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2014年5月14日 (水)

名誉毀損による損害賠償と第三者委員会調査

昨日(5月13日)の朝日新聞ニュースによりますと、福島県郡山市から除染事業を受注し、加盟業者に配分する業者団体「郡山市除染支援事業協同組合」が、事実と異なる報道で損害を受け、名誉と信用を傷つけられたとして、産経新聞社に約237万円の損害賠償と謝罪広告掲載を求める訴訟を福島地裁郡山支部に起こしたそうです。同組合が「事実と異なる」としているのは、同新聞3月19日付朝刊の「除染 使途不明3億円超か/郡山市発注/事業組合『裏金』?」という見出しの記事だそうでして、同組合は、「弁護士と公認会計士に依頼した調査の結果、使途不明金や裏金はなかった。記事で誤った情報が流布し、事実を明らかにするため対応せざるを得なくなった」として、弁護士報酬などを賠償するよう求めている、とのこと(朝日新聞ニュースはこちらです)。

サラっと読むと、なんの変哲もないような記事です。ただ、名誉毀損による損害賠償請求事件ですから、裁判では産経新聞さんの記事が事実なのかどうか、これから十分に審議されることになるはずです。だとしますと、なぜ、この期に及んで弁護士や会計士に依頼して真偽を確かめる必要があったのでしょうか。同組合としては、裁判上での有利な証拠を収集するために「不正調査目的」で依頼したわけでもないと思われますし、「事実無根のけしからん記事だ!」と、すぐに訴訟を提起すれば良いのに・・・と、少し疑問を抱くところです。

ただ、記事の最後のほうに、「事実を明らかにするために対応せざるをえなくなった」とあります。なるほど、つまり、この弁護士や会計士の依頼というのは、いわゆる第三者委員会的な業務を依頼したのでは、と推測されます。大手の新聞社に疑惑記事を掲載されて、同組合は有事に立ち至ってしまった、このままでは同組合の社会的信用が低下し、仕事の受注にも影響が出てしまい、ひいてはステークホルダーに多大な迷惑をかけてしまう、ということから、自社の身の潔白を証明するために第三者委員会を設置して(もしくは第三者的な調査委員を選任して)、潔白を明らかにした、ということでしょうか。つまり、損害額は237万円ということだそうですが、もし、この第三者委員会調査による報告がなければ、もっと信用毀損による損害額は増えていた、ということで、名誉毀損行為と第三者委員会調査の費用とは相当因果関係がある、と主張されているものと思います。

もし、原告側の主張が裁判で認められるようなことになると、不祥事発生時の第三者委員会の活動は、あくまでも原告側の訴訟準備活動(有利な証拠収集方法)ということだけではなく、有事に直面した企業の信用を維持するために不可欠の(必須とまでは言えなくても、相当程度有効な)企業行動であることを、裁判所も認めることになりそうです。うーーーん、なんか弁護士報酬等が損害の範囲内にあると、認定されるかどうかは微妙にも思うのですが、ともかく裁判所がどのように判断されるのか(そもそも、そこまで判断されずに済んでしまうのか)、興味深い提訴ではありますね。

5月 14, 2014 民事系 |

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コメント

名誉毀損関係は、日本では原告が圧倒的有利ですから、真実性がある記事を裁判を使って封殺するという手段が非常に効果を持ちます。

裁判で勝ったから裏金が無かったと言いたいために、提訴と言う手段をとるわけですね。しかし、原告側で積極的に適示事実が虚偽であることを立証していくケースは極めて稀です。被告が真実性を立証できなくて勝てるだけです。

本当に虚偽であれば、自分の所できちんと情報公開して、新聞社などに納得してもらった方が良いはずなんですけどねぇ。

投稿: 名無し | 2014年6月10日 (火) 01時35分

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