マルハニチロHD役員の説明責任は重大だと思う。
昨年末から連日報じられているマルハニチロホールディングス子会社(アクリフーズ社)の食品事故の件ですが、本日(1月6日)午後9時現在、冷凍食品農薬(マラチオン)混入事件による「異臭商品」が23件に及んでいる、とマルハニチロ社のHPにてリリースされています。また読売や朝日のニュースによれば、被害相談が持ち込まれている都道府県はすでに35に上り、被害を訴えている方も300名近くに上るとのこと。予想以上にたいへんな事態になっています。
商品回収率が未だ17%程度ということなので、まだどれだけ事件の規模が広がるかは不透明な状況のようです。グループ挙げて被害回復に努めておられるようなので、これは今のところ「不祥事」とは一概には言えないですね。マスコミも、昨年末はアクリフーズ社の公表遅延などを批判する報道が目立ちましたが、被害拡大のおそれが強い中での報道の公共性から、現在は、混入の犯罪性や被害状況、異臭商品の判明状況の発表にウエイトが置かれているようです。
ところで、今年4月にマルハニチロホールディングス社は、連結子会社5社と合併して、事業持株会社制度に移行するようです(テクニカル上場により、ホールディングスの株主は、合併対価として上場予定の事業持株会社の株主になり、株式売買にも影響はありません)。ホールディングスは子会社に吸収合併される(つまり消滅する)ことになりますが、そのホールディングスの合併承認株主総会が1月下旬だそうです。
このたび食品事故が発生しているアクリフーズ社も合併当事会社ということですが、親会社(最終完全親会社)であるマルハニチロホールディングスとしても、この時期にアクリフーズ社を合併する、ということも厳しい局面ではないかと推察します。もちろん合併がなくても、基幹子会社ですから支援することは間違いないと思いますが、短期的にはホールディングスの一般株主の利益に影響が及ぶでしょうし、グループ会社経営という立場からみても、マネジメントの面において、資源の最適配分の計画が大きく狂ってくることになるのではないでしょうか。
それでも合併を進めることが長期的な企業価値の向上につながるものである・・・ということは親会社の取締役として(総会で)十分に説明責任を尽くす必要があるでしょうし、今後どこまで拡大するか不透明なアクリフーズ社の損失についても、グループ全体においては軽微であることを説得的に説明することが求められるものと思われます。
しかし新体制に関するリリースをみても、アクリフーズの役員の方々は、全く要職には就かれないようです。やはり雪印乳業グループだったということが影響しているのでしょうか。アクリフーズの社長さんは平成20年ころまではマルハニチロの取締役だった方ですが、親会社と子会社との情報共有体制などはどのようになっていたのか、気になるところです。
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コメント
今年もよろしくお願いいたします。
回収が17%しか進んでいないというのは、苦情から回収決定まで1カ月半もかかっているのだから当然かと。公表遅延によって被害が拡大するおそれた高くなるのは、それだけ不具合商品が出回るからです。これはもっと批判されていいのではないでしょうか。
株主にとっても楽観視できない状況です。株も急落していますし、なによりも主力工場の再開のめどが立っていないというのが業績への懸案になっていると思います。事故への対応は最優先ですが、だからといって業務を止めるわけにはいかないと思うので、どの程度の業績への影響があるのか、株主に対して説明をしなければいけないと考えます。説明義務を尽くすのは、まずそこだと思います。
投稿: halcome2005 | 2014年1月 7日 (火) 14時27分
今時は、健康被害が生じる可能性があれば、即時公表、回収が必要ではないでしょうか。いろいろ事情はあるかもしれませんが、それでも、健康被害と比較すれば、どの事情も優先度は低いのではないでしょうか。ダスキン事件は健康被害なしでも代表訴訟で敗訴したのですから、マルハニチロはどうなるのでしょうか。
私は、山口先生の見解とは異なり、重い不祥事だと思います。
投稿: Kazu | 2014年1月 7日 (火) 21時17分
時間がだいぶ経過しましたが、いまだ原因究明には至っていませんね。たしかにもっと早く公表していれば回収率も違っていたのではないかと。もう少し様子をみますが、やはり不祥事といえそうな事案かもしれませんね。
投稿: toshi | 2014年1月16日 (木) 01時41分