株主総会における説明義務-社外役員の資質について
さて、毎年このシーズンになりますと、3月決算会社の定時株主総会を前にして、タイムリーな話題を提供しようと考えています。といいましても、総会担当のご専門家や株懇あたりでブイブイ言わしておられる担当者の猛者の方を「うーーん」と唸らせるような話題を提供できるほどの能力も持ち合わせておりません。<m(__)m>ということで、以下のお話は、ホントに素朴な疑問に対する自分なりの考え方にすぎませんのであしからず。
本日(4月21日)公表された「対日直接投資に関する有識者懇談会」報告書によりますと、政府としては、各企業に社外取締役を3分の1以上は置くように、と提言するそうです。会社法に独立社外取締役に関する定義を明確に規定し、そのうえで取締役の3分の1以上を社外独立取締役にするよう義務付ける、また取締役に研修制度を設置せよ、といった提言内容です。もはや各上場企業とも、社外取締役導入が待ったなしの状況ですが、だからといって、誰でもいいというわけではなく、おそらく人選に悩む企業も多いはずです。
ところで、社外取締役や社外監査役として、経営者や弁護士や会計士、税理士といった方々が選任されることが多いのですが、たとえば改選期にあたり、「この社外役員候補者は、●●という問題で、弁護過誤で敗訴しているらしいが(または、懲戒処分を受けたらしいが)、当社の候補者としてだいじょうぶなのか?」「その経営者の方は、週刊誌でずいぶんとプライベート問題で叩かれているが、当社の役員としてふさわしいのか」といった質問が出ることが予想されます。
そこで会社側としては(取締役側としては)、社外役員の本業におけるミスやプライベート問題については、そもそも社外役員としての活動とは無関係なので、回答することは控えても説明義務違反には該当しないのではなかろうか・・・との素朴な疑問が湧きます。今後ますます社外取締役の選任(改選)が増える中で、企業側にとって予想もしなかった社外役員の素顔が暴かれてしまうような場面も予想されるところかと思います。
最近発売されている株主総会想定問答集などでも、「社外役員の人選問題」として、問答数も充実しているのですが、「独立性に問題があるのでは?」「出席日数が少ないのでは?」といった、お行儀の良い質問が多く、あまり参考になりそうなものは見受けられません。
会社側としては、社外役員は正に外の人ですし、あまりカッコ悪い立場に立たせてはいけないとの判断から、社外役員としての活動とは関係のない質問については回答を控えるというスタイルで対応したいところです。しかし、よくよく考えてみますと、なぜその方を社外役員として迎えたかといえば、やはり本業におけるスキルが自社の企業価値向上に資するところがあるから、というところでしょうから、役員としてふさわしいかどうかは、(少なくとも一般株主の立場からみると)本業の能力やプライベートにおける品位ある行動なども、やはり選解任の重要なファクターになるように思われます。ということで、原則として回答する必要があるように思います。
たとえば、監査役解任時の「正当理由」の有無が争われた東京高裁昭和58年4月28日判決(判例時報1081号130頁)では、税理士である監査役さんが、監査職務としてではなく、自身の本業である税務においてミスを犯していたことが、解任の正当理由として認められています。ミスは個人的なものですが、監査役に就任したのは、その専門的識見に期待されてのことであり、株主の判断においても重要事項だと判断される、というものです。この事例は公開会社のものではありませんが、正当理由の有無を判断するにあたり、経営者と株主との信頼関係の大きさ(株主と経営との距離感)はそれほど大きな問題ではないと思いますので、大規模公開会社にも上記判例の考え方はあてはまるのではないでしょうか。
実際に質問が出た場合に、議長(代表取締役)が回答するのか、社外役員自身が回答するのかは状況次第だと思いますが、私自身も、なにか不祥事を起こしてしまった場合には、こういった質問により社外役員としての資質を問われることを覚悟しておきたいところです(まぁ、そういった事態になれば、辞任という選択肢をとることも考えられますが・・・)。
| 固定リンク
コメント
対日直接投資報告に関する日経の記事はミスリーディングだと思います。海外機関投資家(らしい人たち)が、こういった意見を述べたというだけであり、内閣府が提言するかどうかは未知数ですよね。
投稿: torawoman | 2014年4月22日 (火) 11時24分