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2014年1月31日 (金)

福岡魚市場株主代表訴訟最高裁判決出ましたね(全文あり)

親会社取締役の子会社管理責任が問われた福岡魚市場事件株主代表訴訟の最高裁判決が本日(1月30日)最高裁第一小法廷で出されたようです(最高裁HPに全文リリースされています)。親会社役員の子会社管理義務については、野村証券米国子会社事件判決と、この福岡魚市場株主代表訴訟高裁判決が対比されていましたが、この高裁判決の判断が(概ね)最高裁でも維持されています。ちなみに、事件や下級審判断の内容については、こちらのエントリーをご参照ください。

企業コンプライアンスの視点からはいろいろと関心があるのですが、会社法的には、商法研究者の方々によるこの最高裁判決の射程距離がどこまであるのか、判例研究に期待したいと思います。このたびの会社法改正に関する法制審議会の議論でも取り上げられていた裁判なので、とても興味深いところです。

なお、上記最高裁判決は、取締役の会社に対する損害賠償請求権に付される遅延損害金の利率については、商事法定利率である6%ではなく、民事法定利率である5%であるとして一部破棄差戻し判決が出ています。これは同損害賠償請求権の消滅時効の期間について争われた過去の最高裁判決(最高裁平成20年1月28日判決→商事時効による期間5年ではなく、民事時効による期間10年が適用される)の判断理由に合わせた内容となっています。

商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は,取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるが,法によってその内容が加重された特殊な責任であって,商行為たる委任契約上の債務が単にその態様を変じたにすぎないものということはできない

といったところでしょうか。ただ、商事時効の適用が排除されるべき理由と、遅延損害金に付される法定利率の選択の理由とでは、損害賠償請求権の法的性質は同じだとしても、かならずしも同様に考えなければならない(商行為性を否定しなければならない)、とは思えませんが、いちおう上記判決のとおり、ということで。

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