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2013年12月11日 (水)

景表法改正の動き-課徴金制度導入検討とは驚き(◎o◎)!

このたびの一連のメニュー虚偽表示問題を契機として、消費者庁は景表法の改正を検討するそうです。都道府県が排除措置命令を出せるように権限委譲がなされること、景表法違反の有無を他省庁も調査する権限を持つこと等が改正の中心テーマだそうですが、なによりも驚いたのが「景表法違反に課徴金制度を導入する」といったことも検討されるそうです(たとえば時事新聞ニュースはこちら)。消費者団体からの強い要望とのこと。

正直、このたびの食品偽装事件を契機に、景表法に課徴金制度導入が検討されるとは夢にも思いませんでした。たしかに、平成23年ころから消費者庁では「行政による経済的不利益賦課制度」について、一部の研究会で検討がなされていましたが、未だ「研究」の域を超えたものではなく、現実味を帯びたものではないと理解をしていました。

まだ感想めいたことしか書けませんが、上記時事新聞ニュースにも誤解があるとおり、課徴金は制裁のように思われていますが、原則として罰則(ペナルティ)ではありません。あくまでも不当な利益の収奪ということです。だからこそ行政処分の一種です。レストランのメニュー偽装があった場合、果たしてレストラン側がいくらの不当な利益を得ていたと捉えるのでしょうか?たとえば近鉄グループのホテルでは、メニューに誤表記はあったけれども、お客様から頂戴した料金に見合うサービスは提供していたので返金には応じない・・・という姿勢でした。つまり不当な利益を得ていたわけではない、ということだと思います。

また景表法違反による行政処分については、これまで無過失責任とされていますが、課徴金制度も無過失でも処分の対象となりますので親和性が高いことは間違いありません(これは課徴金がペナルティではないからです)。しかし世間一般では課徴金は罰則だと理解されていますので、BtoCの各企業としては「偽装ではなく誤表示」だとしても課徴金処分を受けてしまうおそれがある、ということです。消費者を騙すという意思がなくても、現場のミスによって課徴金を課され、ブランドイメージを傷つけてしまうというのはなんともおそろしい気がします。もちろん、公認会計士法上の課徴金制度のように、行為者の主観的な帰責性によって課徴金の金額が変わるという、実質的には過失責任に基づくペナルティのような課徴金制度も存在しますが、市場の健全性確保のために高い職責を負う会計士と、BtoCの企業とを同列に比較できないものと思います。

さらに、課徴金制度は罰則ではなく、不当な利益の収奪が目的なので、いわゆる行政法上の「羈束行為」です。つまり行政の裁量によって課徴金を賦課すべきかどうか、裁量の余地はないということです。景表法違反の事実を発見したら、かならず処分を下さねばならないということになりますが、調査権限を持つ省庁に内部告発があれば、かならず慎重に調査が行われることになります。これは調査権限を持つ省庁にとっては負担が大きいのではないでしょうか。

企業側からしても、景表法に課徴金制度が導入されることは不正リスクがひとつ増えることになります。なんといっても「法令違反」が目に見える数字になることで、企業の損失が明確になるわけですから株主代表訴訟を誘発する要因になります。さらには訴訟でも「ブランド価値維持義務」などが認定されるようになりましたので(ただし契約上の信義則義務ですが)、課徴金処分を受けることが企業のブランド価値を低下させた、と評価される可能性もあります。これは当該企業だけではなく、親会社の役員責任にもつながる可能性もあります。

上記は厳密に調査したわけではなく、あくまでも私の感想に基づくものなので、不正確なところがあるかもしれません。しかし、このように景表法に課徴金制度を導入することは多くの問題点が存在しますので、ニュースなどでも、消費者庁としては慎重な配慮をする、と報じられておりまして、消費者委員会で十分に審議を行うようです。いずれにしても、景表法に課徴金処分を導入するについては、消費者庁には運用していくだけの人的・物的資源に乏しいわけですから、「上から規制」は限定的にならざるをえないはずです。企業としては「ピンポイントで上から規制」の対象にならないようにすることが必要なわけでして、9月2日に当ブログでも書きましたが、今後ますます企業の内部統制システムの整備・運用が求められる時代になりそうです。

12月 11, 2013 未完成にひとしいエントリー記事 |

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コメント

日経新聞夕刊(12月9日4判14面)にも記事が掲載されておりました。
各省庁が業界団体を通じて調査したところ、延べ307業者で虚偽表示があったとのことです(この数が多いのか少ないのか一概にはわかりませんが)。

課徴金については「算定基準を定めるのが難しい」などとの指摘もあるそうです。確かにサービスを提供した(私風に言えば「芝エビ入りチャーハンを注文したのはチャーハンを注文した」)とも考えられるケースもあるでしょうし、所管各省庁が課徴金を決定することとなった場合には、ジャッジや金額算定の公平性は保たれるのかとの疑問もあります。
また、企業にとっては虚偽表示の課徴金金額よりもブランド価値下落によ損害賠償請求額のほうが大きく上回る事態も想定しておかないといけないということもあるのかもしれないですね。

投稿: 会計利樹 | 2013年12月11日 (水) 09時03分

景品表示法への課徴金導入については、公取が所管していた平成20年に閣法で一度出されていますよね。
そうすると、その制度設計(故意・重過失や売上金要件)を維持して、導入してしまうという選択肢は十分あり得るのかなあと。
なので、そこまで驚くことではないように感じました。

投稿: 違和感 | 2013年12月12日 (木) 11時46分

ご意見ありがとうございます。景表法への課徴金導入に関する従前の経緯はまことにもっともかと思います。ただ、これまでの課徴金制度は市場の公正性確保のために導入されたものかと思います。これが果たして消費者保護を目的とした分野でそのまま導入できるのかという(これまた)違和感もあります。エントリーには書いていませんが、消費者救済制度と課徴金との関係なども課徴金の性格と合わせて検討すべき問題ではないでしょうか(他の国ではどうなっているのかは、あまり勉強したことがないのでわかりませんが)。

投稿: toshi | 2013年12月12日 (木) 12時22分

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