« 日本企業は手続的正義にどう対応すべきか?-海外不正リスク | トップページ | 業務上横領罪における「委託の趣旨」に反する行為 »

2014年4月11日 (金)

リスクマネジメント実務の法律相談(新刊のご紹介)

022510帝国データバンクさんが4月7日にリリースされたところによると、コンプライアンス違反を原因として倒産した企業の件数が、この1年(調査開始以来)もっとも多かったそうです。毎度申し上げますとおり、この調査結果から、そもそも経営が苦しいからコンプライアンス違反をやってしまうのか、それとも本当にコンプライアンス違反が倒産への起爆剤になってしまうのかはよくわからないのですが、いずれにせよ、企業をみつめるステークホルダーの目は、厳しくなりつつあるのは事実ではないかと。

さて、これだけスピード経営が求められる時代に、もはやリスクマネジメントは後ろ向きの作業ではなく、「走りながら考える」、つまりトライ&エラーの思想で前向きに捉えなければビジネスで負けてしまいます。ただ、こういった思想は、「リスク管理」自体の巧拙がはっきりしますから、リスクを負うわけで、どうしても後ろ向きになりがちです。

不正リスクも同じことです。不祥事は起こしてはいけない、起こさない、という発想であれば、リスクマネジメントはブレーキ役です。でも、どこの会社でも不祥事はかならず起きる、起きたときにどうすべきか、という発想であれば、予防とともに早期発見や、有事対応の知恵が必要になります。

2週間ほど前に、日経新聞の一面広告で紹介されていましたので、すぐに購入いたしましたが、これはなかなか使える本です。判例や参考書籍などの引用も豊富なので、不正調査実務や、セミナーのネタ本としても良いかもしれません。

法律相談シリーズ33・リスクマネジメント実務の法律相談(青林書院 中村信男・笹本雄司郎・竹内朗 編著 3,600円税別)

本書は、早稲田大学の中村信男先生を中心に、気鋭の実務家の方々によって執筆されたリスクマネジメントの実務書です。いずれも実際にコンサルティングや有事対応の支援をご経験されていらっしゃる方々によるもので、内容はとてもわかりやすく、応用が効くものになっています。そしてなんといっても、「積極果敢なリスクテイクとビジネスチャンスの拡大」という点を念頭に置いている点が注目です。この視点が、今までのリスクマネジメントの本ではあまり意識されてこなかったように思います。

ざっと拝読いたしましたが、私のイメージでは、上場会社本体のマネジメントもさることながら、予算も人間も限られているグループ会社管理に使えるのではないかと思います。私個人としては、リスク管理の巧拙は人の能力、つまり人材に依存するところが大きいと感じています。そして、リスク管理担当者が自由に活動できる環境と、リスク管理の効率性をどう理解するかがとても大切です。大きな会社のように、お金も人も使える会社であれば良いのですが、限られた予算の中で、合格最低点の60点のリスク管理体制の構築を目指す、では60点のためには、どこから手をつけたら良いのか、また何かあったら、どこに優先順位を置くのか、といったことの手引きになることは間違いないと思います。

リスクマネジメントの歴史からフォレンジック、サイバー攻撃対策の最先端まで、私が存じ上げている著者の方は数名なのですが、おそらく各分野にお詳しい方が分担されて、このような大作となったものと思います(第4章の事案ごとのリスク管理は、丁寧に構成されている印象です)。リスクマネジメントできちんと成績を上げたい実務担当者の方、支援する側の専門職の方、いずれにも参考になるレベル感です。

こういったリスクマネジメントに関する本を読むと、(時々ですが)予算の潤沢な会社の「アリバイ工作」的な匂いにがっかりすることがあるのですが、本書は平時にも有事にも使えそうな知恵が満載です。経営者が何かあったときに、「ほら、内部統制はこうやって構築していましたよ」というお助け本ではなく、リスクが目の前にたくさん横たわっている新規事業の荒波を乗り切るときに「嵐を避ける知恵」として活用されてはいかがでしょうか。

4月 11, 2014 本のご紹介 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/59447085

この記事へのトラックバック一覧です: リスクマネジメント実務の法律相談(新刊のご紹介):

コメント

コメントを書く