感(?)
今年9月2日のエントリ「内部統制への関心が再び高まる時代が到来」でも書きましたが、再び企業の内部統制に光があたる時代になりつつあるなぁと改めて認識しています。若干ポジショントークの感も否めませんが、以下その理由をいくつか示します。
本日(12月25日)の消費者庁HPでもアップされましたが、いよいよ来年から消費者庁主催、日本内部統制研究学会協賛の企画が始まります。詳しくはまた別途ご紹介いたしますが、企業の内部通報制度などの充実を広報するものです。また、消費者委員会で審議される予定のようですが、景表法改正に伴って課徴金制度が導入されるとなりますと、(行政当局の限りある資源を考慮しますと)どうしてもピンポイントによる調査が不可欠でしょうから、対象企業を絞るためにも内部統制の不備に注目されることになると思われます。
※なお、消費者庁主導によるガイドライン行政については、ホントに課徴金で争われたときに大丈夫なのか?という点について、実は書きたいことがありますので、来年にでも別途エントリで書かせていただきます。
また、金融商品取引法において開示責任制度が改正され、虚偽記載に対する法人の過失が要件となるようですが(現行は法人については無過失責任)、おそらく法人の過失というのは内部統制の不備も判断基準にひとつになるのではないかと推測します。つまり開示統制プロセスの構築に不備がなかったことを企業側が立証することで(立証責任は転換されることになりそうなので)、企業の賠償責任が免責される、という理屈になるのではないかと。
さらに、来年6月ころに発表される日本成長戦略の目玉となりそうな公益法人改革ですね。来るべき高齢化社会に向けての医療法人、社会福祉法人、年金基金のガバナンス改革です。行政サービスを日本の津々浦々に確保するため、体力の弱い公益法人は統合されるかもしれませんが、統合を推進するためにも各公益法人の透明性ある経営が求められます。財務状況がしっかりしていて、ガバナンスや内部統制がしっかりしているかどうかが鍵となるところです。私のような地方の弁護士にも、最近とくに、社会福祉法人や年金基金さんから、内部統制構築支援のお仕事が増えてきました。
※年金基金のガバナンスの問題点については、「年金ジャーナリスト」さんのコメントをご覧いただければ問題意識がおわかりになるかと。
今年は名門企業が海外の裁判所で多額の賠償責任が認められるケースや、相変わらず海外不正事件で有罪答弁の合意をしているケースが目立ちました。とりわけ海外の捜査や司法制度に基づく和解勧告や司法取引について「どうして高額の支払いに応じなければならないのか、最後まで争ったほうが得ではないのか」といった難問に直面する企業が出てきています。このような難問にきちんと答えを出せずに和解をしてしまいますと、日本で株主代表訴訟を提起された場合に、役員は免責されるのでしょうか?このあたりの訴訟リスクを回避するための内部管理体制の在り方も議論されるようになるものと思います。
その他、グループ企業の内部統制、みずほ銀行融資問題における企業統治に重点を置いた業務改善命令など、まだまだ数え上げたらきりがありませんが、いずれにしても、スピード経営、透明性のある経営、そしてリスク管理のバランスをとるために、いよいよ来年は本格的に企業の競争力を高めるための内部統制について議論が深まるものと考えています。
拙ブログも、来年3月にはいよいよ10年目に突入しますが、これからも法務ネタを中心として、私自身の意見を発信していきたいと思っています。今年も1年間、ブログをお読みいただきありがとうございました。よいお年をお迎えくださいませ。<m(__)m>
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