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2014年4月 7日 (月)

東証の開示規則改訂-開示注意銘柄制度の柔軟化

昨年、川崎重工業さんの社長解任劇を契機に、不明確な情報開示問題が盛り上がったことは記憶に新しいことと思います。2013年4月22日、川崎重工業さんは、三井造船さんとの経営統合に関するスクープ記事が報じられた際、「そのような事実はありません」と否定しておられました。ところが、件の解任劇によって経営統合が白紙に戻った時点で、「統合の可能性を検討しておりましたが、決定に至りませんでした」と開示されました。東証のCEOの方は「一般株主は、2カ月間、まちがった情報の下に置かれていた」と、この開示姿勢に強く懸念を示しておられました。

その後、シャープさんの公募増資の件について、これも機関決定前にスクープ報道がなされましたが、これに対してシャープさんは「未だ決定したものはありませんが、本日午後の取締役会で審議する予定となっており、具体的に何かきまりましたら明らかにします」との開示をされました。これに対しては、投資家やIR担当者の間で話題となり、「俺だったら、こんなに親切な開示はしないぞ」といった声も聞こえていましたが、当時のロイターさんの記事では、金融庁や東証が、このシャープさんの情報開示は模範開示例だと称賛されていたとのことでした。今年3月27日のベネッセHDさんの適時開示(経済界で著名な方が代表取締役に就任することがスクープされていました)などを読んでも、シャープさんと同じような記載内容です。

おそらく、このような流れの中で、ということかと思いますが、4月5日の朝日新聞朝刊記事でも紹介されていたように、東証さんは、企業情報開示について、不明確な情報への機動的な注意喚起を行うため、開示注意銘柄制度の柔軟な運用に関する規則変更に踏み切るようです(現在は意見公募中ですが、概要はこちらです)。おそらく企業統合や増資など、投資家の投資判断に重大な影響を及ぼす情報の開示に不明確なところがあれば、これに対して開示注意銘柄指定を含む、機動的な注意喚起を促すようにする、というもの。やはりロイターさんの当時のニュースは正しかった、ということですね。

不明確な情報開示は速やかに修正せよ、とのことですが、企業にとっては正確な情報を出したくても出せないこともありますね。川崎重工業さんのように、支配権争いがあるケース、不祥事が発生した企業のように、社内調査が十分でないケースなど、典型例かと思います。M&Aや資本政策に関する情報は、インサイダー情報に該当する可能性があり、そもそも社内でも正確な情報を把握している人数が限られているので、開示統制もむずかしいですね。ともかく、スクープ報道が出ないように情報管理を徹底することができれば良いわけですが。

といいましても、スクープ報道は(なぜか?)出てしまうわけでして、そのような重要情報を抱えていらっしゃる企業のご担当者の方は、旬刊商事法務2014号(2013年11月15日号)の池田祐久弁護士(ニューヨーク州弁護士、たしか日経の弁護士ランキングにも掲載されていた方ですね)の「スクープ報道対応のグローバル実務」の論稿をご参考にしてはいかがでしょうか。実務としてのベストプラクティス、ノーコメントアクションが使えない場面など、参考になります。ひとことで言えば、社内から情報が漏れてしまった以上は、これに対してきちんと対応しなければならない、ということかと。ちなみに「日本のユニクロが、米国の大手衣料Jクルー買収か?」とWSJが報じた際、ファーストリテイリングさんは、「憶測の記事については一切のコメントを控えます」と開示されていましたね。

いずれにしましても、上場会社だけをとりあげて、行為規制で(会社法で)縛れない分、開示規制が「実質的な行為規制」としても活用されつつある今日、開示に熱心な会社とそうでない会社の選別が、一般投資家の利益保護のためにも、これからますます明確になされていくものと思います。

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