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2014年5月12日 (月)

国際カルテル、身柄引き渡し条約の執行開始か?

先週に引き続き、アンチトラスト法違反に関する話題ですが、本日は備忘録程度の内容です。ちょうど1週間前の5月5日の日経法務インサイドにて「国際カルテル被告、海外で初の引き渡し 米の追及、日本も影響注視~企業、防止策の徹底 急務」と題する記事が掲載されていました。そういえば、4月16日、17日の朝日新聞ニュースにて、防振ゴム部品の価格調整の件で、日本のB社常務執行役員ら3名が、アンチトラスト法違反にて米国で起訴されたことが報じられていました。あとの1名の方は1年6か月の禁固刑を司法取引(有罪答弁合意)によって合意していますが、この3名の方々は、禁固刑の実刑に合意することを拒否した模様、とのこと。ちなみに実刑合意をした日本人は、これまで24名に上るそうです。

上記日経記事にもあるように、アンチトラスト法違反でDOJ(米国司法省)から捜査の対象とされ、訴追の方針が固まった場合、日本企業の役職員がとるべき選択肢はふたつです。ひとつは企業と同様、役職員個人も有罪合意答弁を行い、たとえば1年や1年半ほどの禁固刑を司法取引で合意すること、そしてもうひとつは禁固刑になるくらいなら、司法取引を拒否して、米国で最後まで裁判で争う、というものです。ただし、司法取引なら1年か1年半の禁固刑ですが、裁判で争うとなれば(無罪を勝ち取ればよいですが、仮に有罪が確定した場合)10年以下の禁固および1億円程度以下の罰金ということになります。弁護士費用もずいぶんと変わるかもしれませんね。

もう海外旅行もあきらめて、日本から出国しないとわりきるのであれば、後者の選択もあるかな、と考えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。これまでは、身柄引き渡し条約の執行ということもなかったので、この選択も十分にありだと思っておりました。しかし、身柄引き渡し条約に基づく執行の可能性が上記日経記事のように高まったとすれば、かなり厳しい選択肢になりそうですね。今回はドイツ人社員ということでしたが、これが日本人の幹部社員ということになりますと、俄然召喚リスクは高まりそうです。前にも申しましたとおり、海外子会社において、実際にカルテルに関わった社員だけでなく、日本本社において、事件に関連するメールや電子文書を廃棄する、他の幹部職員に虚偽供述を指示する、といったことも、重大犯罪として捜査の対象となりますので、今後のDOJの執行状況についてはさらに注意をしておく必要がありそうです。

もちろん、不正防止の対策をとることと、万が一、カルテル行為が社内で判明した場合には速やかに自主申告することが重要であることは言うまでもありませんが。。。

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